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矢幡洋著 「あなたの話は、なぜまわりくどいか」

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矢幡洋氏著の「あなたの話は、なぜまわりくどいか」(中公新書ラクレ)を読んだ。

私をご存知の読者はおそらく失笑されているだろう。
私の話はまわりくどい。
(ご存知でなくても、このブログの文章をお読みになれば想像がつくだろうが)

自覚はしているので、この本のタイトルに目が止まり、読むことにしたのだ。

大変参考になる内容だった。

著者は、「話し方のスタイルは、その人の持つパーソナリティーのパターンと緊密に結びついている」とまえがきで指摘する。
そして、スピーチ技術の観点から、話のまわりくどさを改善するのでなく、「自らの性格を知り、今までの自分に特徴的な適応戦略に気づく」ことで、話し方を変えていくアプローチを提案する。

本文では、まず、人の話し方をいくつかのパターンに分けて紹介する。

<言葉が足りない系>
  断言口調・命令的       サディスティックな話し方
  もじもじ・おどおど      回避性性格者
  孤独を愛する口下手な人々   シゾイドの話し方
  感じたことを思いついたまま  演技性性格者
<まわりくどい系>
  いかに自分が偉いか      自己愛の人たち
  存在感の薄い「イエスマン」   依存性パーソナリティー
  話をそらす名手        拒絶性パーソナリティー
  強迫性性格          細かい人、きちんとする人たち

次に、人のパーソナリティーを、大きく、
  演技性パーソナリティー    言葉が足りない系話し方の典型
  強迫性パーソナリティー    まわりくどい系話し方の典型
に分け、これに絞って、論を進める。

私は、読みながら、自分はやっぱり「強迫性性格」に該当するんだなあ、と痛感した。

更に、まわりくどい話し方のパターンを、著者は10パターン紹介する。

タイプ1 網羅系 どんどん追加される付加的情報
タイプ2 順序遵守系 省略ができない
タイプ3 理屈こねまわし系 一番言いたいことはなんなのか
タイプ4 ノンストップ独演会系 聞き手が口を挟めない
タイプ5 ズバリ直言系 感情を表明するよりも論理的分析を行う
タイプ6 箇条書き系 ネズミ算式細分化が理解を妨げる
タイプ7 方向指示器多用系 つまり、それから、まとめますと……
タイプ8 くどくど念押し系 確実性を強く求めすぎて
タイプ9 ああでもないこうでもない系 「結論はなんなんだ?」
タイプ10 アナウンサー系 他人事のように苦悩を語る

読んでいて、俺ってこういうところあるよなあ、と思うことばかりだ。

特に仕事においては、日頃、人にわかりやすい話し方を心がけているつもりだが、それは一歩違ったところでは、まわりくどい話になっているかもしれないとつくづく感じさせられる。

この本の特徴は、話し方のテクニックの面から論じていないことで、パーソナリティー、性格分析をベースに書かれているので、私には非常に説得力が感じられる。
少し自分をふりかえって、反省しなければ、と思う。

自らが強迫性性格であるという著者は、終章の「まわりくどさからの脱出法」で、「強迫性性格者は自分の話し方のスタイルをいじるな」と指摘する。
自分のタイプを自覚した上で、反対のタイプを意識して、「バランスをとる」ことを考えればよい、というのが、この本の結論である。

まわりくどい話し方、その根底にある、強迫性性格を、「改善すべき悪しきもの」と位置づけない著者の姿勢は、非常に救われるものであった。

最近読んだ本の中では特によかった。お薦めしたい一冊である。