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68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

ベートーヴェン交響曲マラソン

26日(土)、三鷹市芸術文化センター風のホールで行われた、大学オケOBOG有志のイベント、「ベートーヴェン交響曲ラソン」に参加した。

 

このイベントは、ベートーヴェン生誕250年の2020年に開始され、年1回開催されてきた。

これまでに演奏された曲目はこのようになっている。

私は、縁あって前回、3回目から参加した。前回は4番から8番の5曲、今年は1番から3番プラス9番なので、2年間で全9曲を演奏することができた。
昨年は、ちょうど台風が関東地方に接近してきているさなかのことで、帰りの電車は大丈夫だろうか、と気をもみながら過ごしたのを思い出す(結果、問題なく帰れた)。

 

今回も、当日までには、主催者であるヴァイオリンのF氏から、行き届いた事務連絡のメールがしばしば入った。充分な情報が都度得られたが、今回驚いたのは、「第九」を合唱付きで演奏することだった。
オケが年1回集まる不特定メンバーであるのに対して、合唱は「オルフ祝祭合唱団」という既存団体。

 

さて26日当日。

1年ぶりの三鷹駅で中央快速を下車し、南口へ出る。バスでホールへ。


こちらも1年ぶり、三鷹市芸術文化センター。


9時前に到着して中に入ると、同時期に在籍したホルンのS先輩、同じくホルン後輩のS氏がいた。

メンバー表を見ると、1970年代在学の我々は長老の部類。上は70代から下は20代(今年卒業という人もいる)、幅広い世代が集まったようだ。

 

今回の4曲、直前の演奏機会は以下の通り。どれも結構久しぶりだ。
(  )は、今回持って行った楽譜。

   1番 2015年9月 津田沼ユニバーサル交響楽団  (その時のもの)
   2番 2004年9月 津田沼ユニバーサル交響楽団  (その時のもの)
   3番 2018年2月 津田沼ユニバーサル交響楽団  (2016年11月 浦安オケ)
   9番 2018年12月 浦安オケ           (2014年12月 浦安オケ)

 

ホールに入って舞台セッティング。山台を組んで、椅子と譜面台を並べる。
舞台奥が合唱団3列。オケは対向配置。

 

ヴィオラの参加者は6人。私を含め3人が昨年に続いて参加。
昨年同様、アミダクジを引いて席順を決めた。1番、2番、と曲が替わる都度、時計回りに移動するという構想だったが、リハーサル開始の10時には全員が揃わなかったので、とりあえず暫定的に空いた席はつめて座る形でスタートした。

事前に4曲をさらい、自分にとって一番難しいのは2番だな、と思っていた。
ところが、暫定スタートで座ったのが2プルトの表だったので、そのまま時計回りで移動すると、次の2番は1プルトの表、トップ席になる。
いや、一番嫌な席順になってしまった。さっきアミダに書き込んだ線が1本多すぎた。

 

指揮は大学オケとは関係の深い齊藤栄一先生(私自身の在学中はまだご縁がなかった)。この交響曲ラソンも、初回からすべて指揮されている。

リハーサルは前回同様、限られた時間なのでほんの要所のみ。例えば、1番の1楽章は、曲頭から始まったものの、主部に入ってすぐ止め、「後は大丈夫ですね?」。

そんな感じで進んだが、どれも3楽章のスケルツォは、主部とトリオをほぼひと通りは練習した。
また、それ以外に、メンバーから、ここを、というリクエストがあったところは練習した。

 

3番まで終わったところで休憩。

 

ヴィオラの6人が揃ったが、話してみると、4曲全部弾くのはリハーサル開始時点で暫定で座った4人。残る2人は1曲か2曲希望とのことだったので、それなら4人で予定通りローテーションし、一部の曲に参加する人は後ろの空き席に座ってもらうことにした。
これで、2番のトップ席が確定。やむを得ない。

 

