naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

「We Love BEETHOVEN」ワークショップ(第2回)に参加

5月12日(日)、茂木大輔先生のオーケストラワークショップに参加した。

茂木大輔先生の指揮で、ベートーヴェンのシンフォニーを勉強するもので、昨年の7番に続く2回目は「エロイカ」がテーマ曲。

 

茂木先生と共に、プロの先生方がオーケストラに入って指導して下さる。弦のトップに座られる5人の先生方は全員N響の楽員である。
・ゲストコンサートマスター:猶井 悠樹 先生
・ゲストセカンドヴァイオリン:村尾 隆人 先生
・ゲストヴィオラ:中村 翔太郎 先生
・ゲストチェロ:西山 健一 先生
・ゲストコントラバス:岡本 潤 先生
・ゲストフルート:山本 葵 先生
・ゲストオーボエ:和久井 仁 先生
・ゲストホルン:熊井 優 先生

 

12日の全奏ワークショップに先立って、まず4月12日(金)に「オンライン勉強会」が開かれた。私は当日、「ながらの春 室内楽の和音楽祭」の室内楽セミナーに参加中でリアルタイムの視聴ができず、後日アーカイブ視聴した。茂木先生がボリュームのある資料を作成して下さり、2時間半に及ぶ勉強会だった。

 

次に、4月28日(日)に弦と管に分かれての分奏が行われた。これには参加した。

 

そして、いよいよ全奏ワークショップである。

 

会場は江東区古石場文化センター。分奏とは別の初めて行く会場である。最寄り駅は越中島駅なので、京葉線に乗って向かった。

9:10頃会場に着いた。2階の大研修室に入る。

事前に入った情報では、パートごとの参加人数はこうなっている。

   1st 16 2nd 10 ヴィオラ 12 チェロ 12 コントラバス 9
   フルート 6 オーボエ 7 クラリネット 6 ファゴット 6
   ホルン 7 トランペット 4 ティンパニ 1

エロイカ」には通常考えられない大編成だ。木管は3倍管(というのかな?)。

 

ヴィオラはトップの中村先生を含めて6プルト12人。外配置である。
午前、午後、夜の3コマに分けて、シフトが決められていた。
私は、午前が5プルトの裏、午後が3プルトの裏、夜が5プルトの裏。

所定の席に座って準備。

 

10時頃チューニング。
茂木先生から開始にあたってのお話があった。

茂木先生のお考えでは、この「エロイカ」は、明るくさわやかな曲。ベートーヴェンがそういう音楽を書いたのは、この頃までで、その後は、辛く苦しい要素が入ってくる。5番や7番とは音の作り方が違うとのこと。
また、「エロイカ」はとても複雑に書かれているので、皆さんがこれから一生楽しめる曲だとおっしゃっていた。
(その後の練習でも、「皆さんはこれから色々なオケでこの曲を弾くと思うけれど」との言い方をしばしばされていた。おそらく参加者中最年長であろう私としては、「これから」がどれくらいあるかな、と思いながら聞いていた)

 

まず、1楽章を通した。提示部リピートあり。コーダのトランペットも楽譜通りで補強なし(茂木先生によると、ここで聞かせたいのは低弦の動きだからだそうだ)。
通した後、返し練習。
茂木先生は音楽の作りを細かく説明しながら指導して下さった。

 

外配置で5プルトの裏に座ると、すぐ後ろがコントラバスになる。

弾いていて気がついたのだが、トップの岡本先生は音を出すのが早い。コントラバスは指揮者からの距離があるため、音の時差を考えてのことなのだと思う。

ヴィオラコントラバスが同じタイミングで音を出す場所では、私はトップの中村先生を見ながら合わせているのだが、それよりも一呼吸早く後ろからコントラバスが聞こえる。こういうことは過去に経験がない。どうしたらいいものか当惑があった。

 

ついついめいっぱい弾いてしまうが、午後から夜まで続く長丁場なので、ほどほどに力を抜く部分も作るように気をつけた。
何しろ、弦分奏の時は、夜1コマだったにもかかわらず、中村先生の隣で、先生にひきずられるように没頭して弾いた結果、翌朝筋肉痛で苦しい思いをしたのだった。

 

休憩をはさんで練習して、12時半過ぎ、午前の部、1楽章が終了した。

 

1時間の昼食休憩。
なじみのない土地でもあるので、電車に乗る前に駅近くのコンビニで食べるものを買ってきていた。
大研修室にはステージがあり、聴講をする方の椅子が並んでいる。そのあたりで食べた。

