naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

梯剛之の「鱒」演奏会

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  (画像上・中)演奏会のチラシ
  (画像下)プログラムの表紙



今日10日(土)は、午後から千葉駅近くのホールに演奏会を聴きに行ってきた。

梯剛之の「鱒」
  日 時 07年11月10日(土) 14:00開演
  会 場 千葉市文化交流プラザ音楽ホール(旧「ぱるるプラザ千葉」)
  曲 目 モーツァルト ディヴェルティメント 変ホ長調K563
        シューベルト ピアノ五重奏曲 イ長調 「鱒」

ヴィオラの恵谷真紀子さんの夫君が、私の大学オケ同期のフルート吹きという縁。
真紀子さんとは面識はない。会場0に着くとフルート吹きの彼が、受付に立っていた。

今年1月にも、真紀子さんが出演された演奏会、「アンサンブル・ウィーン・東京 ピアノ五重奏の夕べ」を聴きに行った。
  ※その時の過去記事
     http://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/45433003.html

座った席は、1階前から6列目のど真ん中。
室内楽を聴くには嬉しい席だ。真っ正面にヴィオラが座る。
譜面台に隠れて、真紀子さんの左手がよく見えないのが残念だった。

雨模様の今日の千葉、会場内はちょっと足下が冷え冷えとした。

さて、今回の演奏曲目、2曲とも、編成が一般的でないので、実演で演奏されることが少ないという共通点がある。貴重な機会となった。
また、聴いてみて、「やっぱりいい曲だなあ」と思ったのも共通点だった。

まず、K563のディヴェルティメント。
ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの三重奏は、弦楽四重奏、五重奏に比べると制約が多いことが、聴いていてよくわかり、面白い。
求心的な室内楽というよりは、ソリスト3人が集まったアンサンブル、という感じがする。
曲が進むにつれて、ヴァイオリンとヴィオラが組んだり、ヴィオラとチェロが組んだりという、2対1の組み合わせの移りかわりが楽しい。ふだんは裏方に徹するヴィオラも、この編成ではそうはいかず、時にセカンドヴァイオリン的な形でヴァイオリンとハモったり、チェロとからんだりする。
3人ともが、表に出たり裏に引っ込んだり、という音楽だ。

全6楽章だが、4楽章の変奏曲が終わって5楽章のメヌエットに入るところで、ヴァイオリンのザイフェルト氏が勘違い、6楽章のアレグロを弾き始めた。譜めくりの間違いだったのだろう。
もちろんプロなので、弾き始めてわかったのでなく、まさに弾こうというその直前に、他の二人が気配でそれを察知したようだ。ヴィオラが「メヌエット」と声をかけた。
珍しいアクシデントに、会場の空気がなごんだ。

月1回やっているご近所アンサンブルで、前に3楽章くらいまでは合わせたことがあった。メンバーが全員揃うまでのつなぎとしてやったのだった。
今日、全曲を聴いて、一度ちゃんと弾いてみたいなと思った。

休憩後は「鱒」。

この曲は、もう30年も前、大学オケの合宿時に、仲間の誰かが楽譜を持ってきており、遊びで合わせたことがある。
4楽章の変奏曲で、第2変奏だったか、ヴィオラがメロディを受け持つところがあるが、それが弾いていてとても気持ちがよかったのをよくおぼえている。

梯剛之という人の演奏は、実演、録音を通じて初めて聴く。
小柄な人だ。そして、上体をまっすぐ伸ばしてまったく動かさずにピアノを弾く。肩から先だけで弾いている感じだ。

上のチラシの写真でご覧いただけると思うが、大西雄二という人の弾くコントラバスが、面白い形をしていた。
真ん中のくびれ部分が、普通のヴァイオリン型でなく、ひょうたんみたいな形をしているのだ。
こういうのは初めて見た。

ピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスという編成のこの曲、前半の弦楽三重奏に比べると、制約がなくなるのがわかり、面白い。
K563では、基本的に2+1の組み合わせで動いていた音楽が、はるかに多彩になる。
室内楽には珍しいコントラバスが加わったことで、チェロが自由に動ける。
2楽章だったか、ヴィオラとチェロがハモりながらメロディを奏で、それをコントラバスが支えてヴァイオリンが装飾をつける、という部分がある。これなど、オーソドックスな弦楽四重奏ではなかなかないことだ。

しかし、こうして聴くと、コントラバスという楽器の音はほんとに地味だ。同じ低音楽器でも、チェロは音が立って迫ってくるが、コントラバスは終始くすんだ感じの音だ。
しかし、地味だがいい音で全体にとけこんでいた。

ピアノがちょっとうるさく感じられたが、それは、座った席のせいだろう。ピアノの蓋が全開だった影響もあるかもしれないが。

さかんな拍手にこたえてのアンコールは、梯さんの独奏で、シューベルト即興曲。作品90の4。

・・・これがしみた。

子供のピアノのおけいこでよくとりあげられるこの曲が、こんなに感動的な音楽だったなんて。

涙がこぼれた。

このメンバーでのこのプログラム、明日11日には、国立市一橋大学兼松講堂で、そして週明けの13日には津田ホールでも行われる。