1日(金)、東京文化会館で行われたクァルテット・エクセルシオの東京定期演奏会を妻と聴きに行った。
東京文化会館。さすがに11月ともなると18時過ぎでもう暗い。
今さらだが、この建物は清水建設の施工なんだね。
昭和36年。築63年か。
ホワイエには、最近の活動報告の写真が飾られている。
私も聴きに行った演奏会の写真。
日 時 2024年11月1日(金) 18:15開場 19:00開演
会 場 東京文化会館小ホール
酒井省吾 String Quartet For Eku (世界初演)
ベートーヴェン 弦楽四重奏曲第13番変ロ長調「大フーガ付き」
6月の東京定期演奏会と同様、モーツァルトのハイドン・セット、結成30周年記念委嘱新作、ベートーヴェンの後期作品、という構成である。
(6月は、「狩」→権代敦彦氏の新作→14番だった。6月の権代氏の作品は、東京定期演奏会の1週間前に札幌定期演奏会が行われていて、それが世界初演だったが、今回の酒井氏の作品はこの東京定期演奏会が正真正銘世界初演になるようだ)
我々の席は、A列25番、26番。6月同様、春のうらやすシンフォニエッタや室内楽セミナーでご一緒したHさんとたまたま隣同士の席になった。
プログラム冊子から。
2024/2025シーズンの主催公演の共通プログラム冊子だが、今回からシーズン2冊目になった。この演奏会から、来年1月、2月、3月の演奏会までの内容が掲載されている。
はさみこまれていた「エク通信」。メンバーの寄稿だが、吉田(有紀子)先生、大部分が酒の話(笑)。
18:30から、ステージではプレトーク。今回世界初演となる委嘱新作を作曲した酒井省吾氏と、北星学園大学経済学部教授で認定NPO法人エク・プロジェクトの理事長でもある勝村務氏の対談だった。
酒井氏はゲーム音楽の分野で著名な方だそうだが、ゲームに疎い私は存じ上げない。
1993年からクラシックの作曲にも進出されていて、今回、クァルテット・エクセルシオが結成30周年を迎えるにあたって新作が委嘱された。
酒井氏の話では、アウトリーチ活動で小学生に聴かせるゲーム音楽の編曲などかと思っていたら、定期演奏会で演奏される曲を、とのことで驚いたそうだ。
クァルテット・エクセルシオの活動の3本の柱(ベートーヴェン、現代曲、アウトリーチ)の1つである「現代曲」に拘らず、調性音楽として書かれた。
当初、「エクセルシオ」からEsDurのイメージを持ったが、初演される演奏会が、モーツァルトのEsDurで始まり、後にBDurのベートーヴェンが控えることを知り、これはまずいぞとシャープ系に路線変更。
ヴィオラの吉田先生の音がとてもふくよかなので、メロディを多く書いたとのこと。
3月に行われた、クァルテット・エクセルシオ結成30周年記者会見に同席したのが、メンバーと初めて話した機会で、その時点で2楽章まで書けていたが、この会見で話したのを機にイメージがふくらんで、3楽章は1日半で書き上げたそうだ。反面その後の4楽章には時間がかかって苦しんだとおっしゃっていたが、全曲は半年で完成。6月の東京定期演奏会の時点ではできあがっていたとのこと。
リハーサルでは、メンバーからどのように弾いたら良いかと聞かれ、言葉で説明するのが難しいので指揮をしたらとてもうまくいき、楽しい時間が過ごせたと言われていた。
この「String Quartet For Eku」は、緩急緩急の4楽章構成。
第1楽章 ト長調 4/4 Andannte
第2楽章 ハ長調 4/4 Allegro
第3楽章 ハ短調 3/4 Adagio
第4楽章 ト長調 6/8 Vivace
酒井氏はモーツァルトが好きなのだそうだが、どうしても1楽章にアレグロの音楽が書けず、緩急緩急になったのだそうだ。
ホワイエでスコアとパート譜セットが販売されており、楽譜は有料だが、その楽譜で演奏するに際しては無料で良いとのことだった。
