10日(土)、狛江で行われた澤和樹ファミリーの演奏会を聴きに行った。
フライヤー。
会場のエプタザールには初めて行く。小田急線狛江駅北口から徒歩10分程度のところだ。
不案内な小田急線に乗ってうっかり寝てしまったのが悪く、本来は成城学園前で乗り換えるべきところ、新百合ヶ丘まで行ってしまい、折り返して狛江へ。
手元の地図を見ながら急いで歩いて会場に向かい、開演15分前に到着した。余裕をみておいてよかった。
演奏会場へは階段を下りて行く。
●エプタザールセレクトコンサート第48回 ~春うらら、澤ファミリーとともに~
日 時 2021年4月10日(土) 14:30開場 15:00開演
会 場 エプタザール
ヴァイオリン・ヴィオラ 澤 和樹
ピアノ 蓼沼 恵美子
ヴァイオリン 澤 亜樹
クラリネット 西川 智也
曲 目 モーツァルト ケーゲルシュタット・トリオ変ホ長調
ピアノ 蓼沼 恵美子
クラリネット 西川 智也
ヴィオラ 澤 和樹
プーランク ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
ヴァイオリン 澤 亜樹
ピアノ 蓼沼 恵美子
シューマン 幻想小曲集作品73
クラリネット 西川 智也
ピアノ 蓼沼 恵美子
日本のうた
*瀧 廉太郎 花
*岡野 貞一 故郷
山田 耕筰 からたちの花
越谷 達之助 初恋
*大中 寅二 椰子の実
*本居 長世 七つの子
ヴァイオリン 澤 和樹、澤 亜樹(*)
ピアノ 蓼沼 恵美子
ショスタコーヴィチ 2つのヴァイオリンとピアノのための5つの小品
ヴァイオリン 澤 和樹、澤 亜樹
ピアノ 蓼沼 恵美子
[アンコール] 菅野 よう子 花は咲く
ヴァイオリン 澤 亜樹
ヴィオラ 澤 和樹
クラリネット 西川 智也
ピアノ 蓼沼 恵美子
4つ折りのプログラムから。
2019年7月に、澤クヮルテットと蓼沼恵美子さんの演奏会、2020年10月に、澤クヮルテットの演奏会を、いずれも宇奈月温泉の黒部市宇奈月国際会館セレネで聴いた。
今回は弦楽四重奏でなく、澤和樹、蓼沼恵美子ご夫妻の娘さんである澤亜樹さん、その夫君である西川智也氏、澤ファミリーの演奏会である。
この演奏会の情報を得て、行きたいと思ったのは、ケーゲルシュタット・トリオが聴けるからだった。昨年1月、J:COM浦安音楽ホールで行われた、浦安オケの室内楽コンサートで、オケ仲間とこの曲の1楽章と3楽章を演奏したのだが、これまで聴いたことがない澤和樹氏のヴィオラで是非実演を聴いてみたいと思ったのだ。
全席自由。前から2列目、ほぼ中央くらいの席に座った。
そのケーゲルシュタットは、一番最初。
ピアノの前に譜面台が2つ置いてあるが、椅子はない。このモーツァルト以外も含めて、ピアノ以外はすべて立奏だった。
最初に主催者の方からのMC。澤和樹氏を呼び入れ、澤氏が前半の曲目について解説された後に演奏に移った。
舞台袖というものはないようで、演奏者は客席後方から入退場する。
澤氏のヴィオラの表情の豊かさに感じ入った。この曲はこういうふうに弾くものなんだ。こういうふうに弾かなければならないんだ。ポジションの移動も、こういうふうにするのか、と思いながら見た。昨年の自分の演奏を振り返りつつ聴いた。
モーツァルトがシュタットラーのために書いた曲としては、コンチェルトとクインテットが大変有名だが、このトリオもそれらに劣らぬ名曲だと改めて思った。クラリネットとヴィオラの親和性を活かした編成の妙も大きな魅力であり、もっと聴かれるべき曲だ。
