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68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

モルゴーア・クァルテット 演奏活動30周年 Vol.4 《再演総選挙によるプログラム Ⅱ》

24日(月)、N社(京橋)本社でのOB会打合せを終えた後、行きつけの日本橋の理髪店で散髪、さらに丸善に立ち寄ってから、浜離宮朝日ホールに向かった。

モルゴーア・クァルテットの演奏会を聴くためである。

 

会場に着いて、まず夕食。ALASKAでシーフードカレー。

 

開場の18:30までは時間があるのでゆっくり食べ、食後のコーヒーも注文。

さてそろそろ行くか、と店を出てチケットを取り出したら、「自由席」と書いてあるじゃないの。

げっ、そうだったんだ。コーヒーなんか飲んでる場合じゃなかった。

急いで行くと既にうねうねと折り返す行列ができている。その最後尾に並んだ。

やっと入場して席を物色。

1階中央ブロックの前方4列に指定席の表示がしてあったが、幸いそのすぐ後ろの5列にまだ空席があったので、ここは1人客の身軽さでもぐりこんだ。

5列9番。

 

 

●モルゴーア・クァルテット 演奏活動30周年 Vol.4 《再演総選挙によるプログラム Ⅱ》

日 時 2024年6月24日(月) 18:30開場 19:00開演

会 場 浜離宮朝日ホール

弦楽四重奏 モルゴーア・クァルテット

曲 目 ヒンデミット 下手くそな温泉楽隊が朝7時に噴水の周りに集まって

             初見で演奏したような「さまよえるオランダ人」序曲

    ヤナーチェク 弦楽四重奏曲第2番「内緒の手紙」

    ボロディン 弦楽四重奏曲第1番イ長調

    [アンコール] パヴェル・ハース Pavel Haas

             弦楽四重奏曲第2番「猿山より」第2楽章「御者と馬」

 

この演奏会の情報は割合直前になって得て、チケットを買い求めた。

決め手はヒンデミットの「下手くそな・・・オランダ人序曲」が聴けることだった。この曲の存在は、渡辺和氏の著書「クァルテットの名曲名演奏」(音楽之友社)を読んで知っていた。こんな珍品が実演で聴けるなら、と思ったのと、ボロディンも有名な2番でなく聴いたことがない1番というのも貴重に感じたのだった。

 

プログラム冊子から。

 

演奏活動30周年にあたり、過去の定期演奏会でとりあげた曲の中からもう一度聴いてみたい曲のアンケートをとったのだそうだ。

(この四重奏団の売りであるショスタコーヴィチとロックを除く条件)

だから「再演総選挙」なんだ。

その結果が掲載されている。

 

上位曲の中から6曲を選んで、3曲ずつ2回に分けて演奏会が行われ、今回がその2回目なのだが、何と、私が食いついたヒンデミットがアンケート第1位!

ヤナーチェクは2位、ボロディンは4位。

上位曲の顔ぶれを見ると、モルゴーア・クァルテットのファンの好みがうかがえる。

第一、ボロディンは1番しかないものね。

 

曲目解説を書かれた池辺晋一郎氏を会場で見かけた。

 

さて、最初はお目当てのヒンデミット

楽しませてもらった。

あのワーグナーの「さまよえるオランダ人」序曲を「下手くそな温泉楽隊」が「朝7時」に「初見」で演奏した、という設定だが、何故か途中、曲が「スケーターズ・ワルツ」にかわってしまったりもする。

音程の狂い方、アンサンブルのずれ方等々、おそらくすべて楽譜に書いてあるのだろう。それを完璧に演奏するから、聴いて笑えるという趣向。

一流のプロの四重奏団だからこそこういう音楽になるわけだ。その意味では一流のプロにとってはある意味で難曲なのか?

私が弾いたらどうなるだろう。存在しないであろう、まともな四重奏楽譜を真剣に弾いてこんな感じになったり、あるいはこのヒンデミットの楽譜をがんばって弾いたらすごくちゃんとした演奏になってしまったり?

