7日(木)のジャニーズ事務所の記者会見を受けて、アサヒビール、キリンビールなどのCMスポンサーが契約の解除等の対応を打ち出した。
難しい要素を含む問題だと思う。
企業として、人権侵害を行っている取引先との取引が問われる時代である。
(N社(京橋)在職時、親会社から「ESG調達」の導入を検討するようにとの話があった。ESG調達の何たるかもよく知らなかったが、例えば児童労働をさせているような国の会社から何か買ったりしてはいけない、という内容だった。「紛争鉱物」などと言う言葉も初耳だった)
紛争鉱物:当該鉱物の採掘・取引などから得られる利益が武装勢力や国軍
などの紛争主体に利用され、紛争の資金源となっている鉱物
法違反や人権侵害を行っている会社と取引をしていれば、国内外の批判にさらされる現下の情勢にあって、アサヒ、キリンといった大企業がジャニーズ事務所とのCM契約を見直す判断を下すのは、それ自体当然とも言える。
しかし、この問題が難しいと思うのは、そのCMに出演しているジャニーズタレントたち本人が何かの不祥事を起こしたわけではない点だ。
CMに出ている彼らが、今回の問題の根幹である故ジャニー喜多川氏の性加害とどう関わっていたかは不明だが、もしかしたら中には被害者もいるかもしれない。
会社同士の取引という点では当然のことと理解できても、個々のタレントをCMから外すことがどうなのだろうか。
(会見で藤島ジュリー景子氏が涙ながらに語っていた、個々のタレントはそれぞれに努力を重ねて今の地位を築いた、という一面はおそらく正しいと思う)
もう1つ関連して言えば、この問題が今に始まったことではない点だ。
何十年も前から話があって、それに沈黙してきたメディアも、ある業界構造の中で問題に加担してきたのではないか、との指摘がある。
このことは、ジャニーズタレントをCMに起用してきた企業についても言えると思う。
人権侵害をする取引先との取引が問われるようになったのは、昨日今日ではない。今回の会見をきっかけとした契約見直しに、多少の違和感がある。
ともかく、何か根深いものがあるんだなあ、と感じるが、つまるところ、何かの損得勘定で物事の判断が下され、構造化していくのは、政治でもたぶんそうだし、民間企業でもそれぞれの業界に大小存在すると思う。
(私が勤務していた建設業界にもその世界としてのあれこれはあった。辞めた今はふれないが、新聞を大きく賑わせた事件も実際起こしている)
芸能事務所、という世界がどんなふうなのか、まったくわからないが、今回の事件を機に、コンプライアンスや人権といった、今の時代、グローバルに求められる経営姿勢や価値観をとりいれ浸透させていってほしい、と会見を観ながら思った。
(今年になっての一連の動きは、イギリスのBBCの報道が大きな契機だったと聞く。海外のメディアが何を言っているんだ、という受け止め方が、当初ジャニーズ事務所側になかったか? という気がするが、そのことはメディアを含む日本全体がそうだったのではないかと思うし、かく言う私自身もそうだったと回顧する)