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68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

日本フィルハーモニー交響楽団 第730回東京定期演奏会

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28日(金)、サントリーホールで行われた日本フィルの定期演奏会を聴きに行った。

 

●日本フィルハーモニー交響楽団 第730回東京定期演奏会
日 時 2021年5月28日(金) 18:00開場 19:00開演
会 場 サントリーホール
指 揮 鈴木 優人
ヴァイオリン 辻 彩奈
管弦楽 日本フィルハーモニー交響楽団
曲 目 ステンハンマル 序曲「エクセルシオール!」
    シベリウス ヴァイオリン協奏曲ニ短調
    [ソリストアンコール] シベリウス 水滴
    シベリウス 交響曲第6番ニ短調

 

もともと首席指揮者のピエタリ・インキネンが指揮する予定だったが、新型コロナウイルスの影響による入国制限のため来日できず、指揮者、曲目とも変更になった。
(インキネンは、ワーグナーの「パルジファル」抜粋とR.シュトラウスの「アルプス交響曲」を振る予定だった)

 

辻彩奈さんのコンチェルトは、18日(火)に東京都交響楽団とのサン=サーンスの3番を聴いており、2週連続となる。

 

2019年9月に、大阪のザ・シンフォニーホールで、辻さんが演奏するモーツァルトの5番のコンチェルトを聴いた(オーケストラ・アンサンブル金沢)。その時に、彼女のヴァイオリンでシベリウスブルッフのコンチェルトを聴いてみたいものだと思ったのだが、念願がかなった。

シベリウスのコンチェルトは、モントリオール国際音楽コンクールで優勝した時の演奏曲だそうで、つまり辻さんの勝負曲。モントリオール交響楽団とのレコーディングもある。

 

プログラム冊子から。

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私の席は1階10列9番。普段なら2階席を買うのだが、ネットでチケットを購入する時に、2階、3階席はほとんど残っておらず、やむなく1階席にした。

座ってみると、やはりヴァイオリンの向こうに木管金管奏者が隠れてしまう形になり、やっぱり不満足だった。同じ1階席ならずっと後方の席の方が標高が高い分まだ見え方がよかったはずと悔やんだ。

 

弦楽器の譜面台はプルトに1台。このところ1人1台は見かけなくなった。どのオケもこの形が定着してきたようだ。ヴィオラは外配置。
マスクについては自由のようだった。着けていない楽員の方が多かった。
男性奏者は棒タイ。今月聴いた3つのオケは全部そうだったが、今はこれが主流なんだろうか。


弦は、ファーストとセカンドの人数が私の席からは不明。ヴィオラ以下は6・6・5だった。

 

ステンハンマルの序曲は、たぶん初めて聴く。明るいか暗いかと言えば暗い音楽。軽いか重いかと言えば重い音楽。重厚とまでは言わないが。

 

ホルンの音の聞こえ方にちょっと驚いた。私の席は下手の端の方だったが、ホルンの場合、ベルが後ろを向いているからか、音がステージ後方の壁にはね返って聞こえてくる。最初は、下手側の2階席にバンダがいるのかと思ったのだが、そうではなかったようだ。

 

プログラムノートによると、この曲は初演当時「ドイツ的」と表されたそうだが、曲の後半、「トリスタンとイゾルデ」の「愛の死」の後半の追い込みの部分をちょっと思い出すような響きがあった。

 

さて、次はいよいよお目当てのコンチェルト。

 

期待にたがわぬすばらしい演奏だった。聴けてよかったと思った。

 

辻さんのヴァイオリンは、終始力強くアグレッシブ。このコンチェルトの持つ、土俗的、粗野な要素と、シベリウスらしい凛とした美しさの幅の広さを兼ね備えた演奏だった。

 

2楽章冒頭の冥想的な音も聞き物だった。私がこの曲を聴く時の1つのポイントである、3楽章の重音で駆け上がって行くところも胸のすく思いだった。

 

とにかく楽器がよく鳴っている。特に低い方の弦。

 

先日のサン=サーンスをさらに上回り(私自身の曲の好みからすると当然という面もあるが)、これまで色々なソリストで聴いてきたシベリウスの実演の中でも一番打たれる演奏だった。

 

オケについては、1楽章のヴィオラトップのソロがインテンポでなくずいぶんソリスティックだった。こういうのは初めて聴く。
また3楽章では、ホルンのゲシュトップトの音が、ステンハンマル以上に下手側、側壁の方から聞こえてきた。

 

大変な難曲なんだろうと思う。1楽章の終わりの追い込みなどは、このレベルのプロであってもアンサンブルに気が抜けないように見えた。

 

2楽章と3楽章の間は、ほとんどアタッカだった。

 

あー、それにしてもいい曲だ。知っているヴァイオリン・コンチェルトの中ではやはりこれがナンバーワン。
(そう言えば、大学オケの定期演奏会で、桐朋学園大学の学生だった古澤巌さんのソロでこの曲を演奏したことがある(OBとしてエキストラ参加)が、1981年のことだったから、今年でちょうど40年になる)

 

アンコールは、もしかしたら、前週にも演奏された、権代敦彦氏の「Post Festum」3曲の中からどれかが演奏されるのかと思ったら違った。

ステージの照明を落として演奏されたのは、シベリウスの「水滴」だった。ピツィカートだけで演奏される、チェロのトップとの短い二重奏。辻さんは、前記、2019年9月のモーツァルトの5番の後も、この曲をアンコールで演奏した。

 

辻さんのTwitterから。

 


20分が主流の最近では珍しい、15分の休憩。

 

メインがシベリウスの6番であることが嬉しい。

 

2013年に日本フィルがシベリウスの全曲チクルスを行った時、3番、6番、7番の回を聴いた。その時の指揮はインキネンだった。日本フィルの6番を聴くのは二度目となる。

 

やっぱりいい曲だなあ、6番。

 

このシンフォニーは、基本的に全曲にわたって「疾走する音楽」だと感じる。そこがシベリウスのシンフォニーの中でも独特の魅力だ。

 

2楽章がまた独自の世界。何か、水を浴びているというか、水の中を泳いで進んでいるというか、不思議な感覚がある。清涼感、浮遊感。

 

ヴィオラのトップの音が常に突出して聞こえるのが気になった。最初そう感じた時には、そこがソロなのか、と思ったりしたが、以後もずっとそうだった。他の5人よりも音が大きいのはいいとしても、パート全体が溶け合っていない感じがした。

 

各楽章の間はほぼ間を置かずに演奏された。

 

この6番、自分でも一度弾いてみたいと思った。1楽章の最初の方など、ヴィオラとしてはなかなか弾き甲斐がありそうだ。オーケストラ・モデルネ・東京とかで今後機会があるだろうか。

 

オケのアンコールはなし。1階は規制退場で最後になったが、それでも21時前にはホールを出た。これくらいの長さの演奏会もすっきりして良いものだ。

 

日本フィルのTwitterから。

 

翌29日のシベリウスの一部の動画を見つけた。

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