6月30日(日)、オーケストラ・モデルネ・東京の本番が終了した。
29日(土)に本番会場である埼玉会館で行われた前日練習が夜だったので、南浦和のホテルに1泊。朝、チェックアウトして最終リハーサルに向かった。
10時半頃から最終リハーサル開始。
続いてマーラーの9番。
(ちなみに、本番では休憩を入れない。「魔笛」の後は管打楽器の奏者入れ替えのみで、すぐメインのマーラーを演奏した)
前日に途中で終わった4楽章の続きをまず練習した。88小節目から始めて145小節目まで。
その後、頭に戻って、1楽章から4楽章まで順に練習した。
今回のヴィオラは7人。ヴァイオリンが総勢26人、チェロ、コントラバスが各8人という中で少ない人数での本番となった。
(当初の時期から、人の集まりが悪いとの話があったので、日頃浦安シティオーケストラでお世話になっているエキストラの方何人かに声をかけてみた(本番が日曜日なので、浦安の団員は誘えない)が、人員の増強には貢献できなかった)
3プルトの裏に座った。
初期に、表裏の希望をとられたので、裏を希望した。
弾いたことのない曲なので、特に明確な理由があったわけではないが、1楽章の始めの部分については、裏のピツィカートの方を弾(はじ)きたい、と思ったのだ。
1楽章、2楽章まで終わったところで休憩。
これまでこのシンフォニーに取り組んできて、全曲すべて難しいものの、やはり特に大変なのは前半の2つの楽章だと感じてきた。
大変な音符ばかりで本当に苦心してきたのだが、その一部をちょっと挙げてみる。
1楽章。
2楽章。マーラーがつけた、ひどく弾きづらいボウイングや、アルコとピツィカートのめまぐるしい交代などには往生した。
しかし、これらの楽章についても、本番当日を迎え、少しは楽譜が身体に入ったかな、という感覚がわずかながら出てきた。
練習過程で、指揮の篠﨑靖男先生が、楽譜ばかり見ていてはだめ、間違えてもいいから、自分の中から音楽を表現するようにと、何度もおっしゃっていた。個人的にはとてもそんな境地には達することができないだろうと思っていたのだが、ほんの少しではあっても、そんな感覚で弾ける箇所が出てきたように感じた。
(この程度で達成感が得られたと言ってはいけないわけで、本来乗るからにはもっと上に行かなければならない。ただ、個人的な練習経過としては少々の前進を自覚できたのは嬉しかった)
大変な前半2つの楽章が終わって、ほっとできるかというと、もちろんそうはいかない。
3楽章のめまぐるしさも引き続き気が抜けない。
そして4楽章こそ没入しなければならない高くて深い楽譜だ。
予定を10分ほど超過して、12:40頃リハーサルが終了した。
開場は13:30だからあまり時間がない。ホテルを出る時に本番衣装を着てきたので、着替えは不要だ。昼食は、来る時にコンビニで買ってきたものを楽屋で急ぎ食べた。
開場後は、各自ステージで自由に音出し可、のアメリカンスタイルなので、早々に出て、マーラーの4楽章をさらった。16日(日)の田渕彰先生の弦分奏で、この楽章が求める音を出せるポジションを考えるように言われたので、それを実践する箇所を確認した。
だんだんステージ上の楽員も増えてきた。
最後に、1曲目の「魔笛」序曲をさらった。
●オーケストラ・モデルネ・東京第5回演奏会
日 時 2024年6月30日(日) 13:30開場 14:00開演
会 場 埼玉会館大ホール
指 揮 篠﨑靖男
管弦楽 オーケストラ・モデルネ・東京
フライヤー。
プログラム冊子から。
本番は、集中を切らさずに弾くように努めたが、おびただしい音符をちゃんと見きれぬまま過ぎ去って行った箇所も多かった。臨時記号の印刷が小さいので、鉛筆で大きく書くようにしたのだが、それすら見落とさず見間違えずに弾くのは難しかった。
装飾音やトリルなども含め、楽譜が要求する音を出せたかどうかで言うと、全体の7割には達しなかったと思う。
