9日(木)、東京芸術劇場で行われた新日本フィルの創立50周年特別演奏会を聴きに行った。
シャルル・デュトワの指揮による2公演の内、オール・フランス・プログラムの方に出かけた。
●新日本フィルハーモニー交響楽団 創立50周年特別演奏会
日 時 2022年6月9日(木) 18:15開場 19:00開演
会 場 東京芸術劇場コンサートホール
指 揮 シャルル・デュトワ
ピアノ 北村 朋幹
管弦楽 新日本フィルハーモニー交響楽団
曲 目 フォーレ 組曲「ペレアスとメリザンド」
ラヴェル ピアノ協奏曲ト長調
[ソリストアンコール]
武満徹 雨の樹 素描II ―オリヴィエ・メシアンの 追憶に―
ドビュッシー 交響詩「海」
ラヴェル 管弦楽のための舞踏詩「ラ・ヴァルス」
実は5月20日(金)に、チョン・ミョンフン指揮の東京フィルハーモニー交響楽団で、「ペレアスとメリザンド」、「ダフニスとクロエ」第2組曲、「海」、「ラ・ヴァルス」という演奏会を聴いている。偶然だろうが酷似したプログラムである。「ダフニス」が同じラヴェルのコンチェルトに差し替わった以外は、曲の並びまで同じ。両指揮者、両オケの聴き比べとなった。
今年は新日本フィルの創立50周年ということで、ホワイエに結成演奏会のポスターが飾られていた。
また、「50周年誌」というのを販売していたので、買い求めた。
私の席は2階E列11番。オケがほどよい距離で俯瞰できる良い席だった。
客席に座っていると「場内での写真撮影や録音は固くお断りします」とアナウンスがあるので、ホワイエのモニターを撮影してみた。これはだめかな。
プログラム冊子から。
座席図がはさみこまれていた。弦は14・12・10・10・8。
チェロのトップは、5日(日)の所属オケ定期演奏会でコンチェルトのソリストを務めて下さった桑田歩先生だ。
最初のフォーレが始まると、響きがとてもたっぷりしている。かつくっきりと個々の音が届いてくる音響だ。
この組曲では桑田先生がソロを弾かれる場所がある。とてもきれいだった。
コロナ禍も長くなって、気づくと曲間(楽章間)の咳は復活してきたな。なくなって良かったと思っていたのだが。やめたままにしない? 我慢できたんだから、つまり。
コンチェルトへの転換でファーストヴァイオリンとヴィオラがはけた。弦は12・10・8・6・4。
スタンドマイクが出てきてピアノの脇に置かれた。
近年とても好きになったラヴェルの両手のコンチェルト。実演で聴くのは初めてだったかな。
個々の楽器の音の効果など興味深く聴いた。
2楽章の味わいにはまったく得難いものがある。この楽章は私にとっては真夏のイメージだ。ジリジリと灼けつく庭を、冷房の効いた部屋の中から見つめている、そんな感じに思える。
全曲を通じて、ソリストにはもう少し明るくはじけたところがほしいと感じた。オケにも同じことが言えるように思った。
ソリストアンコールは、聞き覚えのない曲。フランス系だがラヴェルではなさそうだな、ドビュッシーかな、と思いながら聴いた。
(終演後、アンコールボードは見当たらず、翌日新日本フィルのサイトを調べたら、武満徹だった。聴いたことがない曲じゃなかった)
休憩後、弦はもとの編成に戻った。
まず、「海」。オケの響きに量感が戻った。
メリハリのきいたすばらしい演奏だった。
この曲を聴きながら、デュトワのダイナミックな指揮ぶりに、ふと小澤(征爾)さんを思った。デュトワは1936年生まれ。今年86歳になるが、かくしゃくという言葉を使うことに違和感を感じるような、存分な身体の動きだ。1つ年上の小澤さんのここ10年ほどの経過を思う時、ご本人にとっては不本意、我々音楽ファンにとっては大変残念なことだ。
このドビュッシーまで聴いて、先月のチョン・ミョンフン=東京フィルの方が、味わいという点では僅かに勝るかな、という気がした。
いやでも、ほぼ同じ曲目を2回聴く中では、やはり最初に聴いた方がインパクトが大きかったのかもしれない、とも思った。
最後の「ラ・ヴァルス」は圧巻。誠に自在な演奏だった。リハーサルではこの曲に一番時間をかけたのではないだろうか。
デュトワも、チョン・ミョンフンと同様、奏者とは握手を交わしていた。それで良いと思う。
アンコールはなく、楽員がステージからはけたが、ほどなくデュトワがコンマスの崔文洙さんと2人で出てきた。
聴き比べは、私の耳では甲乙つけがたいものだった。2回聴けてよかった。