naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

バレンボイム=シュターツカペレ・ベルリン来日公演

今日13日(土)は、サントリーホールで行われた、「東芝グランドコンサート35周年特別企画 ダニエル・バレンボイム指揮・ピアノ シュターツカペレ・ベルリン(ベルリン国立歌劇場管弦楽団)」に行ってきた。

2週間前にネットであたって、残券僅か2枚というすべりこみで入手したチケットである。

※その過去記事
    バレンボイムシュターツカペレ・ベルリン来日公演チケットすべりこみ予約
       http://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/65179273.html

京葉線で新木場、有楽町線に乗り換えて永田町、南北線に乗り換えて溜池山王へ。

溜池山王駅からアークヒルズへ向かう長い通路。

ポリーニの来日公演の広告があった。

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ミューザ川崎に行きます。

アーク森ビルで、ランチ。3階にあった丸善が、昨年末で閉店していたことを知って、びっくり。

食べに入ろうと思っていた米楽も閉まっていたので、え、ここも閉店しちゃったの? と思ったら、厨房設備の故障による臨時休業だった。

さて、どこへ。

結局、スープ・ストックで食べた。満席だったので、外のテーブルで食べたけど、今日はすごく暖かかったからよかった。

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会場時刻も過ぎ、ホールへ。

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プログラム冊子の表紙。充実した内容のプログラムだ。1,500円。

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東芝グランドコンサート35周年特別企画

日 時 2016年2月13日(土) 13:30開場 14:00開演
会 場 サントリーホール
指揮・ピアノ ダニエル・バレンボイム
管弦楽 シュターツカペレ・ベルリン(ベルリン国立歌劇場管弦楽団)
曲 目 モーツァルト ピアノ協奏曲第26番ニ長調戴冠式
     ブルックナー 交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」

バレンボイムの実演は、初めて聴く。シュターツカペレ・ベルリンも、初めてだ。

我々の席は、2階RB5列15・16番。ステージを、ほぼ右横から見る形。弾き振りのコンチェルトは、ソリストが正面客席に背中を向ける形だったので、バレンボイムの手元はよく見えた。

楽員がステージに登場すると、客席から拍手。楽員は、自分の席に到達しても座らずに、客席方向に向かって立ったまま。最後にコンミスが入場してきて、客席に一礼したところで、全員が着席した。

モーツァルトの弦は、10・8・6・4・3の編成。対向配置だった。

バレンボイムのピアノは、水っぽい音という第一印象。休憩時の妻の話では、ペダルを使い過ぎとのこと。

聞こえてくる音はそんな感じだが、打鍵自体は大変クリアで、力強いものであると思えた。

音の聞こえ方は、ホールの大きさ、座った席の位置のせいかもしれない。また、スタインウェイの蓋は完全に外してあったので、その影響もあったのだろうか。

2楽章。平明きわまりない音楽だが、凜とした空気(しかし冷たいわけではない)がピアノのまわりに凝縮していたように感じられた。

3楽章は、手の内に入った演奏。融通無碍というか、自由闊達というか、非常に自在なピアノと感じた。

この楽章の終わり近くで、主題が戻ってくるところで、2楽章のテーマの断片が回想されるように演奏された。楽譜を確認していないので、はっきりとは言えないが、カデンツァではない場所だった。楽譜にはないアドリブだっただろうか。

