24日(日)、東京文化会館小ホールで行われたイリーナ・メジューエワのリサイタルを聴いた。2023年、メジューエワのピアノを聴くのは、5月の岐阜、10月の長野に続いて3回目である。
●イリーナ・メジューエワ ピアノリサイタル ショパンの肖像 第2回
日 時 2023年12月24日(日) 13:30開場 14:00開演
会 場 東京文化会館小ホール
ピアノ イリーナ・メジューエワ
曲 目 ショパン ポロネーズ第1番嬰ハ短調
ショパン 即興曲第1番変イ長調
ショパン スケルツォ第2番変ロ短調
ショパン マズルカハ短調 作品30-1
ショパン マズルカロ短調 作品30-2
ショパン マズルカロ短調 作品33-4
ショパン スケルツォ第3番嬰ハ短調
ショパン 24のプレリュード
[アンコール] ショパン 夜想曲第9番ロ長調
ショパン 前奏曲変イ長調(遺作)
メジューエワは、2023~2024年に「ショパンの肖像」と称する4回のシリーズを計画しており、今回はその第2回。24のプレリュードが聴けることから、チケットを買い求めた。
プログラム冊子から。
我々の席は、H列23番24番。
今年聴いたメジューエワの演奏会は、1925年製のスタインウェイのヴィンテージピアノだったが、今回はそうでない普通のスタインウェイだった。
前半はよく知らない曲が多かった。
最初のポロネーズ第1番は、力感のある、また明晰な演奏だった。
次の即興曲第1番もよく知らない。美しい良い曲だと思った。
続くスケルツォの2番は、高校の頃、ちょっと弾いてみたこともあるし、レコードでは長年聴いてきている。表現の幅がとても広い感じがした。妻は、この曲の演奏がとてもすばらしかったと言っていた。
マズルカ3曲。最初の2曲は短く、最後は長い曲だった。やはりショパンはマズルカに一番魅力があると思いながら聴いた。
スケルツォの3番は2番に比べてなじみがない。力演だと感じた。
スケルツォ、マズルカ、スケルツォと聴いて、聴きごたえはスケルツォ、曲の魅力はマズルカだな、と思った。
20分の休憩の後、お目当てのプレリュード。
聴きながら思ったのは、メジューエワのショパンが少し変化してきたのかな、ということだ。実演を聴き始めた頃のメジューエワは、何を弾いてもしっとりとした潤いを感じさせるピアニストという印象を持っていた。
だが、10月に長野で聴いた時、前半のベートーヴェンのソナタに比べて、後半のバラード全曲がとても情熱的な演奏に感じられた。
上野でのこの日のショパンは、長野のバラードと通じるものがあるように思った。いわば、彼女はショパンをバリバリと弾くという印象なのだ。戦闘的と言ったら言いすぎかもしれないが。
5月の岐阜も、オール・ショパン・プログラムだったのだが、その時はこんなふうには感じなかった。
ホールの規模の違い、席の違いもあるかもしれない。今回の上野は、小さいホールだし、座ったのがステージ中央を正面に見る席だったので、スタインウェイの蓋から音の圧をダイレクトに受ける感じがあった。
スケルツォの2番では冥想的な部分もあったし、スケルツォの3番の中間部では誠に美しい宝石のような音も聴けたが、一方で、「雨だれ」の最初の音には、もっとさりげない始め方もあるのでは? と思ったり、中間部がベートーヴェンのように聞こえたりもした。
そうした印象はあったものの、24曲のこの曲集の多様さを楽しむことはできた。13番などとてもしゃれていたし、24番は想像通り期待通りのさすがの演奏だった。
プレリュードは大学時代にポリーニのレコードで初めて聴いて以来、ショパンの中では特に好きな曲集なのだが、この日のメジューエワの演奏は、ちょっと長く感じた。
アンコールは2曲。私にはああこれか、とすぐわかる曲ではなかった。
2024年もまたメジューエワを聴きに行きたい。
2023年最後、56回目の演奏会だった。
チケットを買い求めながら、健康上の理由などで行けなかった演奏会が、7回。