「レナード・バーンスタイン生誕100年記念ワールドツアー」と表記されたこの公演、日本(東急シアターオーブ)においては、7月12日(水)~30日(日)、計24公演が行われた。
(バーンスタインは、1918年生)
(バーンスタインは、1918年生)
この公演については、だいぶ前に、確か、地下鉄の車内広告で知り、是非とも行きたいものだと思っており、14日(金)に、大阪のフェスティバルホールで「ミサ曲」を聴いてきたのを機に、チケットを購入した。
東急シアターオーブという劇場には、今回初めて行った。会社からは、銀座線で行ったが、改札口から直結の形になっている。
エスカレーターを上がって行くと、渋谷の街が一望できる。
プログラム冊子から。
オーケストラはピットでの演奏だが、メンバーの中に、白石准氏の名前がある(ピアノ)。白石氏とは、20年以上前に、浦安オケで、グリーグのコンチェルトを弾いていただいたことがあるが、2週間前、大阪での「ミサ曲」でも、ロックバンドのメンバーだった。
「シンフォニック・ダンス」や、バーンスタイン自身が、キリ・テ・カナワ、ホセ・カレーラスとレコーディングしたCDは、これまでに聴いているものの、映画はちゃんと観たことがなく(DVDは持っているのだが)、ヴィジュアル面では、初めての観賞となる。
2幕構成であることも、初めて知った。
私の席は、2階1列27番。最前列、ステージをほぼ中央で観る形だった。
オケの演奏が始まり、やがて幕が上がる。ステージはずいぶんと狭い印象。
以後は、オケの演奏、キャストの歌とダンスに引き込まれた。
まとまった形での観賞は初めてだが、一連のナンバーには、これまで断片的に親しんできている。それらを、改めてじっくり味わった。リズム、コード進行、転調には、たまらない魅力がある。
個人的には、一番古くから好きだったのは、「トゥナイト」だ。
シューリヒトのシューベルト「グレイト」などがあったと記憶するが、そんな中に、「映画音楽への招待」と題するアルバムがあった。「栄光への脱出」、「日曜はだめよ」などと一緒に、「トゥナイト」が入っていて、この曲がいたく気に入ったのだった。
この頃は、まだ、クラシック音楽を聴き始める前のことで、指揮者としてのバーンスタインもまだ知らない。その後、高校に入ってから、クラシックに親しむようになり、好きな指揮者の一人になったバーンスタインが、作曲家でもあり、その代表作が、あの大好きな「トゥナイト」を含む「ウエスト・サイド・ストーリー」だと知った時には、大変驚いたものだ。
大学3年生の時、大学オケのサマー・コンサートで、「ウエスト・サイド・ストーリー」の抜粋(歌なし、オケのみ)を演奏する機会があった。これも懐かしい思い出だ。
さらに話はそれるが、石森(石ノ森)章太郎氏の「サイボーグ009」。サイボーグ戦士の一人、002は、アメリカ出身の不良少年で、ジェット・リンクという名前だ。初めて登場してくる場面では、少年たちが、プログラム冊子の表紙にあるようなポーズをしている。「ジェット」の名前も含め、石森氏が、「ウエスト・サイド」をよく知っていたことがうかがえる。
話を戻すが、その「トゥナイト」、私の好みからすると、テンポが速すぎるように感じた。
ともかく、どのナンバーもとてもよかった。「マンボ」に魅せられたことはもちろんだが、「アメリカ」が特によかったな。
あっという間に全編が終わった。
それにしても、この複雑なリズム、歌もダンスも大変なのだろうが、すばらしいできばえだったと思う。
2週間前の「ミサ曲」と続けて聴いて思ったのは、やはり「ミサ曲」は、作曲者にとってシリアスな音楽であり、「ウエスト・サイド」はエンターテインメントだということだ。
音楽の外観としては、「ミサ曲」にもミュージカル的な要素はあった。しかし、その時の感想記事にも書いたように、「ミサ曲」は、あくまで宗教曲そのものとして作曲されたものであり、ミサを題材にした、あるいはミサをめぐる物語として書かれたミュージカルでは決してない、と私には思える。表面的には似ている場面もあるが、両曲は、まったく違う意図で作曲されたものだと感じる。
カーテンコールは、大阪の「ミサ曲」とは対照的に、あっさりしたものだった。これで良いと思った。
21:27終演。
最後にまた話はそれるが、小田(和正)さん。小田さんが、「ウエスト・サイド」が好きだという話は、何かで聞いたか読んだかしたことがある。
「YES-YES-YES」のベースラインの一部が、「トゥナイト」を引用しているのではないか、と思ったことがある。
今回、実演に接してもう一つ思ったのだが、2幕で、マリアとアニタが歌うデュオの中で、ふと「あなたを見つめて」を思い出す音の動きがあった。
もしかして、これも意識的なのか、と思った。
だって、この曲が初めて収録されたアルバムのタイトルは、「sometime somewhere」なのだ。
会場を後にして、渋谷駅へ向かったが、無意識に、指を鳴らしながら歩いていた。自分でも可笑しかった。
あまり素晴らしかったものだから、ぼうっとしていたのだろう。JR渋谷駅から、新木場行きの電車に乗るつもりだったが、同じホームに1本早く来た逗子行きに乗ってしまったのに気づかず、武蔵小杉で折り返すことになった。