コンチェルト全曲を通じて、場面場面で、時に木管、時に低弦と、オケのパートのきわだたせ方が素晴らしかった。

休憩後、後半は、ブルックナーの4番。

この曲を実演で聴くのは初めてだ。3年前に、自分でも弾いた曲でもあり、大変楽しみに聴いた。

コンチェルトでは、広々と感じられたステージが、ブルックナーでは、ところ狭しと椅子が並べられる。

弦は16型だった。

バレンボイムは、今度は指揮棒を持って登場。拍を常に几帳面に振る、という指揮ぶりではない。時には、まったく指揮をせずにオケにまかせる場面もあった。

1楽章途中のヴィオラのソリは、もっと前面に出てほしかったと思った。他のパートが大きすぎた。ヴィオラ弾きとしては、ね。

その点、2楽章にも2回出てくるヴィオラのソリは、とてもよかった。また、この楽章の「逍遥」の雰囲気は、本当にこたえられないと感じた。

楽章間で客席が咳で包まれるのは、別に珍しいことではないが、今日の3楽章の後の咳はものすごかった。そんなに我慢してたのか? と言いたくなる。

4楽章は、一つギアが上がった感じで、実にダイナミックな力演だった。

文春新書に、「クラシックCDの名盤」というシリーズがある。宇野功芳氏、中野雄氏、福島章恭氏の3人が、曲につき演奏につき演奏家について、それぞれの意見を述べ合うもので、長年愛読している。

この中で、バレンボイムについては、毀誉褒貶が分かれている。70年代、バレンボイムを絶賛していた宇野氏は、今や彼をまったく評価していない。一方、中野氏、福島氏は評価している(福島氏は、最初は批判的だったが評価を変えた)。

バレンボイムシュターツカペレ・ベルリンを指揮したベートーヴェンのシンフォニー(CD、実演)について、中野氏と福島氏は、国際化の中で今や失われつつある古き「ドイツの音」と評している。

初めて実演で聴く、このオーケストラの音は、はたしてどうだろう、と思っていた。

私には、古き佳き時代のドイツの音、というものが明確にイメージできないので、何とも言えないが、金管が存分に活躍するブルックナーであっても、金管が突出することはなく、金ピカ、テカテカとしたサウンドにはならない。オケ全体が、ほどよい節度を保ちつつ、しかし、力感は充分にある、という印象だった。

先月聴いた、ムーティ=シカゴ響と比較すると、シカゴ響の方が、機能的なオケだったと思う。ただ、シカゴ響が、アメリカのオケだから、金ピカだったかというとそうではなく、むしろしっとりとした落ち着きを感じた記憶がある。つまるところ、アメリカ的、ドイツ的、という色分けは、両オケを聴いて、私には感じられなかった。

話は戻って、4楽章のコーダ、練習記号で言うとVからは、ヴァイオリンが6連符のリズムを強調したのが耳についた。帰宅後、この日の演奏で使われた、ノヴァーク版(1878/80)のスコアを見ると、ヴァイオリンもヴィオラも、ここはトレモロの刻みになっている。しかし、ステージ上では、ヴァイオリンが、1小節6つの音符にアクセントをつけているように聞こえたし、全員ではないが、刻まずに弾いている楽員もいたように見えた。

そのことが気になったからでもあるが、ここから曲尾に向けての長いクレシェンド、気持ち的には、音楽の歩みにぴったり寄り添いつつ聴けたとは言えなかった。こういうタイプの、徐々に盛り上がって行く音楽って、聴いている自分のテンションを合わせていくのが、結構難しいものだ。今日は、少々失敗した。

それはともかく、最後の音がホール内に響いて、消えていくまで、拍手もブラボーの声も出なかったのは、とてもよかった。

ブルックナーの4番を初めて実演で聴けてよかった。また、対向配置で演奏してくれたおかげで、その面白さも味わうことができた。

オケの中では、ヴィオラがよかったなあ。自分で演奏したパートなので、どうしてもヴィオラを聴くし、身びいきにもなるが。このブルックナー、前記のソリだけでなく、全体にヴィオラの存在感があった。

しかし、この曲を実際に演奏したんだなあ、と何度も思った。もう一度演奏したいか、と言われると、ちょっとためらうものがあるが、こんな曲を演奏できたんだ、いい経験だった、とは改めて思った。

アンコールはなかった。まあ、そうだろうな。浦安の時も、我々にしては珍しくアンコールなしにしたし。

数え切れないくらい、何度もカーテンコールが繰り返された。

やっと楽員が退場し始めたので、席を立ったが、一部のお客さんが拍手を続けていて、最後にバレンボイムだけがステージに出てきた。

しかし、普通、外来オケと言うと、せいぜい3~4種類のプログラムを持って歩く形だが、今回は、コンチェルト6曲、シンフォニー9曲で、9種類のプログラムだ。指揮者・ソリストも、オケも大変だろう。

とにかく、めったに聴けないものを聴くことができてよかった。