naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

5月場所10日目

昨日全勝がストップした同士、普天王出島は、出島が腰の重い普天王をいっぺんに持っていくのは難しいのではないかと思って見たが、立ち上がって、やはり出島は押しきれない。
普天王は、出島の当たりを左を差して止め、下手をとった。右上手はとれない形だったが、組み止めれば後はじっくり構えても大丈夫だ。
出島はちょっと攻め手がない。最後ははたいて呼び込んでしまった。

好調同士、北勝力朝赤龍は、まず北勝力が踏み込みにまさり、もろ手突きの立ち合いから押して出たが、その後はむしろ朝赤龍の方が前に攻め込んだ。
攻めながら、いいタイミングで左前まわしに手がかかった。ここが勝敗を分けたポイント。
青房下に出て決めたが、朝赤龍の攻めの厳しさが光った。やはり実力者だ。

寶智山高見盛は、寶智山が立ち合い踏み込んだものの、高見盛は右を差して残した。
右が入れば力が出る。寶智山の寄りを、土俵際で体を入れかえたのは、いつも通りのうまさ。
寄られた東土俵に、逆に寄ったのだが、上手を離して相手の胸を押すのがちょっと早かったため、寶智山がうっちゃり。
軍配は高見盛だったが、高見盛の左足が蛇の目を掃いた。
寶智山の右かかとがどうかというところだったが、出ておらず、差し違えとなった。

龍皇は、若の里ののどと胸を突いて、よく押し込んだが、かわされた。
若の里は、勝つには勝ったが、苦しまぎれの引きが決まった相撲で、いいところはなかった。

身長の低い里山が、立ち合い低く当たると、時津海は、思わずはたいたが、里山は落ちず、うまく相手の腰に抱きついて食いついた。

鶴竜が、今日はいい相撲。立ち合いから栃乃洋充分の左四つになり、鶴竜は一旦上手をとったが、すぐ右をまきかえてもろ差しになったのがよく、東土俵に寄った。
左四つに渡り合ったらさすがに栃乃洋が力を出しただろうが、二本差したことと、前に出たことが鶴竜の勝因。

豪風が、黒海の出足に下がりながら、鮮やかな首投げ。
相撲から話は離れるが、黒海は、昨日今日と髭をきれいに剃ってきた。
以前から、黒海の濃い髭を見るにつけ、チャイコフスキームソルグスキーを思い出し、やはりロシア人は、髭が濃いんだなと、半ば仕方がないものと思っていたが、やればできるじゃないか。

豊馬将玉乃島は、豊馬将がやや立ち遅れて、一旦は押し込まれたが、左を差してこらえ、逆に前に出ながら、右も入れてもろ差し。白房下に寄り切った。
NHK正面解説の音羽山親方が指摘した通り、豊馬将は、相手が止まったところから攻めが出る。
この相撲だと、やはり上位には苦しい。
上位戦をすべて終えてこれで4勝6敗。相撲が崩れていないので、勝ち越しも不可能ではないが、仮に勝ち越せたとしても、上位をもっと食っての勝ち越しを、豊馬将には本来期待したいところだし、たぶん本人も満足しないのではないか。

時天空琴奨菊は、過去時天空の5勝2敗。琴奨菊としては、苦手な相手だ。
立ち合いから琴奨菊は左を入れ、右からおっつけながら前に出ようとしたが、そこを肩すかし気味のひきおとしに落ちた。
時天空の懐の深さにやられた格好だが、このへんが合い口ということか。

琴光喜稀勢の里は、琴光喜が立ち合い右を差し勝った。
稀勢の里としては、左を差し返すなり、一旦離れるなりして自分有利の形を作って攻めたかったところだがならず、常に相手充分の右を差させたままの相撲になってしまった。
琴光喜は、終始相手に身体を密着させて前に出た。
稀勢の里としては、自分充分の左を一度も差せなかったのが敗因。
一方の琴光喜は、右を入れたまま密着して攻められたのがよかった。
攻めの厳しさ、前に出る力で若手にまさった。
琴光喜は、腰が心配された序盤戦とは別人のような相撲になってきた。
先場所に続いて今場所も2ケタ勝てば、ご当初の来場所、大関昇進挑戦場所となる。
それはさておき、まずは何より、調子が上がってきたところでの明日の横綱戦に期待したい。

