naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

3月場所千秋楽

白鵬逆転優勝


白鵬が決定戦を制しての逆転優勝。貴乃花と並ぶ22回目の優勝だ。

鶴竜が1敗のままですんなり優勝を決める可能性が高いと思っていたので、意外な展開ではあったが、観る側としてはドラマチックで面白かった。

まず、鶴竜豪栄道戦。中日から7連勝と波に乗り、しかも勝てば敢闘賞という状況の豪栄道とは言え、もう大関に手がかかっている鶴竜なのだから、実力の違いを見せてほしいと思っていた。

しかし、結果は一方的。張り差しからのもろ差しを許して何もできなかった。

やはり目の前にぶらさがった優勝への意識が、平常心を奪ったか。

支度部屋に戻った鶴竜をカメラが再三映し出したが、動揺がありありと見えた。

この状況下での結び、白鵬把瑠都戦。

鶴竜が負けた瞬間から、カメラが白鵬の表情を追ったが、どういうわけか、転がり込んできたチャンスに、「よしっ! こうなったら優勝するぞ」という決意がうかがえない。

結びの土俵に上がっても、「どうしようかな、負けちゃおうかな」と思っているかの様子にさえ見えた。

実際の相撲も、立ち会いから充分な形を作れず、把瑠都に左前まわしをとられた。
ただ、横綱昇進が消えた把瑠都としては、この一番に格別のモチベーションはなかっただろうし、立ち会い左前まわし、という白鵬のお株を奪うようなこの格好も、彼の相撲のパターンにはない。右上手ならともかく、左前みつからどうするのか、と思案した感じがあり、そこを白鵬がまきかえた。

大して内容のある相撲とは思えなかった。

そして決定戦。

土俵に上がった鶴竜の表情は、既に動揺をふりはらい、気持ちを切り替えてきているように見えた。白鵬に気力の充実がなければ、最低でも五分五分の相撲、場合によっては鶴竜有利かとも思えた。

立ち会い、白鵬が張り差し。おそらく今場所初めてだろう。いい手とは思えないが、ともかく先手はとっていい形を作った。
ここから、鶴竜がまきかえ。朝日新聞の記事によると、今場所、まきかえ上手な鶴竜は、そのスキをつかれることを懸念し、まきかえを封印してきたという。今場所初のまきかえだ。

本割の一番、無理なまきかえに乗じて寄られた白鵬は、その記憶があったか、すかさず白房下へ寄り立てた。

ここで鶴竜はよくこらえて残した。決定戦にふさわしい熱戦。

白鵬がここで無理に寄っていたら、うっちゃられていたかもしれない。

依然もろ差しの鶴竜が、ここから先に攻めていたらどうだったかわからないが、さすがに土俵際で粘って寄り返したのが精一杯。先に白鵬が動き、空振りの内掛けから、左上手投げ。

必死でねじふせた、という感じの決着だった。力の差を見せつけてのねじふせではない。決定戦に関しては、白鵬の相撲に、何としても勝ってやる、という気持ちが感じられた。立ち上がってから、相撲をとる中で、こういう相撲になったからには、絶対負けられない、という気持ちが増幅していったように見えた。

鶴竜は、この千秋楽、2番とも張り差しにやられた結果となった。

この決定戦は、互いに死力を尽くした攻防、本当にいい相撲だったと思う。

ただ、初の逆転優勝、それも先行する相手が星を落としての他力逆転だった点、貴乃花に並んだ白鵬の今後については、懸念されるものがある。

大関が地力をつけて追い上げてきた、という構図ではない。
あの完璧無類と思われた白鵬の方に翳りが見えてきたのではないか、という懸念だ。

あと6場所で北の湖と並ぶ、連続2ケタは何とか更新してもらいたいと思うが、優勝についてはペースダウンするのではないか。

初の6大関時代


さて、話は変わって6大関時代。

千代大海魁皇が引退し、年齢的には中堅どころの大関ばかりとなった。今後の力士寿命が短いという大関はいない。

「3場所33勝」で、大関に手が届く「関脇としては強い力士」が、このところ続いているものだから、とうとう6大関

把瑠都が今場所横綱昇進を手にしていたら、入れ替わりで5大関だったのだが。

大関の「インフレ現象」だ。

6人も大関がいて、3場所33勝、つまり1場所平均11勝をあげることは、計算上も大変難しくなる。

最近大関に上がった力士の、昇進後を見てみる。

琴奨菊
大関3場所で、11勝、8勝、9勝。計28勝。2ケタ勝ったのは1場所だけ。

稀勢の里
大関2場所で、11勝、9勝。
議論を呼んだ、昇進直前の場所、10勝を加えると、計30勝。

琴奨菊が今大関をねらう関脇だったら、来場所全勝優勝しても32勝。
同様に稀勢の里は、10勝、11勝、9勝では、場所後の大関昇進はなく、来場所13勝を求められる。

そういうことなんだよね。

昇進前、3場所33勝をあげて昇進した大関が、昇進後はそのレベルを保てない、というのは、以前からあったことだが、大関の人数が増えてくれば、ますますその傾向が強まる。

横綱になるほどの大関はおらず、かと言って、年齢的にはとり盛りだから、カド番を迎えて淘汰される大関もいない。
そんな状況が当分続くのではないか、という気がする。
つまり、8勝、9勝の大関が毎場所3人、4人いる、という状況だ。

そんな状況のワリを食う形で、白鵬が一人で疲弊していくとすれば、角界全体にとってもよいことではない。

以前は、こういう時に、現大関に期待するより、さらに下にいる若手に期待、みたいな話がよく出た。

確かに、今の平幕には、いい若手、魅力的な力士が増えてきた。
しかし、彼らの内、何人かが今後伸びてきた時に、まだ大関が6人いたら。

7人目、8人目の大関ってのもねえ・・・。

来場所への期待


さて、大関云々はともかくとして、今書いたように、楽しみな力士が増えてきている。
個人的には、今場所の成績を別に、妙義龍、栃乃若、松鳳山、高安、千代の国、隠岐の海、勢。

また、来場所は千代大龍が入幕してくるし、佐久間山も十両に昇進する。

このへんの力士がいい相撲を見せてくれるのを期待したい。

シンメトリー


最後に。今場所7勝をあげて三役にとどまれそうな安美錦の星取。

   ○○○●●●●○●●●●○○○

見事な左右対称。