naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団来日公演

13日(水)、名古屋でベルリン・フィルの来日公演を聴いた。

 

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団来日公演

日 時 2019年11月13日(水) 18:15開場 19:00開演
会 場 愛知県芸術劇場コンサートホール
指 揮 ズービン・メータ
管弦楽 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
曲 目 ブルックナー 交響曲第8番ハ短調

 

この演奏会に足を運んだ経緯については、前にも書いた。

 

24日(日)に、浦安シティオーケストラ創立30周年記念特別演奏会で、この時期来日中のベルリン・フィルのホルン奏者、アンドレイ・ジュスト氏と、リヒャルト・シュトラウスのコンチェルト(1番)を共演する。

 

せっかくなので、ジュスト氏がベルリン・フィルの楽員として演奏するのを聴きたい、と思い、公演日程を検討の結果、この13日は、翌日の用務のため、東京から大阪に移動して前泊する予定だったので、名古屋で途中下車して聴くことにしたものだ。

   忙中閑(その2)~名古屋でベルリン・フィル
      https://naokichivla.hatenablog.com/entry/2019/11/06/232111

 

名古屋に向かう新幹線の車窓から眺める日没。

f:id:naokichivla:20191117072639j:plain

 

地下鉄東山線栄駅からすぐのところにある、愛知芸術文化センター。この中に、愛知県芸術劇場がある。

f:id:naokichivla:20191117072744j:plain

 

愛知県芸術劇場には、大ホールとコンサートホールがあるが、2017年6月に一度ずつ来ている。

   2週連続の名古屋演奏会<1>~パレルモ・マッシモ劇場の「トスカ」
      https://naokichivla.hatenablog.com/entry/65784789
   2週連続の名古屋演奏会<2>~ドレスデン・フィルのブラームス
      https://naokichivla.hatenablog.com/entry/65784884

 

f:id:naokichivla:20191117073153j:plain

f:id:naokichivla:20191117073211j:plain


今回のベルリン・フィルの来日公演、この名古屋が初日である。

 

今秋は、ウィーン・フィルも来日公演を行っており、このコンサートホールで、6日前の7日(木)に、ティーレマンが指揮して、同じブルックナーの8番を演奏している。

 

私は、ベルリン・フィルを実演で聴くのは、今回が初めてである。

 

メータの実演は、大阪で一度聴いている。2014年11月、イスラエル・フィル。

   「オーケストラ」を満喫~メータ=イスラエル・フィル
      https://naokichivla.hatenablog.com/entry/64573510

 

私の席は、2階15列37番。

 

プログラム冊子の表紙。

f:id:naokichivla:20191117073320j:plain

 

メンバー表に、アンドレイ氏の名前が載っている。

f:id:naokichivla:20191117073358j:plain

 

浦安では、まだ本番ソリストとのソロ合わせをしていないので、直接お目にかかったことがない。アンドレイ氏がソリストとして参加している、バッハのブランデンブルク協奏曲全曲のCD(ゲーベル指揮ベルリン・バロック・ゾリスデン)を持っているが、ブックレットに写真が載っているので、それを持って行って、遠目に、あの人かなあ、と見当をつけた。

 

16型、対向配置。

 

楽員が配置につくと、最後にコンマスが、上手側から登場した。珍しい。コンマスは、樫本(大進)さんではなかった。

 

メータも上手側から登場。杖をついての歩行だ。指揮台では、椅子に座っての指揮。暗譜。

 

1楽章の冒頭、ヴィオラ、チェロ、コントラバスの主題が、とても柔らかく深い音で、すぐに引き込まれた。

 

テンポは若干ゆったりめだ。

 

初めて実演に接するベルリン・フィルは、とにかく全員が身体を大きく揺らせて一所懸命に弾くオケだと思った。

 

中でもファースト・ヴァイオリンの輝かしい音は、ひときわ目立つものだった。そこだけ光が当たっているように感じられた。

 

2楽章、冒頭のヴィオラとチェロのテーマは、弓順での演奏。∩∩ではなかった。

 