白鵬は、昨日の相撲があるので、初顔の栃煌山戦、ちょっと心配したが、まず問題なしという相撲だった。
立ち合い左から張って右差し。左上手はとれなかったが、止まることなく動いて、左から小手に巻いての投げ。
このところの白鵬は、ひところ会得したと自ら言っていた、立ち合い左前まわしをとる相撲が陰をひそめているが、まあ、安定感にはちょっと欠けるものの、自在な相撲がとれているとも言えるし、たいていの力士との地力の差はやはり感じさせるものがあるので、これでよし、というところか。

魁皇千代大海は、両者好調なだけに期待したが、内容は千代大海の一方的な相撲。
千代大海が立ち合いから突き立てて一気に魁皇を土俵際まで詰め、押し返してくるところを引いて決めた。
千代大海としては、お約束の展開。
今日の魁皇は、ただ突きを受けるだけで何もできなかった。千代大海の相撲は知り尽くしているはずなのに、つかまえにいくことができなかった。琴光喜とは逆の意味で、別人のような相撲。
ちょっとがっかりした。

琴欧洲は、安馬を相手に、今日も立ち渋った。ともかく立ち合いが煮え切らない。結局自分の相撲に自信がないということだろう。
二度目の立ち合いも、一旦下ろした左手をまた上げた。どなってやりたくなる。
それでも立ち上がり、突っ込むところ、安馬にしては珍しい立ち合いの変化で、左にまわられての上手投げであっけなく転んだ。
注文相撲は好ましくはないが、安馬の場合、臨機応変な動きとしてとらえれば、たまには目をつぶってもいい。右から首を巻いての投げは、思い切りがよかった。
それにしても琴欧洲・・・。
ともかく、立ち合いが一定しない。これがまずはすべてだ。
安馬は貴重な白星で5勝5敗の五分に戻した。

結び朝青龍安美錦は、まあ、普通にとればこれは問題なしと思ったが、結果は意外の一言。
相撲とはわからないものだ。
立ち合い朝青龍は右から張ったが、踏み込みがまったくなく、左も差せない。
安美錦は張られながらも、横綱の顎の下に頭で当たる形で右を差し、一気に走った。
朝青龍は左から小手に振ったが、相手を呼び込む格好になり、そのまま向正面に飛び出した。
横綱は、「何でこんな相手にこんな負け方をしなきゃいけないんだ」と言いたげな表情で土俵を下がった。
さて、朝青龍はどうしたことか。楽な相手と見て調子をおろした面はあるだろう。また、昔からよく言われる、15日間の中には、どうしても気合いの入らない日が1日か2日はある、ということかもしれない。
もちろん、安美錦の右差しとその後の出足がすばらしかったとはいえるものの、ふだんだったらそれをさせないのが朝青龍だから、やはり今日の横綱は、立ち合い自分から張っていきながら、左を差せなかったことといい、相手の土俵に攻め込めなかったことといい、気力の充実がなかったという他はない。
仕切りの間、音羽山親方が、今場所の横綱は、言われるほどよくないと指摘していたが、それが当たった感じだ。

全勝 白鵬
1敗 朝青龍琴光喜朝赤龍普天王
2敗 魁皇千代大海、出島

これで、千秋楽全勝対決は消えた。
個人的には、今場所の横綱は、非常にいい部類に属すると思っていただけに、横綱が先に星を落とすことも意外だし、それも失礼ながら、いくら好調とは言え安美錦に負けるとは思わなかった。
これはちょっと大きいと思う。
星一つの差で千秋楽に対戦があるので、優勝争いはまだまだわからないが、白鵬が有利になったことは間違いない。