改札を出て階段に向かう途中の通路で、あるいはその階段を上がって地上に出たところで、よくすれちがう女性がいる。
毎日ではない。週に1回、あるいは2回。
歳の頃は、30代半ばから後半くらいか。色白の美人だ。
美人だから顔をおぼえたのではない。
いつも走っているからだ。
歩いてくるのを見たことがない。会う時は必ず、むこうから走ってくる。
小走り、という程度の走り方だが、いつも、何か顔の表情に、「遅れちゃう!」とでも言いたげな、せっぱつまったものが感じられる。
この女性と行き会うようになったのは、最近のことではない。
10年、15年、もしかすると京葉線で通勤するようになった20年以上前からか?
とにかく、それだけの長い期間、この女性は、少なくとも私が見る時は、絶えず必死な表情で走り続けている。
何故、いつも走っているんだろう。
知りたい。
でも、走っているところを呼び止めるのは、はばかられる。とてもできない。
きっと、永遠に謎のまま終わるんだろうな。