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カイルベルトの「リング」全曲盤に着手して思ったこと

先に買い求めたカイルベルトの「ニーベルングの指環」全曲盤を、昨3日(金)から聴き始めた。

 

まだ「ラインの黄金」の冒頭、アルベリヒとラインの乙女たちのやりとりのあたりを聴き始めただけだが、第一印象として、録音が良いのに驚いた。

 

1955年7月のバイロイトライブ、66年も前の録音だ(私が生まれたのが1955年7月)。

それなのに、最新録音のような鮮明な音が聴ける。

これまでに聴いてきた同年代のクラシック音楽のレコード(大方がまだモノーラル)を思い出すにつけても、信じられない音質である。

 

この録音はデッカが行ったと聞く。録音のよさには定評のあるデッカであれば、なるほどとも思うが、それにしてもすごい。

 

関連して思ったのは、デッカの録音スタッフを始めとする制作者たちのことである。

ライブ録音が難しいと言われるバイロイトの劇場で、1955年という時期にこれだけの録音を達成するためには、名うてのデッカの録音スタッフとしても、並大抵でない苦労があったのではないかと推測される。

 

ところが、この録音は長くお蔵入りする。

日本国内で発売されたのは2006年のことだ。

録音から実に51年、半世紀以上が経っている。

 

制作者としては、渾身の仕事をしたにも拘わらず、それが日の目を見ないことについてどう思っていたのだろうか。

 

ある本で読んだ話だが、同じデッカにいたジョン・カルショウ(ショルティの「リング」をプロデュース)が、このカイルベルトの録音を「抹殺」したとされる。

だとすれば、カイルベルト盤の制作者にとっては、誠に悔しいことだったのではないか。

 

2006年に全曲盤がリリースされた時の反響にはすごいものがあった。録音のよさもさることながら、往年のワーグナー歌手たちの全盛を伝える、演奏の価値には絶賛が集まった。

半世紀以上前の録音ながら、同年のレコード・アカデミー大賞も受賞している。

 

このことで制作者としては積年の溜飲が下がった面もあろうが、何分にも半世紀が経過している。既に他界した人も少なくなかったのではないか。

 

ほんの冒頭部分を聴いただけのカイルベルトの「リング」。その録音のよさに、音楽そのものよりもまず、「仕事」としての録音スタッフの苦労と、当時その「価値ある仕事の成果物」が日の目を見なかったことの心情に思いが及んだのだった。

 

とにかく、続きを「神々の黄昏」まで聴いていきたい。

 

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