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68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

古澤巖 ヴァイオリンの夜 サン・ロレンツォのヴァイオリン ~月の光~

5月18日(土)、3年ぶりの丹波篠山市立田園交響ホールで、古澤(巖)さんを聴いた。

 

 

入場時にもらった紙。

 

●古澤巖 ヴァイオリンの夜 サン・ロレンツォのヴァイオリン ~月の光~

日 時 2024年5月18日(土) 14:30開場 15:00開演

会 場 丹波篠山市立田園交響ホール

ヴァイオリン 古澤 巖

ピアノ 金益研二

曲 目 金益研二 夜のミロンガ
    谷村新司 いい日旅立ち
    ヴィオッティのコンチェルトより
    サティ ジムノペディ
    ドビュッシー 月の光
    ゴルドマルクのコンチェルトより
    金益研二 キジトラや
    平原まこと 手紙
    ゴルドマルク air~フィナーレ
    ディニク ひばり
    [アンコール] モンティ チャルダッシュ

 

我々の席は、5列9番10番。

 

古澤さんは、毎年様々なスタイルの演奏会を開催している。品川カルテット、ベルリン・フィル楽員との弦楽六重奏バロックチェロとの二重奏、先日聴いた「コルシカ音楽祭」ではピアノを交えた四重奏等々。それぞれに魅力がある。

金益研二さんのピアノとのデュオもその一形態で、この丹波篠山では2回目、宇奈月温泉でも聴いているからこれが3回目になるだろうか、変わらず大変聴きごたえのあるステージだった。

金益さんの使う楽譜はタブレット

 

最初の2曲は、東京藝術大学を卒業後アルゼンチンでタンゴを学んだという金益さんのタンゴ風なアレンジ。

2曲とも、弓を駒よりも手前側に当てて特異な音を出す場面があった。

 

曲間には古澤さんのMC。

 

次は、新しいアルバム、「サン・ロレンツォのヴァイオリン~月の光」収録曲であるヴィオッティの22番のコンチェルトの第3楽章。

古澤さんのヴァイオリンは、1718年製のストラディヴァリウスだが、ヴィオッティがこの楽器を使って、マリー・アントワネットの前で、このコンチェルトを弾いたことがあるのだそうだ。

古澤さんによると、他の曲を弾く時より楽器が鳴るそうで、その時のことを楽器がおぼえているのではないか、とのことだった。

もっぱら子供の発表会で聴く曲であり、大人が弾くことは少ないが、クライスラーアメリカでデビューした時に弾いたのはこの曲なのだそうだ。

 

このヴァイオリンがヴェルサイユから来たので、アルバムにフランスの曲を入れた、として、サティとドビュッシーが演奏された。

サティはほとんどヴィブラートなし。

ドビュッシーは、ベルリン・フィルの六重奏メンバー、ダヴィッド氏のアレンジにより、昨年は六重奏で聴く機会があったが、今回はピアノとのデュオ。

con sord.で、さわったら壊れてしまいそうな繊細さに、こちらも息を詰めて聴かざるを得ない。

妻の話では、曲の入りが惜しかったとのことだが、気づかなかった。
妻の感想では、今回の金益さんのピアノはベストパフォーマンスではなかったとのこと。

 

前半の最後は、ゴルドマルクのコンチェルトの第1楽章。

金益さんとのデュオでは、ソナタを演奏することが多い(前回ここで聴いた演奏会では、R.シュトラウスソナタを演奏した)が、今回はこのゴルドマルクのコンチェルトを全曲演奏することにした、との話だった。

新しいアルバムには第3楽章が収録されているが、それと第2楽章は後半で演奏された。

このコンチェルトは、古澤さんが師事したミルシテインの十八番だったそうだ。
ヴィオッティもゴルドマルクもイ短調の曲だ。

 

休憩後の後半は、金益さんが1人で登場してMC。
最初の曲は、ピアノソロで、猫を描いた曲だった。

 

古澤さんが入場。

 

平原綾香さんとラジオ局で縁ができたのがきっかけで、父君平原まことさんのジャズ曲をとりあげることになったとのMC。

この曲も新しいアルバムに収録されている。

 

そして、ゴルドマルクのコンチェルト、第2楽章と第3楽章。

ミルシテインは来日することがなく、古澤さんが会った時にはもう80代だったが、誰よりも速くうまく弾けて歌があったそうだ。

第2楽章は3拍子系のゆっくりした音楽、第3楽章は同じ3拍子系で速い音楽。

第2楽章の冒頭はおそらく白玉の音符、金益さんのピアノの長い延ばしだったが、その延ばしから3つの拍の拍子感が伝わってきた。日頃のオケ練では、延ばす音にテンポ感、拍子感がなくなる、とよく指摘されている身なので、減衰するだけのピアノ和音から3拍子が聞こえてくるのがすごいなと驚いた。

 

本編最後は、ディニクの「ひばり」。ルーマニアの曲だそうで、フラジオレットがひばりの声を表現しているようだった。

 

アンコールは、モンティのチャルダッシュ。この曲は、古澤さんで何度か聴いてきた気がする。

途中からの速いパッセージでは、腕がほとんど動いていない。手首だ。

 

古澤さんのヴァイオリンにはいつもセンスを感じる。

今回も、すべての曲が草書の味わい。さっとひと刷毛描いた、という感じがする。

(高嶋ちさ子さんのヴァイオリンは、対照的に楷書だと感じる。古澤さん同様、毎年何度か聴く葉加瀬太郎さんになると、これはもっと舞台人としてのパフォーマンスとして立派だという印象だ)

どれもすばらしかった中、強いて絞れば私としては断然ドビュッシー。次いではモンティ。

 

7月に品川カルテットを聴く予定。

以後も、今年は何度か聴くことになるだろう。