naokichiオムニバス

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イリーナ・メジューエワ ピアノ・リサイタル

22日(土)、J:COM浦安音楽ホールで行われた、イリーナ・メジューエワのリサイタルを聴きに行った。

 

こちらがフライヤー。

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メジューエワの演奏は、いくつかのCD録音で聴いてきた。

   ※過去の関連記事

       イリーナ・メジューエワ 京都リサイタル2016

          https://naokichivla.hatenablog.com/entry/65838613

 

好ましい印象を持っていて、一度、実演を聴いてみたいものだと思っていたのだが、浦安に来てくれることになったので、さっそくチケットを買い求めた。

 

●イリーナ・メジューエワ ピアノ・リサイタル

 

日 時 2020年2月22日(土) 13:30開場 14:00開演

会 場 J:COM浦安音楽ホール

ピアノ イリーナ・メジューエワ

曲 目 J.S.バッハ  フランス組曲第5番ト長調

    モーツァルト 幻想曲ニ短調K.397

    ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第17番ニ短調テンペスト

    ショパン ノクターン嬰ハ短調(遺作)

    ショパン 幻想即興曲

    ショパン ワルツ第6番変ニ長調「小犬のワルツ」

    ショパン ワルツ第7番嬰ハ短調

    ショパン ポロネーズ第7番変イ長調英雄ポロネーズ

    ショパン 3つのマズルカ作品59

    ショパン 舟歌嬰ヘ長調

    [アンコール] ショパン マズルカ第2番嬰ハ短調

           ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第25番ト長調 第2楽章

 

我々の席は、1階E列7番、8番。ステージにほどよく近い、良い席だった。

 

ピアノは、スタインウェイ

 

開演前に、音楽ホールの館長が出て来てMC。

新型コロナウイルスの関係で、現在、浦安市が主催するイベントは、どれも中止になっているとのこと。そうした中、この演奏会は、ホールの主催公演ということで、市と協議の結果、来場者に手洗いうがいの励行を促したり、アルコール消毒液を設置するなどの準備を行った上で、開催としたとの説明だった。

メジューエワは、このホールに初めて招聘したが、事前に相談して、この演奏会のための特別なプログラムを組んでもらったとのことだった。

 

客席が暗転し、メジューエワが登場。楽譜を持っている。全曲、楽譜を見ながらの演奏だった。

 

最初は、バッハのフランス組曲。曲の最後の和音をペダルで延ばしている間に、自分で譜めくり

 

柔らかく、優しいバッハだった。

 

バッハは基本的に得意ではないが、こういう長調のバッハはいいな、と思う。

 

次のモーツァルトからは、譜めくりの女性がついた。引き続き、自分でめくれるところは、メジューエワ自身がめくっていたが。

 

このモーツァルトは、バッハの優しさとは違って、厳しい演奏だった。この人のピアノで、モーツァルトのコンチェルトを聴いてみたい、と思った。K.466あたり、どうだろう。

(私の知るメジューエワのCDは、ことごとくソロ演奏だが、コンチェルトの録音はあるのだろうか)

 

メジューエワの実演は初めてだし、演奏姿も初めて見るのだが、特徴的だと思ったのは、右手だけで弾いていて、左手が空いている時、その左手で、指揮をするようにしたり、テンポをとったりすることだ。歌謡曲の歌手が、マイクを持っていない方の手を動かしたりしながら歌うのを思い出した。

 

次は、「テンペスト」。d-mollの曲が続くのは、意図的なものだろうか。

 

ベートーヴェンは、その前の2曲とはまた違い、力感にあふれた、深みのある音だった。

 

1楽章で、ペダルを使って音を延ばす時、濁った不協和音になる場面が、ところどころあった。意識的なものだろうか。

 

久しぶりに、「テンペスト」を聴いたが、改めて、ベートーヴェンらしい曲だと思った。

 

20分間の休憩の後は、ショパンノクターン即興曲、ワルツ、ポロネーズマズルカと、多様な曲種が並んでいる。

 

最初のノクターンは、凜とした音。この曲にとてもふさわしい。

 

アタッカで幻想即興曲に移った。アタッカだったことで、同じcis-mollであることに気づかされる。

 

幻想即興曲は、主部のダイナミックさと、中間部の優しさの対比が際立っていた。

 

続いて、作品64のワルツ2曲。このワルツでは、テンポの動かし方の呼吸が絶妙だった。テンポとともに強弱も変化する。その組み合わせが、とても味わい深い。どの曲もよかった、このリサイタルの中で、特にすばらしかったと思う。

 

英雄ポロネーズ」は、とても闊達で、歯切れの良い演奏。ワルツ2曲とポロネーズを続けて聴いて、メジューエワという人は、聴き手の気持ちを運ぶのが、とても巧みだと思った。

 

また、このポロネーズは、前半のベートーヴェンよりも、よほどダイナミックだった。演奏会全体の設計としても、意図したものがあるようだ。

 

一旦、袖にはけた後のマズルカ3曲は、少しほの暗さをたたえた音楽。

 

ショパンには色々曲種があるが、私は、やっぱりマズルカが一番ショパンらしいと、昔から思っている。メジューエワの演奏でも、その持論を確信した。

 

最後の舟歌は、しっとりとした、流れの停滞しないピアノ音楽だった。

 

アンコールとして、日本語でのMCの後、まず、短いマズルカが演奏された。これもcis-moll。一連のショパンを、同じ調で始めて終わる、という構想だろうか。

 

そして、もう1曲、ベートーヴェンの25番のソナタの緩徐楽章。

 

2曲とも、ご本人に何か特別な思いがある曲なのだろうか。

 

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すばらしいリサイタルだった。

 

録音でしか聴いたことがない演奏家を実演で聴く、というのは、もちろんこれまで何度も経験しているが、今回のメジューエワは、ちょっと特別だった。

録音で聴いて好ましく思っていた彼女の実演を聴いて、どういう美点を持つピアニストであるのか、とてもよくわかったからだ。

 

貴重な経験ができた。

 

ベートーヴェン・イヤーの今年、メジューエワは、ソナタ全曲の演奏会を予定している。どれかを聴いてみたいものだ。

また、ショパンについては、今日、演奏されなかった、エチュード、プレリュード、ソナタなど、まとまった曲を、いつか聴いてみたいと思う。

 

(とても良い演奏会だったのだが、一つ残念だったのが、左隣に座った男性。プログラム冊子に、しきりと何か書き込んでいる。私もやることなので、それ自体は気にならないのだが、ノック式のボールペンらしく、書くたびに、「カチッ」と芯を出し、書き終わると、また「カチッ」と芯を収納している。その音が気になって仕方がなかった。どうせ、たびたび書くなら、せめて芯を出したままにしておけばいいのに。よほど言おうかと思ったが、言えなかった)