令和3年(2021年)の大相撲は、序二段まで陥落しながら前年に幕内復帰を果たした照ノ富士が、元の大関を超えて横綱にまで昇進する活躍で、年4回優勝した。
同年七月場所は、白鵬=照ノ富士の千秋楽全勝対決があり、翌九月場所にその白鵬は引退。照ノ富士の復活劇が白鵬の幕引きと重なる形の年だった。
翌令和4年(2022年)の優勝力士は、以下の通り。
一月 関脇 御嶽海 13勝2敗
三月 関脇 若隆景 12勝3敗
七月 前頭 逸ノ城 12勝3敗
九月 前頭 玉鷲 13勝2敗
十一月 前頭 阿炎 12勝3敗
照ノ富士が前年の勢いを保てず、三月、九月、十一月と3場所休場したこと、大関陣が白鵬に代わる強者になれなかったことから、乱世の様相となった。
関脇以下の優勝が6場所中5場所。年の後半は、平幕優勝(いずれも三役経験者ではあるが)が3場所続いた。
そして令和5年(2023年)は、照ノ富士の状況はさらに悪く、五月が皆勤した唯一の場所(但し優勝)で、それ以外の5場所は休場。
ますます乱世の拍車がかかるかと思われたが、優勝力士については、そうではなかった。
三月 関脇 霧馬山 12勝3敗
七月 関脇 豊昇龍 12勝3敗
十一月 大関 霧島 13勝2敗
横綱不在の5場所中3場所は大関が優勝してその地位の面目を保ったし、関脇の優勝が2回あったものの、霧馬山、豊昇龍ともその後大関に昇進した点が前年と大きく違う(御嶽海は大関に昇進したもののその後陥落)。
番付社会にとっては健全な状況になったと言える。
(但し、優勝の星数レベルは前年同様12勝が多く、11勝の優勝まであったのはいまだ物足りないところだ)
さて、明けて令和6年(2023年)一月場所だが、上位陣充実の優勝争いが展開されていて大変喜ばしい。
11日目終了時点。
1敗 関脇琴ノ若
大関昇進も遠くないと言われる琴ノ若がトップを走っているものの、それに1差で続く3人が横綱大関で占められている(ここに貴景勝がいればなおよかったが休場)。
(ただ、横綱大関3人の2敗がいずれも平幕相手のものである点は残念。琴ノ若のようにせめて1つにとどめておけばもっとよかったのだが)
12日目は、この4人が、下位の好成績力士とそれぞれ対戦した。対琴ノ若の阿武咲、対照ノ富士の大の里(新入幕)は、直前まで優勝争いにからんでいた。
4人すべて、下位力士を退けたので、1敗、2敗の状況は変わらぬままだった。
優勝争い終盤、出場している横綱大関がすべて残り、次期大関と言われる関脇が加わる顔ぶれ。
平幕力士が顔を見せていないこのような優勝争いは、いつ以来のことだろうか。
12日目のNHKの放送で、上位4人の千秋楽までの対戦予想を出していた。
13日目(決定) 14日目(予想) 千秋楽(予想)
この3日間、4人以外の対戦相手がまったくいない、総当たりのつぶしあいとなる。
まさに番付上位者だけで展開されている優勝争いならではのことで、こういう状況も珍しいのではないだろうか。
これを観ていた妻が、「準々決勝、準決勝みたいなもの」という。
日々の勝敗で状況が変わる点、確かにトーナメントの雰囲気もあるし、総当たりのリーグ戦でもある。
ポイントは、琴ノ若が星1つリードしているところ。
残り3日、誠に目が離せない。
上に記したここ2年の経過を振り返り、改めて思うのは、優勝争いは上位がひっぱる形であってほしいということだ。
若手や新鋭がそこに割って入ってくるのももちろん望ましいが、その場合は、その力士がやがて三役以上に上がって、自らが上位力士に定着するようであってほしい。
今場所で言うなら、琴ノ若にそれを期待する。
少し先の展望をするなら、照ノ富士が毎場所皆勤して優勝を争うことが期待できるところまで復活するのは難しいと思われる現状では、次にそれを担う横綱大関の番付が充実してほしい。
まずは現大関の霧島、豊昇龍がそれを期待される(貴景勝は、首の故障があるので厳しいか)が、琴ノ若もそこに加わるべき存在だろう。個人的には、若元春にも、と思う。
勢いや華があるという意味では、ここ何場所かの優勝争いにも加わった、熱海富士、伯桜鵬、大の里に一気に上がってきてもらいたい気もする。
(そうした中では、大関陥落組が返り咲く余地は厳しくなっていくと思う。個人的に見るところでは、力量面でその可能性があるのはまず朝乃山、次いで髙安と思うが、2人とも怪我が多く、毎場所皆勤することができなくなっている現状を考えると、相当難しいのではないか)