naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

日本のポップスの様式変遷を実感~紅白歌合戦

晦日は、実家で両親と紅白歌合戦
イクスピアリでは、浦安オケの有志が「第九」の本番だが、日本人の大晦日はやっぱり紅白だ。

昨年と同じく、始めの方にもポップスと演歌をとりまぜる配列。
私として特に言いたいのは、何故、我が坂本冬美をこんな位置で歌わせるのかということだ。
でも「祝い酒」、よかった。さすがの歌唱。
今回気がついたが、坂本冬美は、ア行を歌う時に口を大きく開けない。喉が強いということなのだろう。敢えて口を開けて口腔で声を響かせなくてもいいということか。
来年は、少なくとも終盤、トリとは言わないが、終わり3人以内で歌ってもらいたい。

北山たけし、やはり歌は氷川きよしよりうまいと、今年も思った。

夏川りみの「花(すべての人の心に花を)」がすばらしかった。
この人の声は本当に美しい。聴き手を感動させようという力みがまったくなく、それでいて充分聴き手の心を動かす。
ジェイク・シマブクロという名前は以前から聞いていたが、初めてその姿を見た。若くてびっくりした。すばらしいウクレレだった。

布施明の「イマジン」、よかった。本人としては自分の曲を歌いたかったかもしれないが、こういうスタンダードナンバーを、説得力をもって歌える人はなかなかいない。

森昌子は、どうしてこんなに歌が下手になってしまったのか。
かつては実力派の一人だったのに、痛々しい。やはり再デビューが早すぎたと思う。もっとちゃんとトレーニングをしてから復帰すべきだったのではないか。
紅白に出したこと自体、話題作り、視聴率アップのためなのだろうが、疑問。

前川清、いつもながらぶれることのない着実な歌唱。
かつてのクールファイブのメンバーが集まっての「長崎は今日も雨だった」は、私としては感慨深かった。

前半のトリ、石川さゆり夫婦善哉」、森進一「おふくろさん」、いずれも聴かせた。
森進一は、やや情緒過多な嫌いもあったが。
私は、以前から森進一にもっとトリを務めてもらいたいと思っているのだが、久しくその機会がない。
北島三郎五木ひろし細川たかしに比べると、地味あるいは暗いところがあるのでやむを得ないところもあるが、トリのローテーションには入れておいてほしいと思う。

初出場の絢香、よかった。「三日月」、曲もいい。

中島美嘉は今回も聴かせた。前に歌った浜崎あゆみより、やはり歌はうまいと思う。

このあたりからは、紅白双方、聴きごたえのある歌が続いた。

さだまさしは、紅白出場が決まった時から、mixiのコミュで、何を歌うのかという意見交換が盛んだった。「案山子」というのは、ファンからすると、正直言って今さらという感もある。
いつもながら、淡々とした歌いぶりでよかった。ただ、以前から思っていることだが、ここ数年、この人は母音の響かせ方にクセが感じられる。特にエ行がイ行に近く聴こえるのが気になる。

氷川きよしは、前日に日本レコード大賞を受賞した「一剣」。
やはり、私にはこの人の歌は、あまりにも単純なものに聴こえてしまう。
もちろんうまいとは思う。しかし、声が開きっぱなしという気がする。これも一つのスタイルと言えばそれまでなのだが・・・。
もっと細かい歌の技術を聴きたい。もっと陰影のある歌を聴きたい。
スター性や、華という意味ではともかく、技術そのものはやはり北山たけしに軍配をあげたい。

今年の目玉、今井美樹の「PRIDE」はすばらしかった。
力みがまったくない、しかししっかりした歌だった。
紅白初出場はもちろん、日頃歌番組にそうしばしば出ている訳ではないと思うが、意識も緊張もない、自然体の美しい歌だった。
引き合いに出すのは申し訳ないが、かつて専業の歌手だった森昌子に比べると、はるかに水準の高い歌唱だったと思う。

天童よしみは、やはり今、女性の演歌歌手の中では一番だと今年も思った。
個人的な好みとしては、もちろん坂本冬美だが、歌のパンチ力において、僅かに天童よしみが勝ると言わざるを得ない。

倖田來未中島美嘉もいいが、やはり倖田來未はその上をいくと思った。
同じ関西だからということもあるが、この人は、和田アキ子の後継者になれると、今回思った。
和田アキ子が歌った「MOTHER」のようなバラードを聴いてみたい。

トリの一つ前、ドリカムとSMAPは、どちらもアーティストとしての存在感を感じさせた。
倖田來未に感服しつつも、吉田美和は、さらに別格と思わざるを得ない。ただ今回は、音響がちゃんとしたバランスで伝わってこなかった気がする。このメドレーは、あれだけ多数のコーラスを伴っていたら、もっと迫力が伝わってきてよかったと思うが、そうでもなかった。
SMAPは、ユニットとしての説得力。個人的には、「Dear Woman」を聴きたかった。
アトラクションで一部歌ってくれたが。

トリは、川中美幸が思いのほかよかった。初めてのトリへの意気込みを感じた。
サブちゃんはさすがの貫禄。8月の神宮花火大会でのライブを思い出した。
ともかく70歳なのだ。70歳にして、このパンチのある歌。
声楽家で70歳になって一線で歌える人がどれだけいるだろうか。それを思うと驚異だ。

毎回、紅白どっちが勝つかという点にはまったく興味はないのだが、今回の印象としては、前半は紅組に分、後半はいい勝負で、強いて言えば白組か、という印象だった。

仲間由紀恵中居正広、「ナカナカコンビ」の司会は、嫌味がなく無難な出来でよかったとは思うが、もう一つ味わいを求めたかった気がする。全編にわたって時間の制約と戦う紅白の場合、酷な要求かもしれないが。

今回の紅白、若いポップス系のアーティストの歌と、歌謡曲、演歌系の歌手の歌を聴いて、様式の一番の違いはビート感にあるということを痛切に思った。
私は、昭和30年代の歌謡曲から、40年代のグループサウンズフォークソング、そして50年代のニューミュージックという流れで、日本のポピュラー音楽を聴いてきた。
この間の様式の変化としては、4ビート、8ビートが主流だった音楽が、16ビートになったことが大きいのではないか、と、今回の紅白を見て思った。
今は、16ビートにさらに付点のリズムがつく。
この違いは大きい。
若いポップス系の音楽は、仮にそれがバラードであっても、細かいビート感を伴っている。例えばラップ系の歌とは、表向きの印象は相当違っているが、その実、ビート感においては、今のバラードと決して距離は遠くない。
だから、例えば一緒に見ていた父の世代からすると、ラップなどはうるさいだけで理解不能なのだろうが、それがバラード系のしっとりした歌であっても、その中の細かなビート感に、何かすっと入ってこない音楽だという違和感を感じるのではないか。
そんなことを思った。
日本のポップスに16ビートが持ち込まれたのは、私の聴体験でいうと、森山加代子の「白い蝶のサンバ」が最初で、結構衝撃を受けた記憶があるが、それを真に定着させたという点では、やはり吉田拓郎井上陽水の二人ではないだろうか。
彼らの作った様式が、今回のw-ins.、SEAMOにつながってきているように思う。

谷村新司など、思わぬ常連が出演しなかった今回の紅白だが、次回以降出てほしいアーティストとしては、やはりCHEMISTRY。彼らの歌は聴きたい。それから、コブクロを聴いていて、ゆずにも出てほしいなあと思った。さらに、ゴスペラーズを聴いていて、TRY-TONEに出てもらいたいと思った。これは無理かな。