9番は、オケだけの部分を練習し、正午前、リハーサル終了。
30分の休憩となった。
ホワイエに出て、三鷹駅近くで買ってきたおにぎり弁当などをあわただしく食べた。

 

この間、ホール内では合唱団がリハーサル。

 

13時から合唱合わせ。
ソリストは合唱団の中から出た。複数人で歌われていた。
バリトンソロが出る前から始め、曲尾まで練習した。
合唱合わせも、ひと通り通しただけで返し練習はなし。3楽章の前で入場して座っていた合唱団が立つタイミングだけ確認の練習をした。

 

今さら気づいたが、過去、大学オケや浦安オケなどで確か通算6回演奏している9番は、すべて表を弾いてきた。
今回のローテーションだと、2プルトの裏になるのだが、最後のページ、プレスティッシモから曲尾までは速いので、ちょっと裏の音符についていけない。ここだけこっそり表を弾いてしまうことにした。

 

合唱合わせには1時間用意されていたが、30分ほどで終了し、開演の14時まで1時間ほどの休憩となった。

ここでまた全乗り4人の席順について、3番9番で前に座った2人から、前後入れ替えられないかとの話が持ち上がった。
後ろは後輩のS氏と私だったが、相談して要望通り前に出ることにした。3番9番の表裏については、S氏と相談して、私は3番では裏、9番では表で弾かせてもらうことにした。
全4曲リハーサルが終わった後ではあったが、2番のトップ席、9番の裏を回避できた。
リハーサルとの比較で、表裏が変わったのは、1番(表が裏になった)、9番(裏が表に)。1番は何とかなる。

 

14時からの本番は、メンバーの知人友人、あるいは合唱団の方が客席に何十人か座られた状態で進行した。

 

今年も立派なプログラム冊子が制作された。

 

メンバー表の他、齊藤先生によるベートーヴェンの9曲の解説などが掲載されていて、大変有用な内容である。

 

タイムテーブル通り、1番が終わったからすぐ2番ということではなく進行した。遠方に帰る身としては、前倒しで進めてくれた方がいいのだが、まあ仕方がない。

 

久しぶりにこれら4曲を弾いて、改めて思ったのは、1番と2番はひとくくりで論じがちだが、2番というのは1番に比べて革命的な音楽だということだ。
1番にせよ、ハイドンモーツァルトが確立したシンフォニーの世界からすれば充分に斬新だが、少なくとも楽曲の規模という点では、2番は大きく拡大している。今回事前にさらってみて、2番って長いなあ、とつくづく思った。この点では、当時の聴衆の驚きは大きかったのではないか。もちろん、音楽の中身そのものも、3楽章、4楽章など本当に新しい。4楽章のコーダ372小節目の大爆発などは、ハイドンの94番以上に「驚愕」ではなかっただろうか。
その2番、本番演奏でもやはり4曲の中では一番難しかった。

 

2番が終わったところで、いささかガス欠を感じる。1番をちょっとがんばり過ぎたか、2番では集中力が切れる瞬間がしばしばあった。
この後、3番と9番では、4曲中2曲、半分終わったとは言えない。せいぜいまだ3分の1だ。
最後まで持つだろうか。

 

しかし、3番はやはり弾き甲斐のある好きな曲なので、弾いていて精神的に持ち直すことができた。
それにしても、1番、2番、3番と、つくづくベートーヴェンというのは、sfや、sfの意味でのfの表示がこれでもかというようにあるね。それをどう出すかが問題だ。力まかせでは保たない。

 

3番を弾き終わって、いやー、やっぱりいいなあ、と嬉しかった。

1番に比べて2番の規模の拡大を実感したが、2番から3番への拡大、また内容の進化は比較にならないものがある。1楽章の長大さ、複雑さ、2楽章がもはや単なる緩徐楽章でないことなど、当時の聴衆には理解できなかったのではないだろうか。

