naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

5月場所9日目

先日、「綱とり」という言い方はやめてもらいたい、と書いた。
もう一つ、NHKのアナウンサーがこういう場合に多用する言いまわしに、「大きな夢」というのがある。これもやめてくんないかなあ、といつも思う。
実際に相撲をとっている力士の心境を推測するに、そういうどこか甘ったるい言い方はそぐわないように思うのだ。

全勝の普天王に土。過去4戦4敗の雅山との対戦、今日も一矢を報いることはできなかった。
立ち合いの踏み込みは普天王の方がよく、突き押し得意の雅山を、果敢に自分から突きで攻めた。
機を見てまわしをとりたかったのだろうが、とらせてもらえない。このへんはやはり合い口だろう。
最後はいなしで横を向かされてしまった。

同じく全勝の出島露鵬に敗れて1敗。
これも、過去1勝7敗と分の悪い相手。
露鵬は立ち合い左に変わって上手をとった。作戦的な立ち合いはもちろんほめられるものではないが、絶好調の出島の当たりをまともに受けず、離れた相撲を避けてつかまえるには、賢い方法ではあった。
がっちり左上手をとられて動きが止まっては、出島も勝手が悪い。
露鵬の寄りを一旦残しはしたが、そこまで。

北勝力は、立ち合い早すぎるつっかけで再度の仕切りとなり、自分の呼吸で立てなかった。
若の里に踏み込まれ、自分はまったく踏み込みがなかったため、一旦は攻め込まれて正面土俵青房寄りに詰まったが、そこからめざましい突きで逆襲し、電車道で向正面白房下に突き倒した。
それにしても、今場所の若の里は、下半身がもろい気がする。崩れ方がひどい。

高見盛朝赤龍は、立ち合いの呼吸が合わず、これは待ったかと思ったところ、互いに相手と呼吸を計り直して立ち上がった。
立ち合いの呼吸が合わず待ったになると、しばしば放送で「今日はちょっと立ち合いが乱れてますねえ」などと言われる。今日も正面解説の北の富士さんが言っていた。しかし、私はさほど問題視していない。北勝力がしばしばするような、あまりに自分勝手な立ち合いは批判するが、スターターのいない相撲においては、合わないこともあるだろうと思うのだ。
しかし、それでもこういう立ち合いは見ていて嬉しくなる。
自分の呼吸で立ったのは朝赤龍の方。速く飛び込んで相手の懐に入り、左前まわしをとって前に出た。
朝赤龍としては、会心の相撲だろう。勝ち越し。

豪風が、非常にうまい、いい攻めで春日王を突き落とした。
豪風のこの相撲は、見ごたえ、値打ちがあった。相撲を見る楽しみを味わわせてくれる相撲だった。

鶴竜は、今日も基本はかわしにいく相撲。
しかし、黒海によく見られて逃げ切れなかった。かわしたい鶴竜と、ともかく前に出ようという黒海では、勝負のゆくえは明らか。

時天空は、垣添戦、久しぶりにいい突っ張りが出た。
この人には、突っ張りが向くと、このところ言われているが、今日の一番も、上体を前傾させて、腕のよく伸びた突っ張りで、威力があった。こういう相撲をもっととってほしい。

琴奨菊は、玉乃島に快勝。
玉乃島が万全の状態でないこともあるが、左差し、右でおっつけながらがぶって寄った。
この人らしい相撲。型がある強みだ。いつも書くことだが、その点で、現時点では稀勢の里よりも上だと思う。

琴光喜栃煌山に完勝。勝ち越し。
立ち合い左から張って、もろ差し。
二本入れられては、さすがに栃煌山も前に出ることはできず、何もできなかった。
琴光喜の今日の内容は非常によかった。

千代大海豊馬将は、初顔の対戦。
千代大海は、威力のある細かい突きを出したが、豊馬将は頭を下げてしのぐ。
今場所、突っ張りながらのはたきは我慢してきた千代大海だが、さすがにこの展開に、突いてはいなして崩そうとした。
しかし、豊馬将はやはり守りが強い。突いても起きず、いなしても崩れない。
とうとう最後にはたいて呼び込んでしまった。千代大海は勝ち越しならず2敗。
豊馬将のよさが出た相撲だった。

魁皇稀勢の里は、相四つだけに、立ち合いすぐ左を差し合い、互いに上手が遠い格好になった。
魁皇は、普通なら右からおっつけて上手をさぐるところだが、今日は何度か右まきかえを試みた。これは危ないところだが、稀勢の里魁皇に左差し手を返されていたため、それに乗じて出ることができない。
最後、また右まきかえにいきかかってから、思い直して右上手をとろうと腕を伸ばした時に、稀勢の里の右の膝が崩れて倒れた。
魁皇としては、特に攻めたり技をしかけたりした訳ではなかったが、稀勢の里が足を滑らせたような感じだった。魁皇の動きがタイミングよく働いたか。
魁皇は勝ち越し。

琴欧洲は、安美錦相手に、今日も何か立ちにくそうにしていた。やはりどこか自分の相撲に自信がないというところがあるのだろうか。
立ち上がって、攻防の中で左上手をとったが、安美錦は浅いもろ差し。
琴欧洲は外四つでかまわず寄った。思い切りのいい相撲はとってほしいのだが、左の上手が切れてしまったことで、右の差し手を巧みに抜きながらの安美錦の投げに、一瞬早く落ちた。
安美錦は、終始頭が低かったのが勝因。一方の琴欧洲は、相撲の流れとしては決して責めたくないが、まわしの引きつけが甘かったことが敗因。

白鵬豊ノ島
放送の中では、このまま千秋楽まで星を落とさずにいくのではないか、という話が出ていた。
それはちょっと先走り過ぎだと思ったが、この一番に関しては、豊ノ島がケガをしていることからも、普通にとれば、白鵬の勝ちは動かないところだ。
しかし結果は、白鵬今場所一番危ない相撲。
これだから相撲はわからない。
立ち合いからの攻めはいつも通りだったのだが、何を思ったか、まともに引いた。
豊ノ島はケガはしているものの、さすがにこれに乗じて、西土俵に一気に出た。
白鵬は、土俵際に詰まって俵に足がかかり、誠に危なかったが、突き落としの逆転で辛うじて星を拾った。
豊ノ島が完調だったら、そのまま勝っていたかもしれないが、豊ノ島が完調だったら、白鵬もこういう引きは出さなかったかもしれない。
今日の白鵬は、相手のケガを意識していたから、こういう相撲になったとも考えられる。
まさか、今日発売の「週刊現代」の記事が影響したとは思いたくない。

朝青龍安馬も楽しみな対戦だったが、結果は一方的。
前へ出る攻めの厳しさとスピード、今日も横綱がスキのない相撲だった。
安馬も立ち合い右上手に手がかかったのだが、そこから何かさせる暇を与えず、一気に前に出た。
今場所の朝青龍は、非常にいい内容だ。

全勝 朝青龍白鵬
1敗 魁皇琴光喜朝赤龍、出島、普天王

琴欧洲千代大海が2敗に下がった。
今後、大関陣の中で、誰かが朝青龍もしくは白鵬に勝てるか、と考えた場合、その可能性はそう高くないと言わざるを得ない。
結局、今日のこの結果で、実質的には、両者のマッチレースになったと言える。
こうなると、どちらにも星を落とさずに走ってほしい。