naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

音楽「自分史」~ヴィオラとの出会い

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   ↑神の啓示のように頭に浮かんだベト7のスコア


ピアノや進路についてどたばたとした高校時代だったが、もう二度と経験したくない(笑)受験勉強を経て、運よく大学に進学できた。




1974年(昭和49年)4月、東京の一橋大学に入学し、小平市の下宿で親元を離れての生活が始まる。

受験勉強からも解放されたのだから、キャンパス生活では、当然何か音楽のサークルに入ろうと思っていた。

入学式。
式が終わって表に出ると、おびただしいサークルが勧誘のデスクをひろげていた。
音楽のサークルはどこだ、とさがすそばから、あちこちのサークルが、右から左から歌舞伎町の客引きさながらに、私の腕をつかんでデスクに連れていこうとする。
それをふりはらいつつ、いくつかの音楽系サークルのデスクで名前を書き、説明を聞いたりした。

管弦楽団
マンドリンオーケストラ
男声合唱
混声合唱
あたりが候補だった。

何日か色々考えたが、やはり管弦楽団が一番本格的なもの、というイメージがあった。
高校卒業までに、2年半くらいレコードでクラシック音楽に親しんできていたし、やるならクラシックかという気持ちもあった。
何と言っても決め手になったのは、入学翌年の1975年が建学100周年にあたるため、管弦楽団と合唱サークルが合同で、ベートーヴェンの「第九」の演奏会をやる予定があると聞いたことだった。
初めて買ったクラシックのレコードが「第九」だった私としては、それだったら是非オケで「第九」を演奏したい、と思い、管弦楽団に入部することを決めた。

しかし、その時点で操れる楽器というと、やはりピアノ、あとはギター。
どちらもオケの通常編成にはない。
初心者として楽器を何か始めなければ。さて何を。

話は入学式の勧誘の時に戻るが、オケのデスクで名前を書きながら、できる楽器がない話をした。
そうしたら、相手をしてくれた先輩が、「ヴィオラかチェロなら人数が少ないから、初心者でもすぐ演奏会に乗れるよ」と言う。
ヴィオラかチェロかぁ・・・。
確かに、ヴァイオリンだと自分のピアノのように子供の頃から習ってきた人間がたくさんいるんだろうな、そういう人たちと一緒にやるんじゃ初心者は旗色が悪いな。
・・・なんていうコスい考えが頭をよぎる。
(さらにいえば、常にソロをとることになるオケの管楽器を初心者として始める気もまったくなかった)

そして、これは今でもはっきり覚えているのだが、そんな話をかわしていたデスクの前で、ベートーヴェンの7番のスコアの一部(上の写真)が、私の頭の中に浮かんだのだった。
セカンドヴァイオリンと一緒に渦巻きのように動く、このパッセージ。
あれは神の啓示だったのだろうか。
「この音符を弾いてみたい」という思いが、私の頭の中に小さく宿った。

そして、入部を決めた後日、オケの部室を訪れて入部希望を伝えた時に、楽器はどうするのと聞かれ、ヴィオラをやりたいです、と答えることになる。




人は何か楽器をやる時に何故その楽器を選ぶのか。
茂木大輔さんの「オーケストラ楽器別人間学」によれば、そこには必然があるという。
私も、自分がヴィオラを今でも弾いていることに、それが偶然なのか、何かの必然があったのかと考える。

あの時ヴィオラかチェロかと言われてヴィオラを選んだ理由は、前記のベト7スコアの天啓が一つ。もう一つ、チェロは大きくて持ち運びが大変そうだ、と思ったこともある。
今から思うと何かこれという根拠があった訳でもない、たよりない選び方だったようにも思える。

しかし、通算でかれこれ15年以上ヴィオラを弾いてきて、やはりオケにおけるヴィオラの役回りというのは、要するに自分の性格、キャラクターに合っているのだとつくづく思い、納得している。

例えば、「アイネクライネ」で、ヴァイオリンでメロディを弾くよりは、自分としては伴奏のキザミをやる方がいい。
性格的に、表に出る主役よりは裏方、ラインよりスタッフタイプなのだろう。

いや、それ以上に、演奏の楽しみ方という意味では、こういうことが言えないか。
ヴァイオリンでメロディを弾くのは楽しみが一つだけだが、伴奏のキザミを弾きながら、そのメロディを聴く方が2倍楽しめるような気がするのだ。
このことは、ヴィオラを始めて割合早い時期、在学中に自覚した。

だから、ヴァイオリンはもちろんだし、ヴィオラかチェロかという話も、チェロではいけなかったのだ。
結果としてそう思う。

ウィンナワルツのどの曲でも端から端まで続くキザミ、つい最近も弾いたドヴォルザークの「アメリカ」第2楽章のこれも延々と続く伴奏音型。
私はこれらが大好きである。これを退屈とかかったるいと思うようではヴィオラ弾きは務まらない。
こういう音楽こそ、ヴィオラ弾きの醍醐味だと思う。

性格的にそういうところがあったから、無意識の内に本能的にヴィオラを選んだのだろうと思う。
そして、ヴィオラを弾いている内に、自分の性格と楽器の結びつきが、何というのか、ますます堅固になっていったということなのだろう。
要するに、ヴィオラを弾いている今の自分に大きな必然と運命を感じている訳だ。




ともかく、弦楽器経験の全くない18歳の私は、よちよちとヴィオラを始めることになった。

(つけくわえると、入学式の天啓、ベト7を弾くチャンスは、在学中にはなかった。
実に24年後の1998年、今の浦安のオケで実現することになる。
この時の本番では、これまでのところ私のオケ人生で後にも先にも最大のポカをやってしまうのだが、そのことはまた書く機会があると思う)

   (後記)そう言いつつ、実際に書いたのは、5年半後の2011年5月20日になってのことでした。
       本番を前に、思い出したくないこと二つ
          http://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/62257275.html