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千葉県少年少女オーケストラ第28回定期演奏会

浦安ユースオーケストラの定期演奏会本番が終わった翌日、3月31日(日)、東京芸術劇場で行われた千葉県少年少女オーケストラの定期演奏会を聴きに行った。

音楽監督の佐治薫子先生から招待券をお送りいただいていたが、特に今回は、指揮が今年いっぱいで引退される井上道義さんであることから、井上さんと少年少女オケ最後の演奏を是非聴きたいと思い、公開リハーサルとこの本番の両方に出かけた。

浦安シティオーケストラの練習日だが、休んだ。

 

この東京芸術劇場の大きなホールで完売とは、すごいな、少年少女オケ。

 

●千葉県少年少女オーケストラ第28回定期演奏会

日 時 2024年3月31日(日) 13:00開場 14:00開演

会 場 東京芸術劇場コンサートホール

指 揮 井上道義

管弦楽 千葉県少年少女オーケストラ

曲 目 ヨゼフ・シュトラウス ワルツ「天体の音楽」

    J.S.バッハ(齋藤秀雄編曲) シャコンヌ

    ベートーヴェン 交響曲第5番ハ短調「運命」

    [アンコール] J.シュトラウスⅡ ポルカ「雷鳴と電光」

 

少年少女オケの「運命」を聴くのは2回目だ。前回は2021年3月の千葉県文化会館での定期演奏会。指揮は下野竜也さんだった。

 

プログラム冊子から。

 

井上さんは、1999年の第3回定期演奏会から少年少女オケを指揮して来られたそうだ。

そのため、プログラム冊子の末尾に「井上道義先生との思い出」と題する特集ページが設けられている。

これはその中の1ページ。サントリーホールで行われた2019年の東京公演が載っているが、私が初めて少年少女オケを聴いたのがこの演奏会だった。

 

井上さん指揮する少年少女オケの定期演奏会を聴くのは、それ以来2回目にして最後となった。

 

招待券は2枚いただいていたが、残念ながら妻が同行できず、1人で出かけた。

私の席は1階I列19番。ステージに向かってほぼ中央の席だった。1階の前の方は好まないのだが、一応管楽器も含めてオケ全体を見ることができる高さの席でよかった。

開演前、ふと見たら客席の通路に佐治先生がおられ、どなたかと挨拶を交わしておられる。席を立ってそこまで行くにはちょっと距離があったので見合わせた。

 

開演2分前に楽員が入場し始めると、客席から大きな拍手。

チューニングが済んで14:00ちょうど、井上さんが下手から登場した。

指揮台はない。譜面台にスコアは置いてあったが、暗譜で振られていたようだ。

 

1曲目の「天体の音楽」は、とても美しい演奏だった。

10日ほど前の公開リハーサルを思い起こすと、あの時は安全運転だったんだなあ、と感じた。テンポ、表情、あの時とはずっと踏み込んだ演奏になっていた。

あの後、どれだけのリハーサルがあったのかわからないが、ここまでレベルアップするとは、大したものだ。

 

一旦下手に下がった井上さんがマイクを持って現れ、佐治先生を呼び込んでのトークとなった。

(後日佐治先生にうかがったところでは、このタイミングで話をする予定はなかったのだそうだ。演奏会の最後にと思っていたら、突然呼ばれたとおっしゃっていた)

井上さん「僕は77歳になったんですが、佐治先生はおいくつに?」

佐治先生「88歳です」

井上さん「先生がこういうことを始めたのは、いくつの時ですか」

佐治先生「22歳の時でした。教頭の命令で、30人くらいで始めました」

井上さん「88歳の先生、あと10年はできないですよねえ」

佐治先生「そうですね」

井上さん「もうやめますか?(笑)。僕は今年で指揮者をやめるんですが、誰か継いでくれますかね」

そんなトークだった。

その後、井上さんから、「次の「シャコンヌ」は、僕がやろうと言いました」、とのお話があった。佐治先生は「バッハ先生」と呼ばれてバッハをたくさんやってきたこともあり、井上さんの恩師である齋藤秀雄氏が編曲したこの曲を、ノスタルジーをもって演奏したい、とのことだった。

