その昔、多湖輝氏のベストセラー、「頭の体操」に、こんな問題があったのを覚えている。
「A社のカラーテレビの画面が、B社のカラーテレビのCMを映し出している。A社のカラーテレビに映し出されているB社のカラーテレビの画面は綺麗な色だが、この場合、A社、B社、どちらのカラーテレビを買えば良いか」。
文章は不正確だと思うが、こんな趣旨の問題だ。
今の方には、問題の趣旨がわからないかもしれないが、その当時は、まだカラーテレビが出始めの頃で、メーカーあるいは機種による、色の良さの差があった。それが背景である。
正解は、「どちらを買っても良い」だった。
解説に曰く、この場合、以下の組み合わせが考えられる。
①A社のテレビ 色が良い B社のテレビ 色が良い
②A社のテレビ 色が良い B社のテレビ 色が悪い
③A社のテレビ 色が悪い B社のテレビ 色が良い
④A社のテレビ 色が悪い B社のテレビ 色が悪い
②~④のどの場合であっても、画面に映るB社のテレビは綺麗な色に見えない。画面に映るB社のテレビが綺麗な色であるのは、①の場合のみである。
なるほど、と思ったものだ。たぶん、中学生の頃だったと思う。50年くらい前の話だ。
突然、話は変わる。
アンドリス・ネルソンスが、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団を指揮した、ブルックナーの交響曲のシリーズが、ドイツ・グラモフォンからリリースされている。
少し前に、マウントあさまで練習中の、7番のディスクを買って聴いてみたところ、オーケストラの響きが、とても深みのある美しさをたたえていることに魅せられた。これまで何種類も聴いてきた、7番のディスクの中でも、出色のものだと思った。
ということで、これまでにリリースされているブルックナーを全部買い求めた。3番、4番、6番、9番。
(1番、2番、5番、8番がまだ録音されていない)
今日までに、3番、4番、6番と順番に聴いてきたが、7番で感じた好印象は、他の曲でも変わることがない。
本当に深い、美しい響きだ。3番の2楽章など、ちょっと美麗に過ぎるのではないか、と思ったほどだ。
残る4曲も、出れば聴いてみたいと思っている。
ところで、このブルックナーの素晴らしさは、ネルソンスその人の指揮が生み出す特徴なのか、それとも、ゲヴァントハウスのオーケストラ固有のものなのか。
同じオケでの同じブルックナーだけ聴いていたのでは、わからない。
ネルソンスは、同じレーベルで、ボストン交響楽団とショスタコーヴィチの交響曲のシリーズが進行中であり、ウィーン・フィルとのベートーヴェンの交響曲全集も出ている。
今後、それらを聴く機会を作って行きたいと思う。それによって、今、聴いているブルックナーの良さが、指揮者の美点によるものか、オーケストラの美点によるものかが、わかってくるかもしれない。