半世紀近くクラシック音楽を聴いてきて、ピアノ・トリオという曲種にはほとんど縁がなかった。
これは偶然の結果ではない。
「3人の名手がぶつかり合うピアノ・トリオは、弦楽四重奏などのような室内楽としての醍醐味に欠ける」というような論評を何かで読み、敬遠してきたところがあるのだ。
いわば食わず嫌いだったわけだが、この正月、どうしたはずみかふと気が向いて、ベートーヴェンのピアノ・トリオを聴いてみよう、と思い立った。
いささか月並みなチョイスだが、ケンプ、シェリング、フルニエの全集をタワーレコードにネット注文した。ベートーヴェンのピアノ・トリオの音源を買うのは、LPレコード時代も含めて初めてだ。
(それにしても、このところ、音源購入はタワレコかHMVのネット通販ばかり。CDショップに足を運ばなくなってどれくらい経つだろう)
さっそく聴いてみて、食わず嫌いを悔いた。
ピアノがいる分、弦楽四重奏に比べると当然華やかな響きだが、別にヴィルトゥオジティのぶつかり合いという印象はない。これはこれでやはり室内楽、求心的な音楽だと感じた。
1番から順に全曲を聴いてみたが、いかにもベートーヴェンらしい音楽が揃っていて、聴きごたえがあった。併せて、愉しさもあると感じた。
そうか、こういう音楽の世界もあったのに、この歳になるまで知らずにきてしまったのか。
まだ遅くはない、これを機にピアノ・トリオをあれこれ聴いてみようと決めた。
さっそく、手持ちのシューベルトの室内楽集から、2曲のピアノ・トリオを聴いている。
あと、ピアノ・トリオの有名どころと言うと、メンデルスゾーン、シューマン、ブラームス、チャイコフスキー、ドヴォルザーク、フォーレ、ラヴェル・・・。
色々聴いてみよう。
思ってみれば、クラシックに限定してもまだまだ聴いたことがない音楽がたくさんある。
なじみのある曲を繰り返し聴くのもいいが、知らない曲を開拓していくのも大事だ。
残りの人生、いくらでもある未知の曲をまだまだ体験していこう。
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