自分が弾いたら、と思いながら聴くと結構複雑な気持ちになる。

あっという間に曲は終わってしまった。

 

次はヤナーチェク。この曲は実演で聴いたことがあっただろうか。大学時代にスメタナ四重奏団が大学祭に来て演奏したような気がする。

レコードでもめったに聴かない曲なので、ともかく、こんな曲だったっけ、と思いながら聴いた。

ヤナーチェクの音楽自体、あまりよく知らないが、この四重奏曲はしばしば刺激的な音のする曲だった。

全曲にわたって、とにかくまあ転変の激しいこと。

4楽章のテーマは聴きおぼえがあった。その他では、3楽章の主部、どこか懐かしくさみしいメロディが印象に残った。

ヤナーチェクの音楽、特にオペラを2つ3つ聴いてみるべきだな、とふと思った。

 

20分間の休憩の後、ボロディンの1番。

2番は時々聴く曲だし、特に例の3楽章はとてもよくできた音楽だと思う。

一方、1番は実演であるかどうかを別にしておそらく初めて聴くと思う。

ヤナーチェク後だけにとても聴きやすく感じた。2番に通じるところがある。

1楽章は、イ長調の曲の開始楽章であるにもかかわらず、途中ハ長調で進む時間が長かった。

2楽章は、2番の3楽章をどことなく思い出させる雰囲気。

小野富士さんのヴィオラは独特の音。全体の中にとけこむような感じだ。野太いところはまったくない。最初はミュートをつけているのかと思ったものだ。

3楽章は、トリオでチェロが奏でるフラジオレットの美しい響きが印象に残った。

池辺さんの解説によると、ベートーヴェンをリスペクトするボロディンが、1楽章でベートーヴェンの13番の終楽章(「大フーガ」でない方)を引用しているとされていたが、私にはそれがわからなかった。一方、4楽章については、解説には書かれていないのだが、私にはユニゾンの強奏が「大フーガ」を連想させられたのと、ゆっくりした静かなフーガのような動きには14番の1楽章を思い出した。

全体を通じて、転調の感覚が独特だと感じた。

 

カーテンコールでは、荒井英治さんがマイクを持ってMC。

・これが30周年記念のファイナルであること。

・再演総選挙の結果を見て、皆さまの変態具合がよくわかった。さすがモルゴーリアンと納得している。

・総選挙結果の2回のプログラムは、1回目が王道の曲であるのに対して、今日はモルゴーア・クァルテットの本領発揮という曲を並べた。

・1回目に「大フーガ」、そして今回13番の終楽章が引用されているボロディンをやって、13番が完結した形になったのは、モンゴーリアンの意図として感動的に思っている。

・今後、20年30年できる歳ではないので、どうしていくかはわからないが、やり残すことのないように活動していきたい。

 

アンコールは、我々らしい変な曲をやります、と紹介されたのが、ハースという人の弦楽四重奏曲から「御者と馬」という曲だった。

ハース? ブルックナーの版で聞くハース? と思ったが、たぶん違うかな。

にぎやかな曲だった。

 

21:01終演。

 

サイン会があることは開演前からアナウンスされていた。

CDを買う必要があるのかな、と売場に行ったら、ボロディンの1番と2番があったので、1番は持っていないことでもあり買った。

 

列に並んだが、見るとCDを買った人でなくとも、プログラム冊子にサインしてもらえるのだった。

藤森亮一さんには、ボロディンフラジオが素敵でした、小野さんには、アマチュアヴィオラをやってます、戸澤哲夫さんには、ヒンデミットが生で聴けるとは思いませんでした、と話しながらサインをいただいた。

 

1990年代の終わり頃、荒井さんにワークショップの指導を受けたことがある。当時、荒井さんがコンサートマスターを務めていた東京フィルハーモニー交響楽団が、千葉市と提携関係にあり、市内のアマチュア奏者を指導するワークショップが行われた。

記憶では確か2回参加した。曲はいずれもモーツァルトで、1回目は弦だけで「アイネ・クライネ」を、2回目は管も加わって「ハフナー」全曲を勉強したと思う。

指導の中心が荒井さんだった。他に何人かの東京フィルの楽員が指導に来られていて、現在ヴィオラ首席奏者の須藤三千代先生に分奏をつけていただいた。

荒井さんにサインをいただきながら、昔の話ですけど千葉市のワークショップでご指導いただいたことがあります、と話した。

 

貴重な曲を聴かせてくれるモルゴーア・クァルテット、また今後も聴いていきたい。

 

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    須藤三千代先生~やっとお名前がわかった
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