 

13時半再開。午後の部である。
2楽章。これも通してからの返し練習。

 

15時頃休憩。

再開後は3楽章と4楽章。アタッカで続けて演奏する形で通した。
3楽章では、スケルツォの冗談性はppの音にあること、また「sempre pianissimo」とわざわざ表記してあるところは、大きくなりがちだとベートーヴェンが見抜いていた箇所であることなどのお話があった。

茂木先生は、ゲストの先生方にしばしば意見を聞かれ、また先生方に指導してもらうよう促したりされた。

 

途中休憩をはさんで、4楽章をさらに練習。
茂木先生は、午前からそうだったが、「この部分には何を感じるか、どういうことを思うか」としばしばオケに問われる。
例えば1楽章のFの前、16分音符の刻みになるところは、何人かにイメージを言わせた後、茂木先生としてはここは凍える冬の寒さだと思う、とおっしゃった。
4楽章で印象に残ったのは、2回目のフーガが終わったPoco Andanteからの部分。茂木先生は、ここに「諦観」を感じると言われた。しかしその諦観から、F以降立ち直っていく、とも。

 

全4楽章の練習が終わったところで、各ゲストの先生方から一言ずついただく時間が設けられた。
夜コマの通し演奏(本番)を残す時点での、先生方からのお話だった。受講者からの質問も受け付けて下さった。

・まわりのパートを聴いて、みんなで「1つのp」を作るようにしたい。
・弾きすぎているところがある。少し「引く」部分を作ると良い。
・クレシェンドした先に突然pがあるとか、「ありえない流れ」を楽しみたい。それも「そう書いてあるからそうやる」のでなく、「ただ音を鳴らす」のでなく、意味のある音を出すように心がけて。
・休符に気をつけたい。その休符は、休むためのものなのか、次への準備なのか。
・「自分のパートの音楽」になっているところがある。目の前の楽譜に没頭せず、顔を上げて引くこと。それだけで他のパートの聞こえ方が違ってくる。
・空間に音を混ぜていくような感じに調整してほしい。上にあるいは前に音を集めていくように。
ベートーヴェンは楽譜に色々な情報を書いてある。何故こう書いてあるのか、と、ひもときや謎解きを続けてほしい。
・管楽器のブレスをし始めるのが少し遅い。拍子の感じ方が硬い。
・「アンサンブル」が足りない。案外棒を見ていない。ただ見るのでもだめ。棒から感じること、汲み取ること。自分の音しか聴いていない人が多い。
・自分が休んでいる時、演奏しているパートの音色やニュアンスを聴いて、そこに参加すること。

日頃、所属オケで指導者に言われていることも多かった。やはりどんな団体でも、アマチュアがアンサンブルをする時に欠けているものは、プロの先生方から見ると共通するところがあるようだ。

 

18時頃ゲストの先生方のコメントが終わり、休憩を入れた後、ホルンの熊井先生のレクチャーの時間となった。
熊井先生はナチュラルホルン(1900年製とのこと)を持って指揮台の脇に立たれ、音を出しながら、ベートーヴェンの時代はこういうホルンだった、というテーマで話された。
エロイカ」では、F、Es、Cの管、3本を取り替えながら使うのだそうだ。
茂木先生の求めに応じて、2楽章230小節目のソロや、ブラームス1番終楽章のアルペンホルンのソロも吹かれた。


30分ほどのレクチャーは18:45頃終わり、夜コマまで45分間の休憩となった。

今回のワークショップでは、事務局(運営)からおにぎり2個の軽食が用意された。昼食として食べてもいいし、夕食にしても持ち帰ってもいい。

 

このワークショップの事務局は、ホルンのYさんを始めとする若いメンバーで構成されているが、実に行き届いた丁寧な運営で、昨年の第1回でも感服した。そのことが、2回目以降も参加したいと思った理由の大きな部分の1つだ。
諸連絡はメールとLINEチャットが併用されているが、非常に的確でわかりやすく、また参加者からの質問等へのレスポンスも迅速だ。

この軽食は、おにぎりの具やおかずの構成が異なる2種類が用意されるとインフォメーションされたが、食品アレルギーに配慮して事前に希望の種類を申し出るアンケートがあった。私はアレルギーはないが、そこまで考えてくれるのか、と感心した。
また、この12日は、東京メトロ東西線の一部区間が工事のため終日運休になったのだが、東西線はワークショップ会場への移動路線の1つであり、この点の事前注意喚起にもぬかりはなかった。
若い事務局の皆さんが日頃どういう仕事をされているのかは存じ上げないが、おそらく会社でも優秀なのだろう。私が上司の立場だったら是非部下にほしい人材たちだと思った。

