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七月場所中日~照ノ富士=若元春戦のまわし待った

七月場所中日、結びの一番、照ノ富士=若元春戦。

 

熱戦の途中、一瞬動きが止まりかけたところで、若元春のまわしがほどけたのを見た式守伊之助が、まわし待ったをしようとした瞬間、若元春が東土俵に寄り立てて力を抜いた横綱を寄り切った。

 

照ノ富士は不服そうな表情を浮かべ、審判が土俵に上がっての協議となった。

 

協議の結果、まわし待ったの時点から勝負再開となったが、止まった状態でのまわし待ったでなかったことから、組み直しに手間どった。佐渡ケ嶽審判長がビデオ室とやりとりして、それらしき形を作り、勝負再開後は横綱があっさりけりをつけた。

 

長年の相撲観戦歴でも観たことがない事態だったが、さて、この一番、誰が悪かったのか。

 

難しいタイミングでまわし待ったに行った行司か。

まわし待ったがかかったのに従わず、勝負に出た若元春か。

あるいはまわし待ったで力を抜いてしまった照ノ富士が悪いのか。

 

色々考えたが、やはり行司だろうか。

本来まわし待ったは、両力士の動きが止まっている状態でなされるものだと思う。動いている最中であれば、まわしがほどけかかっていても、待ったはかけられず勝負は続行されるのが普通だ。

今回の一番、途中で動きが止まった場面が長く、2分を超えたが、問題の場面は両力士がまた動いている最中で、一瞬動きが止まったように見えたが、そのまままた膠着状態になるとは予想できないタイミングだった。

そこに割って入った行司の行動が正しかったかどうか。

結局そこになるのではないかと思う。

 

行司が待ったをかければ、両力士は従わなければならず、力を抜いた照ノ富士は責められないと言える。

若元春が勝負に出たのは、行司の待ったに気づかずにだったのか、知っていて無視したのか、これにより評価は分かれる。

 

この点について、一緒に観ていた妻が指摘したことで、なるほどと思ったのが、「行司が若元春の斜め後ろから待ったをかけにいったこと」。

通常のまわし待ったは、行司が両力士の中央で、両力士の背中を抱くようにして勝負を止める。止まった状態であれば、それができる。

ただ、今回は半ば動いている状態の一瞬の停止に割って入ったので、両力士の中心に正対する時間がなく、若元春側から止めにいった形だ。

そのため、照ノ富士には止めにくる行司が見えたが、若元春にしてみれば後ろから声がかかっただけで行司は見えないので、不公平な状態ではなかったか、というのが妻の指摘である。

 

つまり、止めるタイミングとして妥当でなかったこと、そしてそのために、本来の体勢で止められなかったこと。

この2点からは、やはり行司のミスという評価になるのではないかという気がする。

 

その場合の別の観点。

この一番の審判協議は、まわし待ったは成立した、という前提で勝負再開と決定した。

照ノ富士も力を抜いたのだからそういうことで良いのだろう。

ただ、あそこで止めるべきではなかった、としたらどうすべきなのだろうか。

最初から取り直させるのが妥当なのか。まわし待ったがなかったことにはできないから。

しかしそれは両力士には酷な話であり、採れる方法ではないだろう。

つまり取り返しがつかない話なのだ。

その意味からも、無理を承知でまわし待った時点での組み直し、勝負再開になった、ということか。

 

理事長始め、協会幹部の評価はどうなのか。明日の朝刊で確認できるだろう。

 

最後にこの相撲自体について。

若元春の相撲はめざましい内容で、横綱初挑戦でここまでやるとはまったく予想しなかった。急速に力をつけてきた力士だが、今場所の今後が楽しみだ。

一方の横綱は、組み止めたにもかかわらず、そこから勝負をつける形を作りきれなかった点、中日にして疲労が出てきているのではないかという気がした。

勝負の途中、互いに低い体勢で、背中照ノ富士、顔若元春という格好の時に、照ノ富士が膝を伸ばして棒立ちのような姿勢になった場面があった。

膝を曲げての前傾姿勢が持ちこたえられなかったのではないか、と見えた。相当膝に負担がかかっていたのだろう。たまらず姿勢を変えた感じだった。

そのへんの影響がどうか、明日以降の横綱の相撲を注目したい。