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68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

チョン・ミョンフン=東京フィルハーモニー交響楽団 歌劇「カルメン」

21日(金)、サントリーホールで行われた、東京フィルハーモニー交響楽団定期演奏会を聴きに行った。

 

チョン・ミョンフン指揮による、「カルメン」の演奏会形式上演である。

 

演奏会形式でのオペラは、色々なオケで時々行われるが、やはり演出付きの上演に比べると、はなはだしく物足りない気がするので、行くことはめったにない。

 

今回、これに出かけたのは、このオケのヴィオラ首席奏者、須田祥子さんが、この公演についてSNS上のインタビューで話されているのを見たからだ。

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チョン・ミョンフン氏の「第九」を弾いて、東京フィルに入団することを決めたと言う須田さんが、「カルメン」でのヴィオラパートの聴きどころや、マエストロの全曲演奏への期待を話しておられる。

 

これは行かねば、と思い、急遽チケットを買った。既に残席は僅かだったが、買えてよかった。

 

サントリーホール

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プログラム冊子から。

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闘牛場の場面が、第3幕第2場として設定されている。これ、第4幕じゃなかったっけ。

 

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東京フィルハーモニー交響楽団 第932回サントリー定期シリーズ

日 時 2020年2月21日(金) 18:30開場 19:00開演
会 場 サントリーホール
指 揮 チョン・ミョンフン
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団
曲 目 ビゼー 歌劇「カルメン」(演奏会形式)

 

私の席は、2階C5列34番。上手寄りの席だったため、須田さんを横から見る形になってしまったのが残念だった。

 

新型コロナウイルス、「COVIT-19」の蔓延が不安視されている中、その影響はなかったようで、空席は僅か。マスクをしていない人が少なくなかったのには、ちょっと驚いた。

 

ステージ後ろ側の席に誰も座らないので、ここは売らなかったのか、と思っていたら、合唱席だった。そうかそうか。最前列が児童合唱。

 

ヴィオラ外配置の16型。

 

ファースト・ヴァイオリン、1プルトと2プルトの間くらいの場所、表の奏者の手前に木の椅子が一つ。指揮者の真ん前にも椅子が一つ置かれている。

 

開演。指揮台前に譜面台は置かれておらず、チョン・ミョンフンは全曲暗譜で指揮。合唱も、児童合唱含めて暗譜だった。

 

最初の前奏曲が、爆発するように始まった途端、音楽に引きずり込まれ、終演まで気を抜くことができぬまま没頭させられた。

 

須田さんも、終始かっこよかった! あれほどダイナミックなヴィオラのトップは、他では見られない。

 

演奏会形式ということで、演出はほとんどない。歌手が出てきて歌ってははけていくという流れだ。

 

木の椅子は、例えばカルメンが「セギディーリャ」を歌う時に座り、その脇でホセがからむ、といった形で、何度か使われた。

 

指揮者前の椅子は、フラスキータとメルセデスがカード占いを歌っている時に、それを見ているカルメンが座ったり、アリアを歌い終わったミカエラが、物陰に隠れる意味で座ったりした。

 

過去に観た舞台の記憶で、演出の欠落を補いながら聴く形になった。

 

一方、オケが舞台上にいることで、オケの比重が高まるのは、メリットとなる面がある。時に、シンフォニーを聴いているような充実感を味わうことができた。

 

反面、歌手にとっては、分が悪い感じにもなる。

 

あと、ちょっと残念に思ったのは、歌手の衣装。カルメンが、比較的その役柄らしいドレス(休憩後の着替えあり)だったのを除くと、男女とも、例えば「第九」のソリストみたいな感じだった。

 

女性歌手は、ドレスの色で区別がつくのだが、男性歌手は、揃って黒の燕尾服という形なので、どれが誰だかがわかりにくい。衣装を多少変えてほしかった。

 

そうしたことはともかく、「カルメン」の魅力を堪能した。

 

とにかく名曲揃いだ。知っている名曲が次々に出てくる、という点では、「ウエストサイド・ストーリー」を思い出した。

 

「ハバネラ」が、ショスタコーヴィチの5番に引用されていることは、つい最近気づかされたが、昨年11月に浦安オケで弾いた後、初めてこのアリアを実演で聴いて、ああ、そうそう、ショス5、と思った。

 

ところで、このオペラのストーリーは、男女の心変わりが根幹にあるが、これって、子供の教育には良くないね(笑)。

 

1幕で、ミカエラと会ったばかりのホセが、カルメンになびく場面とかは、向正面席最前列の児童合唱の子供たちが観ている。このオペラでコーラスを歌うにあたり、物語も勉強する機会があっただろうが、教える大人も困るんじゃないかな。

 

その児童合唱は、1幕が終わったところで、退席した。休憩の後は、大人の合唱団しか入ってこなかったので、もしかして、労働基準法の制約で、もう出て来ないのかな、と思っていたが、3幕2場の前に再び登場した。

 

カエラのアリア、ホルンがきれいで効果的なのが印象的だった。

 

それにしても、このオペラのミカエラという女性は、ほんとにかわいそうだよね。1幕で久しぶりにホセに会えたのに、直後からホセはカルメンに心を移してしまうし、その後、ホセが自分の目の前でカルメンを口説くのを見ることになる。いたたまれないはずだ。つい、最近の芸能ニュースを思い出した。ミカエラが杏で、カルメン唐田えりか

 

オケの演奏は、終始よかったが、「アラゴネーズ」はとりわけすばらしかったなー。タンバリンのかっこよかったこと。

 

ここから、合唱も加わっての闘牛場前のくだりでの、劇場的感興は誠に出色だった。チョン・ミョンフンの力量ももちろんだが、日頃、ピットに入ることも多い、このオケの経験値でもあろう。

 

3幕2場では、いくつかカットがあった。これ以前にもカットはあったと思うが、この終盤は特に残念だった。

 

カエラがかわいそうと書いたが、東出昌大、じゃなかったホセもかわいそうはかわいそうだ。この期に及んでは、もういくら口説いてもカルメンはふりむいてくれないのだから。

 

ホセとカルメンのやりとりのあたりから、舞台上の照明が少し落ちた。気がついたら、オケの譜面灯が点いていた。譜面灯なんか付いてたんだ。

 

カットが残念だったものの、終幕までの追い込みは誠に見事。演奏会形式というのを忘れさせられた。

 

来てよかったなあ、とほんとに思った。すばらしい演奏会だった。

 

22時近い終演だったが、多くの聴衆が拍手を送り続けていた。私も。

 

演奏会形式上演には、メリットも物足りなさも感じたが、やはりこのコンビで、演出付きの「カルメン」を上演してほしいものだ。

 

東京フィルの「カルメン」は、2018年12月に、新国立劇場で聴いているが、今度は是非マエストロの指揮で!