冒頭から激しく厳しい音楽に驚いた。これまでの聴体験からは、プーランクの音楽には軽妙洒脱なイメージを持っていたのだが、全然違う。ただ、ずっと聴き進めていくと、そうした楽想の裏にはこれまで聴いてきたプーランクの音楽で感じてきた、しゃれた顔も見える気がした。
急緩急の3楽章構成だが、2楽章の中間あたりで、ジャズのブルースみたいになったところが印象的だった。
それから、全曲にわたって、ピツィカートが効果的に多用されているのも面白かった。
20分の休憩。
ホワイエの壁にはこれまでここで演奏したアーティストの写真が飾られている。
さだ(まさし)さんは、この日、4月10日が誕生日。69歳になられた。昨年リリースされたアルバム「存在理由」には、澤和樹氏が作曲された曲、ヴァイオリンを演奏された曲が収録されている。
ホワイエや別室では、ワインやペットボトルのお茶などが提供された。お茶をいただいた。
演奏会場に戻る。
ピアノはベーゼンドルファー。
休憩後は、また澤氏が登場して、後半の曲目の解説。
シューマンの幻想小曲集では、クラリネットの西川氏は、ケーゲルシュタットの時と同じ上手側に立った。その前のプーランクのソナタでは、ヴァイオリンは下手側だったのだが。
やっぱりシューマンの音楽には独特の魅力があると思った。澤氏が解説で、器楽による歌曲のようだと話されていたが、確かにそういうふうに感じた。
シューマンの音楽には、まだまだ未知のものがある。いずれ少し探索してみたい。
次の「日本のうた」のコーナーでは、昨年リリースされたアルバム「ヴァイオリンでうたう日本のこころ」にも収録されている6曲が演奏された。
こちらがそのアルバム。会場でも販売されていた。
「花」「故郷」は、下手に亜樹さん、上手に和樹氏が立っての二重奏(上の写真の形)。亜樹さんがファースト、和樹氏がセカンドという役回りの編曲だった。
その後、「からたちの花」「初恋」は、亜樹さんが一旦はけて和樹氏が下手側に移動してのソロ。
二重奏はアンサンブルだが、ソロとなるとまさに和樹氏の自在な「歌」となる。「からたちの花」には泣けた。
「椰子の実」「七つの子」は再び二重奏。
続くショスタコーヴィチは、2人が入れ替わって、和樹氏が下手、亜樹さんが上手。
和樹氏の解説で、原曲は劇音楽やバレエなので聴きやすいと話されていたが、確かにそうで、前半のプーランク同様、これまでにショスタコーヴィチの音楽に持っていたイメージを覆すような音楽だと思った。
3曲目の「エレジー」は、例えばチャイコフスキーの弦楽セレナーデのそれのような音楽かと思ったら全然違う、メヌエット調の音楽。最後の「ポルカ」はまさにヨハン・シュトラウスのような曲だった。
場内の拍手が止まぬ中、西川氏も加わって演奏者全員が登場。西川氏は楽譜を持っていた。
澤氏のMC。
何か全員でアンコールをと思ったが、なかなかこの編成の曲がない。孫が今2歳7ヶ月なので、いずれチェロを仕込めばだいぶ変わってくると思う(笑)。
東日本大震災から10年、また今がコロナ禍という中、を選んだ、ということで、「花は咲く」が演奏された。
演奏後、そのお孫さんも顔を見せた。ママのところに行きたがる前にお祖父ちゃんが寄って行ったら、嫌がるそぶりを見せて、客席の笑いを誘った。
ファミリーの暖かさが伝わってくる大変良い演奏会だった。何より構成、選曲がとてもよかったと思う。
またこういう演奏会があれば是非聴きたい。
一つ注文を言うなら、14:00開演でよかったのではないかな。