母は、朝の連続テレビ小説を、欠かさず観ていた。
亡くなったのが、2009年の10月3日だったから、この年上期の、多部未華子主演の「つばさ」は、たぶん最後まで観たかと思う。
今、放映中の「とと姉ちゃん」は、その最たるものだ。
母が生きていたら、さぞかし喜んで観ただろう、と残念に思いつつ、母に代わって、同じく「暮しの手帖」ファンだった私は、熱心に観ている。
母が喜んだだろうと思うポイントは、いくつもある。それは、子である私自身が好ましく思っているポイントでもある。
あるいは、番組冒頭のタイトルに出てくる台所の映像が、その昔、「暮しの手帖」の表紙や紙面を飾っていた、当時の台所のイメージそのままであること。
他にもたくさんあるが、そうしたプラスのポイントを列挙するのが、ここでの目的ではない。
母がどう思ったかなあ、と思う懸念が一つあるのだ。
同じ、若手の女性ポップスシンガーとしては、その3、4年前から、安室奈美恵がブレイクしていた。私としては、安室奈美恵に勝るとも劣らない、もしくはその上を行く新人が出てきた、と思っていたので、「安室奈美恵もすごいけど、上には上がいると思う」と答えた。
すると、母は、「あたしは嫌いなんだよ」と言った。
聞けば、宇多田ヒカルの歌そのものが、ということでなく、ラジオ番組などでのしゃべり方が乱暴で、母には容認できないと言うのだった。
以後、宇多田ヒカルについて、母と特段の会話をかわしたことはないので、その後、見方や評価が変わったかどうか、今となってはわからない。
毎回の放送で、「花束を君に」を聴くたびに、もし母がこのドラマを観たら、喜んだだろうけど、もしかすると、「何だって、よりにもよって、宇多田ヒカルが主題歌を歌っているのか」と、この点だけは苦々しく感じるのかもしれないな、と思うのである。