この3番、白鵬がまわしをとりにいかないことを、とにかく不思議に思っていた。
相手をよく見て離れて相撲をとりきることもできる人だ。しかし、今場所の相撲はそうではなく、差しにはいきながら、まわしをとらず、不安定な体勢のままで攻めているところが、豊響や豊ノ島に逆転の投げを食う要因になっている。
盤石のイメージのこの横綱としては信じられない状況だ。
盤石のイメージのこの横綱としては信じられない状況だ。
昨日、左手人差し指の剥離骨折が明らかになり、なるほどそれならまわしをとりにいかないのも仕方がないかと、納得しかかったが、いや、やっぱり違うと思った。
肉体面のケガの問題よりは、やはり精神面ではないのか。
僅か2年前に、連勝記録への挑戦で、おそらくはごくごく限られた力士しか体験しなかった重圧を味わいながらも、それをはねのけて、双葉山に次ぐ63連勝を達成した。
その白鵬が、少々のケガで、ここまで相撲が崩れるものだろうか。
その白鵬が、少々のケガで、ここまで相撲が崩れるものだろうか。
気力さえ充実していれば、ここまで別人のような相撲にはならないように思えてならない。
精神的な部分での勤続疲労が、ここにきて噴き出たのではないだろうか。
大関が6人になった。ここで、その6人の頭をことごとく押さえて、自分が孤高の存在であり続けることにも、容易ならざる気力が必要なはずだ。
それやこれやが、今場所の状況ではあるまいか。
まわしをとるとらないの上半身の問題ではなく、今場所は一貫して下半身の運びに安定感がまったくない。
精神面に加え、肉体的な衰えというのが早ければ、疲労の蓄積は間違いなくあり、それらが複合した状況かもしれない。
今日の相撲は、とりあえず一息ついたという印象を一般には与えたかもしれないが、残り5番の大関戦、勝ち越すためには2勝3敗が最低ライン、2ケタには4勝1敗が必要となる。
しかし、やはり初優勝の大きなチャンスであることは事実だ。
相撲ファンが長く待望してきた、日本人力士の優勝が久しぶりに実現するかどうか?