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レコード・アカデミー賞を受賞していないカルロス・クライバー

音楽之友社のレコード・アカデミー賞

 

2013年に、同社から「レコード・アカデミー賞のすべて」(ONTOMO MOOK)が刊行された。

 

歌崎和彦氏、小林利之氏、諸石幸生氏の座談会が載っている。

 

その中で、カラヤンがオペラを始めとする部門賞を頻繁に受賞していながら、大賞を一度も受賞していないことなどが話題になっているのと併せ、カルロス・クライバーは部門賞を一度も受賞していないことにふれられている。

 

諸石氏が、この件について、「レコードが少なかったこともありますが、今から思えば不思議です」と発言している。

 

数少なくはあっても、名盤ならざるはなし、と言う他はない、あのクライバーが、レコード・アカデミー賞を受賞していないのは、確かに不思議だ。

 

クライバーの数少ない正規盤が発売された年、その部門では何が受賞していたのか。ちょっと調べてみたくなった。

 

リリース順に、以下の通りである。( )内は初出年月。

 

   ウェーバー 歌劇「魔弾の射手」

      ドレスデン国立歌劇場管 (1973.12)

         <1974年度オペラ部門>

            ヴェルディ 歌劇「オテロ

               カラヤンベルリン・フィル

 

   ベートーヴェン 交響曲第5番ハ短調「運命」

      ウィーン・フィル (1975.7)

         <1975年度交響曲部門>

            ベートーヴェン 交響曲全集

               ケンペ=ミュンヘン・フィル

 

   J.シュトラウス 喜歌劇「こうもり」

      バイエルン州立管 (1976.10)

         <1976年度オペラ部門>

            ヴェルディ 歌劇「マクベス

               アバドミラノ・スカラ座管 ※大賞受賞

 

   ベートーヴェン 交響曲第7番イ長調

      ウィーン・フィル (1976.12)

         <1977年度交響曲部門>

            マーラー 交響曲第9番ニ長調

               ジュリーニ=シカゴ響

 

   ドヴォルザーク ピアノ協奏曲ト短調

      リヒテル バイエルン州立管 (1977.8)

         <1977年度協奏曲部門>

            ベートーヴェン ピアノ協奏曲全集

               ブレンデルハイティンクロンドン・フィル

 

   ヴェルディ 歌劇「ラ・トラヴィアータ

      バイエルン州立管 (1978.2)

         <1978年度オペラ部門>

            R.シュトラウス 楽劇「サロメ

               カラヤンウィーン・フィル

 

   シューベルト 交響曲第3番ニ短調、第8番ロ短調「未完成」

      ウィーン・フィル (1979.12)

         <1980年度交響曲部門>

            ベートーヴェン 交響曲全集

               バーンスタインウィーン・フィル ※大賞受賞

 

   ブラームス 交響曲第4番ホ短調

      ウィーン・フィル (1981.5)

         <1981年度交響曲部門>

            ベートーヴェン 交響曲第6番ヘ長調「田園」

               スウィトナーベルリン国立歌劇場

 

   ワーグナー 楽劇「トリスタンとイゾルデ

      ドレスデン国立歌劇場管 (1982.12)

         <1983年度オペラ部門>

            ヴェルディ 歌劇「ファルスタッフ

               ジュリーニロスアンジェルス・フィル

 

   ベートーヴェン 交響曲第4番変ロ長調

      バイエルン州立管 (1984.9)

         <1984年度交響曲部門>

            マーラー 交響曲第9番ニ長調

               カラヤンベルリン・フィル

 

   ニューイヤー・コンサート1989

      ウィーン・フィル (1989.5)

         <1989年度管弦楽曲部門>

            グリーグ 劇音楽「ペール・ギュント」抜粋

               ブロムシュテット=サンフランシスコ響

 

   ニューイヤー・コンサート1992

      ウィーン・フィル (1992.4)

         <1992年度管弦楽曲部門>

            R.シュトラウス 交響詩ドン・ファン」「死と変容」他

               ドホナーニ=ウィーン・フィル

 

   ベートーヴェン 交響曲第6番ヘ長調「田園」

      バイエルン州立管 (2004.3)   

         <2004年度交響曲部門>

            ショスタコーヴィチ 交響曲第4番ハ短調

               ゲルギエフマリインスキー劇場管 ※大賞受賞

 

   ボロディン 交響曲第2番ロ短調

      シュトゥットガルト放送響 (2005.4)

         <2005年度交響曲部門>

            マーラー 交響曲第3番ニ短調

               マーツァル=チェコ・フィル

 

   ベートーヴェン 交響曲第7番イ長調

      バイエルン州立管 (2006.1)

         <2006年度交響曲部門>

            プロコフィエフ 交響曲全集

               ゲルギエフ=ロンドン響 ※大賞銀賞受賞

 

うーん、なるほど、こういうことか。

 

オペラ部門は、「魔弾の射手」、「こうもり」、「ラ・トラヴィアータ」、どれも相手が悪かったという面はあるな。「魔弾」は、彼のデビュー盤で、まだ指揮者としての評価が確立していない時期だったから、カラヤンの「オテロ」でやむなし。あの「こうもり」は、アバドの代表的名盤で大賞受賞の「マクベス」相手では、相撲で言うと、14勝1敗の星なのに、上に全勝力士がいたから優勝できなかったようなものだ。「トラヴィアータ」も同様。カラヤンの「サロメ」じゃねえ、という感じがある。しかも、その「サロメ」をもってしても、大賞には届かなかった。

 

「トリスタン」もなあ・・・。ジュリーニの「ファルスタッフ」とは、いい勝負だったはずだが。当時の評価、選考経過はどうだったんだっけ。

(上記期間の「レコード芸術」は、すべて持っているが、月評や選考経過の記事の一つ一つにつぶさにあたることができない)

 

交響曲部門は、まあ仕方がないか、という気がする。「運命」は、大木正興氏がいい評価をして推薦盤になっているが、氏があの時期激賞してやまなかったケンペに太刀打ちできなかったのは、やむを得ない。

 

ベートーヴェンの7番は、その大木氏が「才人の才まかせの音楽」と批判的な評を書いて、そもそも推薦盤にしていないし、ブラームスの4番は、複数批評に以降した後だが、確か、小石忠男氏が評価しなかったはずで、特選盤になっていない。シューベルトはどうだったんだっけ。どちらにせよ、バーンスタインベートーヴェン全集の牙城は崩せなかっただろうけど。

 

2000年代に入ってリリースされた3枚も、並み居る最新のセッション録音を押しのけて受賞するまでには至らなかった、という感じだろうか。

 

管弦楽曲部門で、2回のニューイヤー・コンサートについては、相手が悪いというほどには思えないが、ニューイヤー・コンサートのライブ録音にアカデミー賞を与える、という雰囲気が、いかにクライバーでも、なかったのかもしれない。

 

結局、どれを見ても、仕方がなかったかな、という感じを受ける。

 

ただ、アカデミー賞は受賞できなかったものの、どの盤も、今もって不動の名盤の地位は失っていない。そのことは、改めて確認できた気がする。

 

「無冠の帝王」、カルロス・クライバー

 

※過去の関連記事

    レコード・アカデミー賞のすべて

       https://naokichivla.hatenablog.com/entry/63537989

    カラヤンは誰に敗れてレコード・アカデミー大賞を受賞できなかったか

       https://naokichivla.hatenablog.com/entry/63718599

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       https://naokichivla.hatenablog.com/entry/63741944

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       https://naokichivla.hatenablog.com/entry/64374216