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68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

古澤巖×ベルリン・フィルハーモニックストリングス ~愛のクリスマス2023~

18日(月)、銀座の GINZA SIX 地下3階の観世能楽堂で行われた、古澤巖さんとベルリン・フィルメンバーの演奏会を聴きに行った。

毎年、さまざまな形態でのツアーを行っている古澤さんだが、ベルリン・フィルメンバーとの公演に行くのはこれが3回目。
観世能楽堂での公演は昨年も聴いていて2年連続となる。

 

師走の銀座。さほど寒くはない。

 

少し時間に余裕があるので、GINZA SIX の裏手にある、岡田かめやに行ってみた。以前、NHKの「ドキュメント72時間」でとりあげられたのを観て、一度行ってみたいと話していたのだ。おつまみ専門店である。

せっかく来たので、何点か買い求めた。

   ※岡田かめや公式サイト

       https://okadakameya.thebase.in/

   ※ドキュメント72時間公式サイト

       https://www.nhk.jp/p/72hours/ts/W3W8WRN8M3/

 

 

 

●古澤巖×ベルリン・フィルハーモニックストリングス ~愛のクリスマス2023~
日 時 2023年12月18日(月) 17:30開場 18:30開演
会 場 観世能楽堂
演 奏 ヴァイオリン 古澤 巖
    ベルリン・フィルハーモニックストリングス
       第1ヴァイオリン Dorian Xhoxhi
       第2ヴァイオリン Johanna Pichlmair
       ヴィオラ Martin Stegner
       チェロ David Riniker
       コントラバス Michael Karg
曲 目 ボビー・ヴィントン&ジーン・アラン Mr.Lonely
    マリーノ マリーノのコンチェルト第4番より第2楽章「Mojave」
    ヴィヴァルディ ヴァイオリン協奏曲集「四季」より「冬」
    マリーノ マリーノのコンチェルト第8番
    チャイコフスキー(David Riniker編曲)

         組曲くるみ割り人形」より「トレパック」「花のワルツ」
    ドビュッシー(David Riniker編曲) 月の光
    ドビュッシー(David Riniker編曲) 小組曲
    サラサーテ(小高直樹編曲) ツィゴイネルワイゼン
    [アンコール] チャップリン=David Riniker

         映画「モダン・タイムス」より「スマイル」
    Hugh Martin Have Youself a Merry Little Chiristmas

 

入場時にもらったプログラム。実際の演奏順とは多少違った。

 

我々の席は1列15番・16番。最前列だった。あまりに前すぎてヴィオラの手元が見えないのがちょっと残念。

 

古澤さん+弦楽五重奏の編成だが、五重奏の内、ファースト、チェロ、コントラバスは昨年と同じ顔ぶれ。
完全に生音の演奏会である。

 

足袋を履いた6人が登場して最初に演奏されたのは、配られたセットリストにない「Mr.Lonely」だった。
古澤さんのフラジオレットが何ときれいだったこと。
バロックボウでの演奏。かなり短く弓を持っている。

 

以後、古澤さんのMCで進行した。

 

次は古澤さんの公演にはおなじみのロベルト・ディ・マリーノのコンチェルト第4番の第2楽章。
ヴィヴァルディの「冬」の第1楽章のように始まるが、途中からDdurのロマンティックな音楽になる。
マリーノ氏はコンチェルトを常に第2楽章から書き始めるのだそうだ。この第4番はこれに続く楽章がいまだできていない未完の作品。

 

続いてヴィヴァルディの「冬」。
第1楽章はピリオド奏法的な刺激的な音だったが、以後は普通。見事なアンサンブルだった。

 

ここでメンバー紹介。

 

セットリストの「スマイル」を飛ばして、マリーノのコンチェルト第8番へ。
できたてのホヤホヤと言っていたので、おそらく来年新しく出るアルバムに収録されるのだろう。
この8番は3楽章揃っている。
第1楽章はファンダンゴの舞曲。5拍子と6拍子が混ざり合うリズムが面白かった。第2楽章はこれも美しい音楽だが、映画音楽的な甘さにとどまらない味わいがある。第3楽章はヴィヴァルディの「夏」のような嵐の音楽。古澤さんのMCでは、ヴィヴァルディは割合短く終わるが、マリーノはこれが延々と続いて大変。でも今日がツアーの最終日なのでがんばって弾いてしまいたい、とのことだった。確かにこれは大変な曲だった。ヴィヴァルディよりもはるかに難しそうだ。古澤さんの表情も鬼気迫るもので余裕はなさそうに見えた。こういう古澤さんを見るのは、2019年9月に宇奈月国際会館セレネで行われた演奏会でバッハとモーツァルトを弾いた時以来だ。途中にゆっくりしたテンポの中間部がある。そこからまた嵐に戻っていくところが面白かった。

 

ここで15分間の休憩。

 

後半は、まずベルリン・フィルの五重奏だけで、「くるみ割り人形」。チェロのリニカー氏の編曲だが、特に「花のワルツ」がよかった。

 

古澤さんが合流。

ドビュッシーの「月の光」と小組曲が続けて演奏された。これらもリニカー氏の編曲。
「くるみ割り」はフルオケのための曲を五重奏で演奏したが、「月の光」は、本来ピアノ独奏曲を六重奏で演奏する形態。
楽しみに聴いたが、「月の光」にうならされた。ピアノのために書かれた音楽、ピアノでしかあり得ない音楽と思っていたが、弦6人で奏でられるこの曲は夢を見ているような美しさだった。
組曲はもともとオケ版もあるので、そういう驚きはなかった。1995年、浦安シティオーケストラに入団して、最初に乗った定期演奏会の中プロがこの小組曲だったので、その時のことを思い出しながら聴いた。

 

本編最後は「ツィゴイネルワイゼン」。これは小高直樹氏という人の編曲だが、古澤さんのソロを5人が伴奏するのでなく、6人が順次ソロを回していくような形態。この編曲はすばらしかった。ハーモニーのちょっとした味つけなどが気が利いていた。
今回の演奏会はとにかくリニカー氏ともども編曲の良さが印象的だった。
そしてこの曲でも、古澤さんのフラジオがとにかく水際立っていた。今、うらやすシンフォニエッタで練習しているアレンスキーの曲に出てくる4小節ばかりのフラジオに四苦八苦している身としては、ほれぼれと聴くばかりだった。

 

アンコールは2曲。

まず、もともとセットリストに入っていた、チャップリンの「スマイル」をここで。たまたまだが先週、石田組でも聴いた曲だ。
これもリニカー氏の編曲。

MCによると、先月、ベルリン・フィルが来日公演を行った後、ヴィオラとチェロの2人はそのまま日本に残り、伊東と清里にそれぞれ滞在していたとのこと。大型楽器はオケと共にベルリンに運ばれてしまったので、リニカー氏は、このツアーでは日本で借りた楽器を弾いてきたそうだ。

 

一旦はけた全員がサンタ帽をかぶって登場(コントラバスはトナカイの帽子、楽器にサンタ帽をかぶせていた)し、最後に「Have Yourself a Merry Little Christmas」が雰囲気たっぷりに演奏された。

 

今年は古澤さんを異なるスタイルで4回聴いたが、この日の演奏会が特によかったように感じた。素敵な音楽に浸る幸せな時間だった。