紅白歌合戦は、途中で寝てしまったりして、ちゃんと観ないこともあるのだが、2022年は最初から最後までひと通り観た。
知らないアーティストが増えた。NHKの選考基準も変わってきているのだろう。
少し前に、「1960年代生まれ3人の識者が語り合う「紅白歌合戦、夢のラインナップ」
」というネット記事を見た。
そうそう、我々世代にとっての紅白はこうだよなー、と思いながら読んだが、まあこれは過去のこと。
さて、その話はさておき、紅白2022、観ての印象を少しだけ。
概して、例年に比べて、「歌をはしょった」感じがなかったように思う。
フルコーラスまではともかくとして、皆、それなりの長さで歌っていて、物足りなさはなかった。
観ていて、妻とも意見が一致したのだが、そしてこれは別に今回に限った話ではないが、今の若いアーティストのレベルの高さにはうならされる。
例えば、妻がいいと言っているKing Gnuの演奏を聴きながら、引き合いに出すのは申し訳ないのだが、かつてのグループサウンズの雄、ザ・タイガースのシングル曲、「君だけに愛を」を、つい思い出してしまった。あの曲の間奏でのたどたどしいリードギターは、King Gnuの見事なギタープレイに比べると、稚拙と形容せざるを得ない。グループサウンズが歌謡界を席巻したのは、1967年、1968年頃。あれから半世紀以上が経過して、日本のロック、バンド音楽がそれだけレベルアップしたことを痛感する。
歌唱力、演奏力のレベルアップだけでなく、若いアーティストが作り歌う楽曲そのものも、どれも魅力的だ。
私が特に感じ入ったのは、milet×Aimer×幾田りら×Vaundyの「おもかげ」だった。
ほんとに難しそうな曲だが、この4人の男女の見事な歌唱。
今の若いアーティストに感じるのはリズム感覚だ。
以前も書いた繰り返しになるが、私の世代の場合、森山加代子が「白い蝶のサンバ」(1970年)で16分音符の早口メロディを歌った衝撃が忘れられない。
そして今回の紅白で若いアーティストが繰り広げているのは、16分音符よりさらに細かい付点やシンコペーションのリズムだ。
彼ら彼女らは、そのようなリズム感や、歌唱力、演奏力をどうやって培い、身につけてこうして世に出てくるんだろう。
さて一方、ベテラン世代も、古びることのない自分たちのスタイルで堂々としたパフォーマンスを見せてくれた。
とりわけ、桑田佳祐feat.佐野元春、世良公則、Char、野口五郎の「時代遅れのRock’n Roll Band」はよかった。Charのギターが光った。
もちろん郷ひろみも。
(全員、私と同年代)
若いアーティストが聴かせてくれるものは、それに先立つ世代の音楽の否定の上に立つものではなく、ベテラン世代の音楽は今でも変わらぬ価値を持っている。
それを実感できたことが、今回の紅白では嬉しかった。
※過去の関連記事
日本のポップスの様式変遷を実感~紅白歌合戦
https://naokichivla.hatenablog.com/entry/44959342
才能のマルチ化と水準の向上
https://naokichivla.hatenablog.com/entry/56488435
紅白2020雑感
https://naokichivla.hatenablog.com/entry/2021/01/01/153740