18日(土)、東京芸術劇場で行われた井上道義指揮読売日本交響楽団のマーラーの2番を聴きに行った。
昼食は、以前に一度入ってまた来たいと思っていた、ホールそばのキッチンABCへ。
行ってみると10人以上の行列ができている。日頃、並んでまで何か食べることはほとんどしないが、池袋に来る機会はあまりないので、開場時刻を気にしつつ並んだ(写真右手奥が東京芸術劇場)。
13:15頃やっと入店。
並んでいる間に注文しておいた、オリエンタルライスAセット(カニクリームコロッケ添え)。
食べ終えて、無事開演15分前に着席できた。
私の席は2階B列34番。やや上手寄りの最前列である。
●東京芸術劇場マエストロシリーズ 井上道義&読売日本交響楽団
日 時 2023年11月18日(土) 13:00開場 14:00開演
会 場 東京芸術劇場コンサートホール
指 揮 井上道義
ソプラノ 髙橋絵理
メゾソプラノ 林 眞暎
合唱指揮 三澤洋史
合 唱 新国立劇場合唱団
プログラム冊子から。井上さんらしい文章が載っている。
マーラーの「復活」という曲があるのを知ったのは、1972年、高校2年の時。
この年6月に、(旧)日本フィルハーモニー交響楽団が解散し、最後の演奏会が、小澤征爾指揮する「復活」だった。前後して、N響もサヴァリッシュの指揮で同じ曲を演奏したと記憶する。
小澤征爾という指揮者をまだよく知らなかった頃だが、楽団の解散に際して「復活」を演奏するというストーリーに興味を惹かれ、FMで放送されたこの時の演奏を聴いた。
このマーラーの2番の実演に初めて接したのは、1980年頃。若杉弘の指揮で、オケは東京交響楽団、もしくは東京都交響楽団だった。
1982年、小澤さんが新日本フィルの100回記念定期演奏会でマーラーの2番を10年ぶりに指揮した時も聴きに行った。小澤さんの指揮ぶりの魅力にとりつかれたのはこの時だった。合唱が歌い終わって、曲尾までのテンポが速いのに驚いた。この演奏はレコード化され、今でも持っている。
以後、2000年1月の小澤征爾=サイトウキネン・オーケストラの東京公演も聴いた。
マーラー2番の実演経験はたぶんこんなところである。
今回チケットを買ったのは、マーラーの2番が好きだということもあるが、井上さんの指揮で聴いてみたいと思ったことが大きい。引退表明している井上さんの指揮に接する機会もなくなってくるし。
ヴァイオリンは対向配置で、ヴィオラが下手側に置かれた。
1楽章が始まった瞬間、とてもヴィヴィッドな弦の音にひきこまれた。
管、打楽器も含めて、オケの音がこちらに迫ってくる感じだ。遅めのテンポ。
1楽章が終わったところで、ソリストと合唱団が入場した。ソリストは舞台奥の合唱団の脇、下手寄りに配置。譜面台が置かれていた。
2楽章の途中、弦のピツィカートで演奏されるところは、弓を置いて楽器をギターのように持つ形だった。
3楽章は、ヴィオラの鳴りっぷりがすごかった。
3楽章から5楽章は、アタッカで演奏された。
4楽章は、高いソプラノでない声が音楽にぴったりであることを改めて感じた。
5楽章は、まさに渾身の演奏。
合唱は、最初の内は座ったままで歌い、fになる途中から立った。
終盤では、バンダを務めたホルン4人がステージ上、トランペット4人は2階席下手に登場した。
こちらは井上さんの旧Twitterから拝借した写真。
この曲は、案外木管に見せ場がない感じがする。個々のソロはもちろん魅力的だが、どうしてもホルンや金管、また打楽器が前面に出てくる。
最後の和音が終わった後、会場内に余韻が響く少しの「間」があったのがとてもよかった。腕を振り切った井上さんが、少し客席側を振り向くようにして嬉しそうに笑った顔が印象的だった。
その後、割れんばかりの拍手。
しかしやはりこの2番というのはすばらしい音楽だ。私は3番も好きだが、類のないカタルシスを与えてくれる点ではやはり2番か。
1つ残念だったのは、右隣に座った若い男性のガム。着席時点で口の中にあったのだろうが、これを曲が終わるまでずっと噛み続けていた。なるべく見ないようにしていても、顎の動きがどうしても気になった。
そもそも、こういう音楽を聴きながらガムを噛めるものかね。少なくとも、5楽章のあの聴き手をひきつける音楽の進行から曲尾までのあの時間の経過にあって、ガムを噛み続けられる感覚が理解し難い。
それはそうと、来てよかったと思える演奏会だった。
プログラムにはさみこまれていたチラシを見たら、来年3月、井上さんが今度は新日本フィルを指揮して3番を演奏する。
さっそくチケットを買い求めた。