毎朝の通勤は、原則として同じ時刻の電車に乗るので、決まって会う人の顔を覚えることがある。
昨年4月から、会社が変わって、今の通勤ルートになってからも、何人かそういう人ができた。
1回目の乗り換え駅で、ホームから階段を下りて行くと、前方の階段から下りてくる、30代前半くらいのカップルがいる。
階段を下りて、改札へ向かう時、そのカップルは、私の少し前を歩いている。
女性の方の後ろ姿、髪型がブルゾンちえみのようなので、このカップルを覚えてからは、朝、見かけると、「あ、今日もブルゾン、いた」と心の中でつぶやくようになった。
改札を出ると、決まって、女性の方が、男性に手を伸ばす形で、手をつなぐのに気がついた。
歳の頃から見て、新婚さんなのかな、などと思って、微笑ましく眺める私。
彼らも私も、乗り換え駅が一緒だ。2人は乗り換え改札をくぐり、私も後に続く。
2人が仲良く向かうホームと、私が使うホームは別なので、そこでお別れだ。
社内結婚で、同じ会社に行くんだろうか。それとも別の会社なのかな。とにかく、今日も元気で仲よく過ごしてね、と心の中でつぶやきつつ、自分の電車に乗るのだった。
今年に入ってからだったか、ある朝、例によって私の前を歩く彼女のリュックに、マタニティマークがぶら下がっているのが、目に止まった。
そうか、新婚さんだもの(かどうかは勝手に推測しているだけだが)、おめでたかあ。
よかったねえ、と、ご本人たちのあずかり知らぬところで、祝意を送った。
その後、4月からの在宅勤務生活で、このカップルとは会うこともなかったのだが、今週から通常勤務になり、電車通勤が戻ってきた。
彼女がいない。
彼氏だけが、前方の階段を下りてくる。
そうか、彼女はもう産休に入ったのか。
もうしばらくは、仲良く手をつなぐ2人を見ることはないんだろうな、と思った。
ブルゾンさん(じゃないけど)、どうぞご無事に出産されますように。