自宅の浴室にはラジオを置いていて、風呂に入る時は、NHK-FMでクラシックを聴くのが習慣だ。
スイッチを入れて流れてくる音楽は、曲の途中であることがほとんどだ。
半世紀近くクラシックを聴いてきたこともあり、それが何の曲であるかは、わかることも多いが、時々、聴いたことのない曲が聞こえてくることがある。
知らない曲の場合、曲名以前に、これは誰の曲だろう、と思いめぐらすことになる。
これがなかなか当たらないのだ、私の場合。
少し前、ラジオをつけたら、ヴァイオリンとピアノの二重奏らしき曲をやっていた。モーツァルトではないな、と見当をつけたが、この種のレパートリーをそう知っているわけでもない。ベートーヴェンのソナタのどれかだろうか、と思っていたら、曲が終わってのアナウンスで、シューベルトの幻想曲という曲だと知った。
昨日も、スイッチを入れたら、知らないオーケストラの曲が聞こえてきた。
コンチェルトではなさそうだ。
近現代の曲、とは見当がついたものの、そこからあれこれ考えた。
トランペットの使い方に、ドビュッシーに近いものを感じたが、ドビュッシーではなさそうだ。
バルトーク? とも思ったものの、バルトークのあのマッシブな響きとは違う。
スラヴ系か。ストラヴィンスキー、いや違うな。もしかしたらショスタコーヴィチではないかと、だいぶ傾いた後、ひょっとすると、マーラーの10番あたりか、との考えに落ち着きつつ、風呂から出た。
ラジオも持って出て聴き続け、曲の終わりを待った。
固唾を呑んでアナウンスを待つ。
「デュティーユ作曲、交響曲第1番。ただいまの演奏は、セルジュ・ボド指揮NHK交響楽団でした」。
デュティーユ。
知らない名前ではない、という程度で、この人の作品は数えるほどしか聴いていない。なるほど、そうか、という感覚にもなれなかった。
まだまだだなー。
昔、柴田南雄氏の著書で、氏が同じようにラジオから聞こえてきたヴァイオリン協奏曲を、瞬時に「プフィッツナー」と、そういう曲種を書いているかも知らずに言い当てたエピソードが書かれていたのを思い出す。
さすが柴田先生。