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68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

シュトラウスのオペラのすばらしき世界!~新国立劇場「アラベラ」

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昨31日(土)、午前中は出社して仕事をした後、新国立劇場へ。

R.シュトラウスの「アラベラ」。

昨年の今頃だったか、2013~2014シーズンの演目が発表された時、4月に行った「ヴォツェック」と、この「アラベラ」だけは、どうしても観たい、と思ったのだった。

とは言え、それは、めったに実演でお目にかかれそうもない演目だから、という理由であって、実は「アラベラ」というオペラにはまったくなじみがない。

あらすじもほとんど知らないし、音楽も、ショルティの音源を事前にウォークマンで1度聴いた程度。
ちゃんと聴くのは初めてだ。

スタッフ、出演者は、画像の通り(右下、虫眼鏡マークをクリックすると拡大します)。

指揮は、ベルトラン・ド・ビリー管弦楽は東京フィル。

演出は、フィリップ・アルローで、2010年に続く再演となる。
本来、1860年頃のウィーンを舞台にしたこのオペラを、1930年代、第一次世界大戦第二次世界大戦の間の時代に設定した演出とのことだが、特に違和感を感じるような前衛性はなかった。

歌手の内、伯爵夫妻を始め、何人かは2010年にも歌っている。

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先月の「ヴォツェック」は、休憩なし上演だったので、早く終わったけど、これは長いなあ。

席は、A席2階、R11列の1番。

しかし、オペラ劇場の座席に座ると、独特の高揚感があるよね。

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ピットの中に、コントラバスが7本見えた。やっぱりシュトラウスは大編成だ。

初めての演目なので、やはりなかなか深くは入れない。音楽を追いかける形になるし、視覚的にも、舞台上の動きが全部追えない。知っているオペラなら、例えば「薔薇の騎士」の幕切れのハンカチなど、予め注目しながら観るのだが、そういう見方ができない。

でも、でも、「アラベラ」の世界、楽しむことができた。

やっぱり、シュトラウスのオペラって、すごいなあ、と思った。

ストーリー自体は、ほんとに他愛のない内容だ。
同じホフマンスタールでも、「薔薇の騎士」の方が、よほど内容に色々な機微があると思える。それに比べたら、全然大したことのないお話だと思う。

しかし、そんな話を観る我々に、かくも豊饒な時間を与えてくれる、練達の業。
かつて、彼を揶揄する物言いとして、「同じリヒャルトでもワーグナーには及ばず、同じシュトラウスでもヨハンに及ばない」との言葉を、何かで読んだことがあるが、そんなことは全然なかろう。

こんなオペラを書ける人が、他に何人いるだろう。

1幕は、やや前置き的な感じを受けたが、2幕の楽しさときたら、格別のものがある。

オペラは、やっぱり休憩の時間がいいよね。ちょっとビールを飲んだりして。
午後公演だから、外も明るいし、気持ちがよくて、オペラの幸せが増幅されるような気がする。

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3幕は、少々ドタバタ劇になるが、途中から、ほろっとさせる場面も交えつつ、幕切れに収拾していく巧みさは、さすがシュトラウスだと感じさせられた。

オペラ全体を通じて、魅力的だと思ったのは、まずズデンカ。

プログラム冊子の解説の中にも書かれていたが、タイトルロールはアラベラであっても、ストーリーの中で重要なのは、この男装の妹だ。

ズデンカがいてこそ、基本、他愛もないストーリーが、オペラになりうる。

一つ、演出面で疑問だったのは、3幕の途中、初めて女性の格好をしたズデンカが、階段を下りてくる時の衣装が白っぽい色だったこと。
それまでに舞台上にいる、他の人物の多くが、ホテルの宿泊客ということで、ガウン様の白い衣装を着ていた。
それをかきわけて下りてくる形だと、ズデンカであることがわかりにくいのだ。

オペラ全体の中でも、一番の転換ポイントとなる場面だけに、ここは、例えば真っ赤な衣装で、はっきりとわかるようにしてほしかった。

あと、フィアッカミッリがよかった。
ストーリーの上での存在感はともかくとして、鮮やかなコロラトゥーラは、このオペラの中では異彩を放つ。

この役、この劇場で2003年に上演された時は、鵜木絵里さんが歌われている。
浦安市民演奏会で、「キャンディード」のクネゴンデのアリアを歌って下さった鵜木さんのフィアッカミッリも、さぞ聞き物だったことだろう。

とにかく、すばらしかった、「アラベラ」。
観ることができてよかったなー。

しかし、こうなると、R.シュトラウスのオペラを、ひと通り、実演で観てみたくなる。
サロメ」、「エレクトラ」、「ナクソス島のアリアドネ」、「影のない女」、「無口な女」、「カプリッチョ」・・・。

今後、いくつ観られるだろうか。

さしあたり、来年の今頃、新国立劇場で「薔薇の騎士」がある。これは、何を置いても観なければ!

(帰宅後、どうしても「アラベラ」をまた観たくなって、ネットでDVDをさがした。ティーレマンが指揮したメトロポリタン歌劇場の公演、ウェルザー=メストが指揮したウィーン国立歌劇場の公演、どちらにしようかと思案し、やはりここはウィーンだろう、と後者を注文した)