15分ほどでプレトーク終了。ステージが弦楽四重奏用にセットされ、開演を待った。
開演。
最初はモーツァルトの16番。
ハイドン・セットを、これまでレコードや実演で聴いたり、遊びで演奏したりしてきた中では、6曲中この16番が個人的には一番なじみが薄い。
ああ、こういう曲だったな、と思いながら聴いた。
2楽章の深沈とした美しさは、先週市ヶ谷で聴いたベートーヴェンの12番の2楽章にずいぶん近い世界だと思った。
3楽章のメヌエットは、フラット系で難しそうだが、自分でも弾いてみたいなと思った。
結成30周年の年に、クァルテット・エクセルシオはハイドン・セットの全曲をJ:COM浦安音楽ホールでレコーディングした。その発売記念コンサートが来年1月と2月に行われる。そのセット券は購入したので、この16番はもう一度その時に聴ける。
続いて、酒井省吾氏の委嘱新作。
4つの楽章、どれも大変聴きやすい音楽だった。
プレトークで言われていた通り、ヴィオラに活躍の場面が多く与えられていた。
2楽章のアレグロは、弾いてみたいという気持ちにさせられた。楽譜を買おうか迷ったが、買わなかった。
1楽章、3楽章のそれぞれ最後の和音は、調の主和音に第7音がつけ加えられたものだったが、個人的には少々安直というか陳腐に感じた。調性感のある音楽とは言え、何か他の和音がなかったかな、と思った。
6月、11月の委嘱新作、個人的には権代敦彦氏の作品の方が印象に残った。
20分間の休憩。
後半はベートーヴェンの13番。プログラム冊子を見たら、「大フーガ付き」と書かれている。フライヤーにはそういう表示がなかったので、てっきり差し替えられたアレグロのフィナーレでの演奏かと思っていたのだが、違った。
しかも、プログラム冊子にあるメンバーの座談会を読んだら、クァルテット・エクセルシオとしてこの形で演奏したことは、過去になかったのだそうだ。
私がこの13番をクァルテット・エクセルシオで聴くのは3回目だ。
1回目は、2016年にサントリーホールのブルーローズで、「チェンバー・ミュージック・ガーデン」の一環としてベートーヴェンの全曲演奏が行われた時。私がクァルテット・エクセルシオを聴いたのはこれが初めてだった。北見(春菜)先生が加入される前、旧メンバーの時だ。
この時は、5番、10番が演奏されて休憩。その後、13番(アレグロフィナーレ)、大フーガが演奏された。
2回目は、2021年にJ:COM浦安音楽ホールで行われたベートーヴェン全曲演奏の時。
この時は、7番、大フーガと演奏されて休憩。後半に13番(アレグロフィナーレ)が演奏された。
いずれも、アレグロフィナーレを6楽章に置く形で13番が演奏され、その後か前に大フーガが配置された。大フーガを6楽章に配しての演奏(アレグロフィナーレが弾かれない)はこれが初めて。フライヤーには表示がなかったわけだが、いつ決まったんだろう。
ベートーヴェンの弦楽四重奏では、13、14、15番が甲乙丙つけ難いベスト3と昔から思っているのだが、その一角、聴きごたえのある13番を堪能した。
カヴァティーナの後にアレグロフィナーレが来るのと、大フーガが来るのとでは、やはり大きく違う。
私としては、やはり今回の形がしっくり来る気がしてならない。
このベートーヴェンでは、チェロの大友(肇)先生が、普段よりヴィオラの吉田先生に視線を送って弾いておられたのが印象的だった。
21:12終演。
ホワイエで先生方が出てこられるのを待ち、ご挨拶してから会場を後にした。
※こちらの写真は、クァルテット・エクセルシオのFacebookページからお借りしました。
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クァルテット・エクセルシオ ベートーヴェン・サイクルⅡ
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