(日曜月曜と出張だったので順序が前後します)
栃乃花は、左おっつけ一気の攻めで快勝。
基本に忠実なオーソドッックスな相撲。長かった低迷が嘘のような、見違えるような相撲をとっている。
プロ野球みたいに「カムバック賞」があればあげたいくらいだ。
土佐ノ海=十文字は疑問な判定。
土佐の右足は俵の上で残っているように見えた。体がない訳でも飛んでいる訳でもない。
むしろ十文字の落ちる方が早かったように思うが。
琴ノ若は春日王をあしらって5勝5敗の五分。
部屋の師匠の定年のため、今場所限りで引退して佐渡ケ嶽部屋を継ぐとのことだが、もったいない。
本人自身はまだとれる筈だ。
ヤクルトスワローズの古田敦也のようにプレイングマネージャーというのはできないのだろうか。
昔は二枚鑑札というのがあったと聞くが、今のルールでは無理なのか。
高見盛は旭鷲山に快勝。
相四つだから充分に組めるのは当然だが、今日は左上手が速かった。
もともと調子の波の大きい人だが、調子が上がってきた。
今場所は終盤に期待が持てる。
白露山は豪風の引きにあっけなく落ちた。
この一番を見て感じたのは、露鵬もそうだが、レスリング出身の外国人力士は、やろうとしていることが日本本来の相撲とちょっと違うのではないかということだ。
日本人力士の豪風がやろうとしている動きと、白露山のそれとがかみあわず、こういう展開になったように思う。
モンゴル人力士の相撲も、日本の相撲との違いを感じることが時たまあるが、この一番は特にそれを感じた。
私は外国人力士の参入に基本的に極度の反対意見は持っていないが、やはり新規参入の外国人力士には、日本の相撲の基本をしっかり教えるべきだと思う。
難しい問題ではあるが・・・。
その意味では、豊ノ島=駿傑の一番は、誠にオーソドックスな相撲で、こういう相撲を見られると嬉しくなる。
4勝5敗対2勝7敗の両者、好調同士とは言えない顔合わせだし、優勝争いにも何の関係もない。
しかし、そうであっても、本来あるべき相撲の形を見せてもらえると、非常に値打ちを感じる。
白鵬は普天王に楽勝。
ケガ人相手ということを割り引いても、今日の白鵬の攻めにはムダがなかった。
調子は上がってきているようだ。
土俵際の腰の落とし方がよかった。
仕切りの際の腰の構えもこの人は非常にいい。
問題は、それが立ち合いの威力につながらないところだ。
もうひと皮剥けてくれないものか。
琴欧州は玉乃島に惜敗と言えない負け方。
立ち合い相手充分の左四つになったのが、まずいけない。
琴欧州の本来の相撲は右四つか二本差し。
何故わざわざ右から張って左差しに行ったのか?
中日に岩木山相手に同様の立ち合いをして成功したことで味をしめたのかもしれないが、玉乃島は四つ相撲の力士でありしかも根が左四つ。これは無理というものだろう。
右から突き落とされかかった時に、一つ落ち着いて体勢を作るべきだったが、そのまま流れで攻めては投げを食うのも当然。
やはり精神面か。
大関昇進に関しては、優勝にからむのが難しくなりつつある中、10勝であっても内容次第と思っていたが、今日の相撲あたり見ていると、内容的には大きい減点材料になる。
今日の3敗で優勝に関してはほぼ絶望だから、残る大関昇進については、終盤5日で横綱大関を総なめにするくらいでないと、星数だけでは苦しい。
千代大海が本来の相撲を取り戻して勝ち越し。
今日の突きはよかった。
稀勢の里は、格上の大関に本来の相撲をとられては致し方ないが、相手の突きに合わせすぎたというか、まともに対応しすぎた。
途中で相手の突きを少しでもはずせれば、組むチャンスはあったと思うが。
この人に毎度感ずるのは、相撲が正直すぎることだ。
魁皇は苦手琴光喜に左を差し勝っての会心の勝利。
琴光喜側からすると、まったく何をやっているのかという相撲。
途中1敗が一人になった時点で、優勝争いの対抗馬として最後までくいついていけるか、心許ないものがあったが、やっぱりかという感じ。
立ち合いにつっかけて魁皇待ったとなった場面で嫌な予感はした。
毎度言うが、自分の立ち合いというものが定まらない。
今日にしても、前記の琴欧州同様、最低右は差し、理想は両差しの形になるのが琴光喜としての常道の筈だ。それをうかがう姿勢がまったく見えないまま、大関にいいようにされては、落胆の他はない。
結局、今のままでは、琴光喜を大関候補とは呼び難い。
コンスタントにあげられる星としてはせいぜい2ケタがいいところ。たまに調子に乗って12番13番勝つ力はあるが、安定した成績で大関に上がれるかというと、現状では無理だ。
個人的にはかなり期待した安馬の横綱挑戦。
似たタイプでもあり、何かやってくれそうな気がしたからだ。
しかし、仕切りを重ねるのを見ている内、安馬が差し勝つことは考えにくいし、スピードも横綱がおそらく数段上だろうし、と思えてきた。
案の定、相撲にならずにあしらわれてしまった。
最初に一瞬静止した時に、ここから何をやろうかと考えたのだろうが、挑戦者としては、止まったところで何でもやらないと崩せない。
横綱にその点の余裕があったのは当然とはいえ、余りにも力の差を見せつける相撲だった。
兄弟子負けというところだろう。花道での安馬の苦笑ぶりがそれを物語る。
いずれ近い内に恩返しをする機会があるのだろうか。
今よりもっともっとスピードを磨かないと難しいと痛感した一番であった。
これで横綱は年間80勝。とりあえず大台に乗せた、という感じだ。
記録更新の83勝は堅いだろう。いくつ伸ばせるか。
全勝優勝での85勝もそう困難ではなさそうな状況だが。