naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

若書きアーカイブ~オフコースのアルバム試聴記(1980年4月29日、24歳)

※「音楽断章」ノートから。この時点で、最新のアルバムは「Three and Two」。

4.29 オフコース1よりジャンクションA面までつづけてきく

   僕の贈りもの、ラウンド2 と ワインの匂いの間にはやはりかなりの差
   がある。初期2枚は高く評価できない。

   ・詩の充実がない。初期の鈴木さんの詩はあまりにも拙く内容にも乏しい。
   ・音楽的な複雑さが、自然さをともなっていない。説得力がない。ムダも
    感じられる。ストリングスの使い方。
   ・新しい門出など、器のハードさと曲との間にもギャップ。ヴォーカルの
    線の細さもある。
   ・バックメンバーがきまった人でないせいか、2人とバックの間に距離が
    ある。コンチェルトのように、バックにあわせ2人が歌うという趣がつ
    よく、バックのサウンドにどうしてもこれというものが感じられない。

   ワインの匂いではさまざまな点での飛躍がみえる。
   ワインの匂いになると、アレンジにも、バックの演奏に生彩がみられ、説
   得力も感じられる。全体の印象として散漫さがあったのが、まとまりを感
   じさせられるようになった。
   音楽にムダがみられなくなった。アレンジの必然を感じさせるようになっ
   たのはもちろん、眠れぬ夜や老人のつぶやきなど全く他にない新しい輝き
   があるし、ワインの匂い、憂き世にのアレンジなどこまかさもみえるよう
   になった。
   (ムダをそぎおとし、室内楽的なまとまりをつよめたこの方向が、結局
    Three&Twoではいきつくところまでいき、5人以外の音を加え
    ず、色彩的に単色なものとなり、シンプルのきわみといったサウンド
    なってきたといえる。ムダな音はないし、どこかをいじると均衡が崩れ
    そうなあたり、ラヴェルの緻密さ、ベートーヴェンのクヮルテットを思
    わせる。演奏技術からいっても、5人のアンサンブルの緻密さは 極上
    の弦楽四重奏を思わせる)

   ベスト3
      ①スリーアンドトゥ
      ②フェアウェイ
      ③ソングイズラブ

私がオフコースにのめりこんだのは、この前年、79年の8月に、今はなき田園コロシアムでのライブに接したのがきっかけだった。

2ヶ月後にリリースされた「Three and Two」で、それは決定的なものになったが、この、80年4月時点では、今回自分で読み返してみても驚くくらい、オフコースに対してまだ客観的な記述(私の中に批判的な視点がある)になっている。

3作目のアルバムである「ワインの匂い」を、ベートーヴェンのシンフォニーにおける「エロイカ」(第3番)の飛躍に重ねて考えたことは、今でもおぼえている。

また、当時、田園コロシアムで見た、そして、「Three and Two」で聴いた、5人編成のロックバンドこそが、私にとってのオフコースだったことを物語っている。

ここで記している、「5人以外の音を加えないオフコース」は、その後、アルバムでもライブでも変化を加えていくし、5人どころか、鈴木(康博)さんが抜けた4人での活動に移行していくのだが、この時の私はそれを知る由もない。