「僕はこのオケを子供相手だと思って振りません。このオケは今日のためにたくさん練習してきました。全部出れば100回。齋藤先生もそうでした。佐治先生のこのオケもそうしてきました」。

 

シャコンヌ」。

公開リハーサルの時も見事な演奏だったが、本番の演奏を聴いていて強く思ったのは、「とにかくこのオケは「音を出すこと」を徹底してやらされているんだな」ということだった。

全員が集中して自信を持って音を出している。そのことを、この「シャコンヌ」では強く感じた。

オケの本来としてはそこが出発点なのだと思うが、アマチュアで、しかもユースオケで、そこに到達できているのは本当にすばらしいことだ。

 

休憩20分。

ステージを見ると、公開リハーサルの時の井上さんの提案通り、バスドラムは斜めになっていた。

 

「運命」。

第1楽章を聴いていて、公開リハーサルの時よりもアンサンブルはしっかりまとまった印象を持ったが、それでもまだ望むところはあるように感じた。

第4楽章はリピートなし。

上に、「音を出すこと」について書いたが、「運命」では、音の響かせ方、音の切り方について感心させられた。日頃自分のオケの練習でも、指導者から特に音の切り方については注意されることが多いが、少年少女オケはそこが見事だ。

「運命」は、やはり難しい曲なのだ、と改めて思った。立派な演奏ではあったが、前半の2曲に比べると、まだ仕上げの余地があると感じられた。このオケにしてそうなのか、と思った。

 

アンコール曲は、「雷鳴と電光」。

コロナ前の恒例が戻ってきた。それまでの曲に乗っていなかった小さい子供たちが上手下手から出てきてステージ前面に立って演奏に加わった。暗譜で演奏するだけでなく、曲の途中からは踊るようなアクションも見せて大いに客席を沸かせた。客席からは手拍子も出た。

曲の最後では、チェロも含めてオケ全員が立ち上がる演出で、公開リハーサルの段階から練習していたが、1階席に座って見ていると、前列の追加舞台の子供たちに隠れてよく見えなかった。

それにしても、この「雷鳴と電光」は、実に完璧な演奏だった。38年前、カルロス・クライバーバイエルン州立歌劇場管弦楽団との来日公演で、アンコールに演奏した時の興奮を思い出した。

 

カーテンコールでは、佐治先生が再び登場。話をすることはもうなかったが、最後は井上さんが肩を抱くようにして一緒に舞台袖に下がって行った。

 

井上さんの指揮で演奏する少年少女オケはこれが最後。

井上さん、佐治先生の感慨はいかばかりだろうか。

 

 

※この演奏会の模様は、チバテレで放映される。

    本放送 4月14日(日) 19:00~19:55

    再放送 4月20日(土) 18:05~19:00

 

3月31日の日付で、井上道義さんの公式サイトに、この演奏会のことが載った。

井上さんご本人の文章だが、佐治先生、少年少女オケに対する愛情があふれ、このオケのすごさを伝えてくれる内容である。

貼っておく。

www.michiyoshi-inoue.com

 

池袋駅に向かう通路の壁でこんなポスターを見かけた。

 

おっ、今、浦安シティオーケストラで練習している「悲愴」か。聴きに来るか、と思ってよく見たら、5月25日(土)は浦安のGP、26日(日)は本番なのだった。

つまり、5月26日の14:00、東京芸術劇場では読売日本交響楽団が、浦安市文化会館では我が浦安シティオーケストラが、「悲愴」を競演するわけだ。しかも中プロがヴァイオリン・コンチェルトである点も共通。

相手にとって不足はないな(笑)。