オケ全体の出来まで言う余裕もなかったが、3楽章については、前日練習で篠﨑先生が強くおっしゃっていた、この楽章はあくまでインテンポで、という指示はオケとして守れなかったように思う。
4楽章の最後。弦楽器にはしびれる場面。特にヴィオラは息が詰まる思いだった。
チャイコフスキーの「悲愴」だと、ヴィオラは最後までは弾かず休みになるのだが、マーラーは最後の最後に動く音をヴィオラに与えた。
団内で共有された本番の写真を2枚借用して載せておく。
終演後、楽器や荷物を楽屋に仮置きして、ホワイエへ向かった。
初めてのホールなので、どう行ったらホワイエに出られるのかがわからない。一度は楽屋口に出てしまい、迷いながら何とかたどりついた。
日頃、浦安シティオーケストラの演奏会に来て下さる方々に、今回の演奏会もご案内したのだが、ホワイエには5人の方が待っておられて、ご挨拶することができた。
さて、大変なマーラーの9番が終わった。
過去、難しい曲は色々やってきたが、これが一番だったかもしれない。
マーラーは、古い話になるが2002年に浦安で1番、昨2023年にマウントあさまのワークショップで5番を弾いたのが過去の経験のすべてだ。
この9番は、学生時代から聴いてきているが、マーラーのシンフォニーの中で、格別好きな方ではなかった。近年、曲の良さが少しわかってきた気はするのだが、それでも依然として気軽に聴ける曲ではない。聴くのがつらいと感じる面もある。
そんな曲を弾くことになり、つまり、大好きな曲だからがんばろう、というモチベーションが必ずしもない中、実際に楽譜を見てさらい始めて、これはえらいことだ、と今日まで過ごしてきたわけだ。
しかし、最終的には、この曲を経験できてよかった、と強く思った。
昨年のマウントあさまでの5番は、手も足も出ないまま終わったという感じだった。2泊3日のワークショップで到達できたものは何もなかった。ただただ曲にやられた、と思った。
あれに比べると、1ヶ月の短期仕上げ、また5回の練習の内2回を欠席したとは言え、家での個人練習も含め、つかめたものはずっと多かったと実感している。
本当にちゃんと弾けないところが多かった。指揮者やこのオケに本来求められるものには大きく及ばなかった。
しかし一方で、マーラーの9番を弾く機会が得られてよかった、参加させてもらってよかった、と思っている。個人としては心から感謝している。
(実際に演奏したことで、聴いているだけだった頃に比べて、曲に対する理解が格段に深まった。やはり、このシンフォニーの魅力は1楽章、そして4楽章だと思った。加えて、性格的な中間楽章2つを配したことでのバランスの魅力。やはりマーラーの傑作に数えられる)
次回、来年の6月は、水谷晃氏を迎えてのブラームスのコンチェルトと、ショスタコーヴィチの6番と決まっており、もう1曲加わるそうだ。
来年参加するかどうかは、練習日程が出た段階で、慎重に考えたいと思う。やはり2回の欠席は多すぎる。個人練習ももっと早く着手するようでありたい。今回は、3月、4月、5月と、本番やワークショップなどが続いたため、それができなかった。
もちろん、未知の曲であるショスタコーヴィチは、曲の事前勉強をしなければ。
でも、できれば参加したいな。
篠﨑先生は、若いメンバーとベテランの混合が、オーケストラ・モデルネ・東京の持ち味だと常々おっしゃっている。私も今回、このマーラーにおいて、周囲の若い方々に刺激をいただいた。
また来年、そういう環境に身を置ければと思う。
※過去の関連記事
あなたの好きなマーラーの交響曲は?
https://naokichivla.hatenablog.com/entry/61938649
マーラーの9番に惹かれる昨今
https://naokichivla.hatenablog.com/entry/62543091
※本番往復に聴いた音楽
メシアン 世の終わりのための四重奏曲
武満 徹 カトレーン、鳥は星形の庭に降りる
小澤征爾=ボストン響
武満 徹 ノヴェンバー・ステップス、アステリズム、グリーン、
弦楽のためのレクイエム