ヴィオラのトップは、黒髪の女性。おそらく遠藤直子さんだろう。

 

3楽章。

 

冒頭の響きは、この楽章の彼岸のイメージからすると、少なからず現世的で生々しい音に感じられた。ちょっとマーラーを連想した。しかし、深い響きだ。

 

楽章が進むにつれて、このシンフォニーにおいて、中核をなすのはこの3楽章であると、次第に痛感させられてきた。

 

何と言う音楽だろう。

 

このシンフォニーは、何度も聴いているし、昨2018年には、横島勝人先生のワークショップで自分でも演奏した。しかし、この楽章のすごさをこれほど感じさせられたのは初めてだ。

 

客席の全員が、息を飲み、身動きできないでいるように思われた。

 

ティーレマンウィーン・フィルのこの楽章は、どんな演奏だったんだろう、とふと思った。

 

つくづく考えさせられたのは、昨年のワークショップでの演奏体験のことだ。

 

2泊3日のワークショップで、色々学び、練習もした。しかし、短い日程で言わば「撫でた」程度だった、あの楽譜が、ベルリン・フィルの手にかかると、あの時はまったく想像もつかなかった、こんな高みに登るのだ。

 

「群盲象を撫でる」と言うが、まさにそれだと思った。大きな驚きだった。

 

思えば、ワークショップの練習の際、横島先生が、「この8番をちゃんとやろうと思ったら、30回は練習しないとね」と言われていた。その意味がわかった。

 

4楽章の冒頭のボウイングは、∩∨だった。

 

1楽章からずっと聴いてきて、常に思ったのは、音楽と一緒に呼吸ができる、ということだった。

 

長いシンフォニー、その都度その都度の時間を、長い旅を楽しむように、じっくり堪能することができた。

 

そんな時間もいよいよ終わる。練習記号Uu、Ruhigで、ヴァイオリンの8分音符の上行分散和音が始まったところで、「あー、もうすぐ終わっちゃう・・・」とさみしく感じた。

 

曲尾の大伽藍は、期待通りだった。

 

しかし!

 

フライングブラボーが出てしまった。

 

開演前、場内アナウンスは、「曲の余韻を味わっていただくため、指揮者が指揮棒を下ろすまで、拍手はお控え下さい」という趣旨の注意を、再三再四言っていた。

 

それなのに・・・。

 

聞いてなかったんだろうな。

 

ちなみに、ティーレマンウィーン・フィルのこの曲では、曲が終わった後、しばらく沈黙があったと聞く。

 

誠に残念。

 

アンコールはなかった。ウィーン・フィルは、「天体の音楽」を演奏したそうだが。

 

最後、楽員がはける時に、周囲の楽員と互いに握手を交わしていたのが印象的だった。

 

とにかく、ブルックナーの実演で、これほどの感銘を受けたことはこれまでなかった。

 

ベルリン・フィルというオケのすごさ。まったく作為なく音楽に語らせるメータの指揮。

 

ところで、「メータのブルックナー」と言えば、宇野功芳氏の「メータのブルックナーなど聴きに行く方がわるい」が、一部に有名である。

   発見!~「僕にいわせれば」
      https://naokichivla.hatenablog.com/entry/66103337

 

しかし、私も敬愛する宇野氏には、この演奏会については、「メータのブルックナー、ほんとにすばらしかったですよ」と申し上げたい。もしご存命でこの演奏会を聴かれていたら、どう評されただろう。

 

この演奏会を聴き、昔、メータがロサンゼルス・フィルを指揮した8番、それからウィーン・フィルを指揮した9番のディスクを買おうと思った。

 

若い頃のメータが、どのようなブルックナーを演奏していたか、興味があるからだ。

 

(追 記)
前記の通り、前週、ウィーン・フィルが同じ曲を演奏した。大学オケの後輩であり、Facebookで交流のある、名古屋在住のT氏は両方を聴かれたそうだが、氏のFB投稿によると、「メータ=ベルリン・フィルの圧勝」とのことだった。