７月場所10日目

栃乃花はやはり負傷したようだ。１敗の玉春日との対戦とはいえ、まったくねばりのない相撲だった。

１敗の玉乃島は、今日も左はず右のどわのいい押しで春日王を一蹴。平幕の１敗組２人がどこまで勝てるかわからないが、優勝争いに緊迫感を与えていることは確かだ。

嘉風と豊ノ島は似たタイプの対戦だったが、いい突きで先手をとったのは嘉風。すぐ抱きつく形で一方的な勝負となった。嘉風としては、これからもこういう相撲をとっていければ伸びるだろう。

豊真将は低く出て土佐ノ海の押しによく我慢した。値打ちのある相撲だった。

北勝力と十文字は、物言いの相撲。北勝力が土俵を割るよりも十文字の手つきが一瞬早かったと思ったが、協議のポイントは反則だった。気がつかなかったが、確かに北勝力の左手が髷にかかっている。誰が物言いをつけたのかわからないが、よく見ていたものだ。

高見盛は、今日は最初から左四つにいった。相手が垣添ということで、不充分な四つとはいえ、余裕をもってとれた。今日に関してはよかったが。

安馬は、旭天鵬に、今日も先手をとってうまく食いついた。
そこから再三腰を沈めて崩しにいったが、いかんせん、正対しすぎた。やはり、突きで先手はいいが、相手の横につく形を作っていくべきだ。それでないと、今日のように、身長も体重も勝る相手に対抗するのは苦しい。
果たせるかな、最終的には右上手を許し、転がされてしまった。
安馬には、もう一つレベルの高い相撲をとってほしい。

本来楽しみな稀勢の里と琴奨菊は、琴奨菊が立ち合いから左を素早く差して、右からのおっつけでいい攻めを見せた。琴奨菊の流れだったが、稀勢の里の苦しまぎれの突き落としに落ちてしまったのは惜しい。星があがっていないだけにこんなものかもしれないが、内容的には稀勢の里にいいところはまったくなかった。
星勘定は別にして、相撲内容としては、今場所もやはり琴奨菊の方に一日の長があると思う。

琴光喜は、今日は二本差しのいい相撲。前さばきのうまさが出た。一方の普天王は、ちょっとだらしない。稀勢の里同様、日本人力士期待の存在ながら、波が大きすぎる。

千代大海は、絶好調というしかない。琴欧州も、昨日の把瑠都戦を見た感じでは、充分対抗できるかと思ったが、ともかく千代大海の細かい突きの威力、そして今日は前に出る出足がすばらしかった。
琴欧州としては、左右どっちでもひっぱりこむ形で抱き込めればよかったのだが、離れた相撲では、今場所に限っては絶好調の千代大海を持ちこたえることはできなかった。

昨日２敗で後がない白鵬は、悪い相手把瑠都との一番。
先場所のようにごまかしての相撲で２場所続けては勝てまいと見た。予断を許さない一番だったが、結果は、白鵬。
そして、白鵬のこの勝ちは、非常に値打ちがある相撲だと思う。
まず序盤は、把瑠都が最高の相撲をとった。把瑠都は突っ張りで先手をとる相撲が向くと常々思いながら、いつも上手をとりにいく相撲ばかりだったが、その把瑠都のこんな突きは初めて見た。
白鵬も押し込まれ危なかったが、今日は昨日の相撲とは全然違い、気力が感じられた。
土俵に詰まってからしのぎ、うまく右四つに組んだ。
そこからはさすがに地力の差。
把瑠都としては、大関に充分な形に組まれたのが甘いという他はない。これを教訓にしっかり考えてくれれば、今後が楽しみだ。
出たとこ勝負の甘い相撲が続いていた把瑠都だが、今日の前哨戦は、非常に光るもの、非凡なものを見せてくれた。
それをしのいだ白鵬の今日の相撲には値打ちがあると思う。

魁皇と栃東は意外な結果。
魁皇が今場所最高の相撲をとった。左差しだけでなく、右上手をがっちりとっての相撲は今場所初めてだ。
この形になれば、以後の展開は当然として、栃東はいったいどうしたのか。
このところ、左四つになる相撲が目について気になってはいたが、どこかおかしい。自分充分でない四つで、しかも相手得意の上手を許してはどうにもならない。それをさせない計算ができる筈の人だが。
中日の不戦勝で精神的に緊張が切れたとの本人の弁もあるが、２連敗となると、どこか負傷でもしたのかと心配になる。

結びは朝青龍に雅山。前日に白鵬を下した雅山だけに、期待も集まるところだが、対戦成績はあまりにも一方的で、雅山が正面から横綱を破るイメージがどうしても持てなかった。
果たせるかな、勝負は一方的。
基本的に今日もスピードの差。雅山にスピードでの対抗を求めるのは無理だが、今日もうまいこと右腕を攻めさせない動きはさすがと言う他はない。
雅山は立ち合いもろ手突きにいったが、それが最善の作戦だったかどうか。
組んで勝てる相手ではないが、離れる相撲になるなら、もろ手でなく、交互に重い突きを出していくしかなかったと思うのだが。もろ手突きでは、相手に動かれてしまう。
ただ、交互の突きであっても、朝青龍の動きやスピードを封じて体重の差を生かすのは簡単ではない。そこが対戦成績の差で、いかんともしがたいところだが。

全勝　朝青龍
１敗　千代大海　玉乃島　玉春日
２敗　白鵬　栃東

明日は、朝青龍と栃東の対戦が組まれているが、栃東が連敗したことで、興味は大きく損なわれた。星一つの差であれば、過去の対戦成績からしても期待できたのだが。
朝青龍が万一２敗するとすれば、それは栃東と白鵬だろうと思うので、前日の今日、一方が全勝キープで一方が連敗というのはやはり興趣をそぐ。
白鵬は、今日の相撲を見ると、残り５日間、14日目までは勝ち続けて、千秋楽横綱を下すこともありえなくはないと思えるのだが、横綱昇進、優勝争いのためには、横綱が一つは星を落としてくれなければならない。やはり期待できるとすれば(把瑠都と対戦しないので)、栃東しかいない。
明日は、その他の取組では、千代大海と把瑠都、白鵬と琴欧州がやはり楽しみだ。