 

こちらがその軽食。私はこの休憩時にいただいた。

 

さて夜コマは19:40頃チューニング。
ヴィオラは朝から12人中11人の参加で推移していたのだが、夜コマに至って全員が揃った。
プルトで一緒に弾くTさんと少ししゃべる機会があった。Tさんは、TBSで1~3月に放映された、市民オケを舞台とするドラマ「さよならマエストロ」にオーケストラの楽員役(エキストラ)として出演されていたのだそうだ。もっぱらその話題で盛り上がった。

 

通し演奏は滞りなく一気に終わった。
20時半頃終了(終演)。

 

この日は、朝から専属のスタッフが録画と写真撮影を行っていたが、全員の記念写真を撮ってもらった。
また、パートごとなど、メンバー間でそれぞれにスマートフォンを使った写真撮影がしばらく続いた。
カメラマンの方の写真、参加者撮影の写真は既にLINEを通じて展開された。私も自分で撮った写真の何枚かをLINEのアルバムに投稿した。
映像も遠からず展開されると聞いている。

 

撮影タイムが終わったところで、会場のかたづけ。
後は打ち上げだ。

 

前回のワークショップは、午前と午後の2コマで終了し、夕方から有志参加の打ち上げが行われた。
今回は、分奏が設定されたのに加え、この全奏当日も、夜コマまでの3コマとなった。
遅い終了なので打ち上げはないだろうと思っていたところ、門前仲町近くの店で挙行するとの事前告知があったので、エントリーしていた。

 

21時過ぎ、中村先生他何人かで会場を出て店に向かった。

 

10分ちょっとで店に着いたが、既に大きな部屋は先発隊が座ってほとんど空席がなくなっていたので、別に用意されていた部屋にヴィオラコントラバスのメンバーを中心に座ることにした。
中村先生を囲んで歓談していると、茂木先生も一時合流され、楽しい時間を過ごすことができた。
昨年に続いて茂木先生にサインをいただこうと、先生の著書を持参していたのだが、差し出すタイミングを逸してしまった。

 

さすがに21時半頃からの打ち上げは、ゆっくり過ごす余裕がなく、23時半前には三三五五席を立つ人が出始め、私も店を出て越中島駅まで歩き、日付がもうすぐ変わろうかという頃の下り電車に乗って帰宅した。

 

2回目のワークショップは、前回の7番同様大変ためになった。
ベートーヴェンの9曲の中で、「エロイカ」は特に好きな曲でもあるし、こうして分奏から全奏とびっちり弾くと、改めてこの3番という曲が充実しきった傑作であることを実感できた。今回その充実を特に感じたのは2楽章だった。
エロイカ」は確か過去3回演奏経験があるが、一定期間の練習を重ねてのそれらの本番に増して、今回のワークショップは密度が濃く曲の理解が深まった気がする。茂木先生始めゲストの先生方のおかげだと思う。

 

これで9曲中2曲が終わった。年1回ペースとすると、あと7年。
コンプリートできれば、最終年は76歳になるかならないかの時期である。
それまで元気で演奏を続けられることを目標にしよう。
確かな情報かどうか不明だが、次回は5番という話が打ち上げの時に聞こえてきた。
個人的な希望を言えば、1番から順番に進めてほしいと思う。ベートーヴェンの創作の歩みを追っていければと思うのだ。

 

茂木先生、中村先生、ゲストの先生方、ありがとうございました。

※過去の関連記事
    「We Love BEETHOVEN」合奏ワークショップ参加
       https://naokichivla.hatenablog.com/entry/2023/04/19/231452
    茂木大輔先生ワークショップ受講
       https://naokichivla.hatenablog.com/entry/2023/07/31/175228
    茂木大輔先生の第2回ワークショップに参加
       https://naokichivla.hatenablog.com/entry/2024/02/18/110917
    茂木大輔先生の「エロイカ」ワークショップ分奏に参加
       https://naokichivla.hatenablog.com/entry/2024/04/30/183237

 

※ワークショップ往復に聴いた音楽
    メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲
       ムター=カラヤンベルリン・フィル
    シューマン ライン
       レヴァインフィラデルフィア
    ベートーヴェン エロイカ
       バーンスタインウィーン・フィル
    ハイドン ロンドン
       C.デイヴィス=アムステルダム・コンセルトヘボウ管