(ただ、これは昔から思っていることだが、1楽章提示部の1カッコと同じ楽章の再現部への入り方は、いささか芸がない。この点は例えば4番などの方がずっとよくできている)

 

さていよいよ最後は9番。

3番同様、意欲をかきたてられる曲だし、これで最後なので、がんばって弾けた。
できるだけ、指揮や他パートを見るように努めた。4曲中では一番回数を弾いているので、比較的余裕が持ててよかった。

午前は部分的なリハーサルだったので、本番演奏は、4曲ともぶっつけ本番の箇所がたくさんあり、危ないところもあったが、何とか持ちこたえつつ進行してきた。

ところが、最後の最後で事故。

9番のヴィオラで言えば最後のページ直前、プレスティッシモに向かう「H-A」「H-A」のテンポをオケ全体で共有し損ない、それがたたって合唱ともずれが生じて、齊藤先生が止めた。
惜しかったなー。止めなくても何とかなったような気がするが。
「H-A」からやり直した。

 

何はともあれ、めでたく4曲完走。いや、ゴール前で転倒したか。

3番もいいけど、やはり9番もいい。後半2曲は力が出た。この2曲は、できれば自分のオケ、あるいはどこかでちゃんと弾きたいものだ。

 

18:15頃予定通り終演。

舞台を撤収して解散となった。

19時から打ち上げの案内(オケ、合唱別々)はあったが、千葉まで帰るので不参加とした。

 

帰り道、さて来年はどうするかな、と思案。
このイベントは、これで4回。ここ2年で全9曲を一巡したし、その前も含めれば5曲が3回演奏されている。
来年の企画次第かな、と思う。
1日でとにかく多くのシンフォニーを演奏しよう、というコンセプトらしい(主催者のF氏によると、「体力と音楽力の定点観測」がサブ・テーマなのだそうだ)。
しかし一方、リハーサルもそこそこに、本番の一発勝負でどんどん曲をこなすのは、言い方は悪いが、集まったメンバーで「弾き散らかす」だけ、という側面もある。
弦の場合、持ち込み楽譜が多いので、ボウイングからしてバラバラだ。それでも良いのだろうか、という気もする。
このへんは齊藤先生がどうお考えか、そこが大きいとは思うが、曲数を例えば2曲くらいに絞って、午前午後と時間をかけてもう少し丁寧に仕上げるやり方もあるだろう。
まあこれは要するにこのイベントのコンセプトの問題なので、途中から参加している私がとやかく言うことではない。2年程度かけて、とにかく9曲を演奏する場を提供するところに眼目があるのなら、そこに意義があると言える。メンバーが毎年入れ替わりながら、個人として9曲演奏できる機会が確保される意義である。そしてその場合、一個人としての私はそれに毎回参加し続けることはないだろうと思う。

また、ベートーヴェンに拘りつつ、そろそろ別のやり方を、と次のステージを求めていく判断もあると思うが、それも主催者が決めることだ。

(あるいは、いっそベートーヴェンでなく、今度はブラームスの4曲を、あるいはシベリウスの7曲をひと通り経験してみましょう、というまったく別の企画も考えられるが、これも基本コンセプトの問題)

 

そうしたことはともかく、今回についてはとても楽しかった。参加してよかったと思う。主催者始め運営にあたられた皆さまに心から感謝したい。

 

※往復に聴いた音楽
    ブラームス 交響曲第4番
       バーンスタインウィーン・フィル
    メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲
       ムター=カラヤンベルリン・フィル
    チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲
       ムター=カラヤンウィーン・フィル
    チャイコフスキー 悲愴
       バーンスタインニューヨーク・フィル(1986年録音)
    シベリウス 交響曲第1番
       バーンスタインニューヨーク・フィル
    ベートーヴェン エロイカ
       バーンスタインニューヨーク・フィル

 

※合唱団の方が録画されたという9番終楽章の映像が展開されたので貼っておく。

 (ゴール前の転倒もそのまま記録されてます)

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