naokichiオムニバス

69歳、公務員、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

絢香という人の音楽

未明の今、ちょっと目が覚めて、何気なくテレビをつけたら、NHKで絢香の「SONGS」をやっていた。

病気からの復帰過程などを語るインタビューと、何曲かのパフォーマンス。

途中でやめることも、チャンネルを変えることもできずに最後まで見入った。

この人の歌を日常聴いてはいない。紅白歌合戦で観て、そのたびに歌の上手な人だなと思う程度の接し方だ。

改めて何曲かを聴いてみて思ったこと。

とにかく難しいメロディを書く人だ。細かな音のまわり方、音域の広さ。
相当練習しないと私には歌えそうにない。
でも、今のOLさんとかは、こういう歌もたやすくカラオケで歌えるのかな、などと思った。

私には、メロディの動きが独特というか、複雑で、素直に耳に入ってこない。

たまたま昨日、いきものがかりの「いきものばかり」の一部を聴いたのだが、彼らの音楽が、最初のAメロはAメロ、サビはサビと、いかにも「そこに配置されるべきメロディ」に聞こえてくる、つまり、構成が素直に耳に入ってきたのを思い出した。

それに対する絢香の音楽は、例えばサビも、これまでの日本の歌謡曲やポップスで、典型的とされていたサビの音の動きではないように感じる。

意図的なものか、彼女の本能的な才なのか、ともかく、これまでの音楽とは違う場所に独特の花を咲かせている、という気がする。

それから、彼女の歌そのものについては、どこかぴりぴりしているというのか、常に自分の限界に近いところで歌っているという感じを受ける。
バラードであっても、ロック調のナンバーでも。

あくまで、私にはだが、彼女の音楽は、聴いていて心地よい、というものとは少し違う、と感じた。

昔、黒田恭一氏が、グールドについてだったか、ポリーニについてだったか、具体的に覚えていないが、「聴いていてつらいところで音楽をやっている」と評していたことがあった。
これも誰のことだったか忘れてしまったが、円満な音楽を奏でている誰かと対比しての指摘だった。
そのことを思い出した。

途中でやめることも、チャンネルを変えることもできずに最後まで見入ったのは、そういう、絢香の音楽の特質のためだと思う。