naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

演奏に対する辛口の評価、ご意見について

定期演奏会の本番終了。

どこの市民オケでもそうだと思うが、プログラムにアンケートがはさみこまれる。
お客さまが記入されたアンケートは、我々のオケの場合、打ち上げの席で回し読みする。

それから、自分がお誘いした知人、友人からも、終演後のロビー、あるいは後日のメールで、感想を聞かせていただくことがある。

ほとんどは、「よかった」「熱演だった」「すばらしかった」というものが多い。
しかし、中には、批判的なご意見をいただく場合がある。

これをどうとらえるか、というのは、市民オケにとっては、結構本質的な問題だと思う。
今回、ちょっと感じるところがあったので、書き残しておきたい。

私は、以前から、「市民オケ=草野球論」というのを持論にしている。
好きで集まった仲間が、好きなことをやって楽しむのが基本。
ミスもあれば、試合に負けることもあるが、それをも含めて、趣味の楽しさ。
といったような考え方だ。

3年前、社外に出向していた時、その職場でのイントラネット上に、自分の趣味を紹介する場があって、今のオケのことを書いた。
そのことを、このブログでも紹介させていただいたが、その中でも、「草野球論」にふれている。
  http://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/44704347.html

さて、今回、来聴してくれた、日頃のアンサンブル仲間である、Hoさんから、こんなメールをいただいた。一部を抜粋して引用する。

  辛口の感想ですが、
  全般に、テンポの設定が穏やかで、響きが柔らかに聴こえました。
  指揮者の性格? 人生観? 
  オケは、もっと燃えて欲しい。もっと、挙措・動作があると良い。
  荒々しさ、骨太な芯のアル響きが欲しい。
  コリオラン:出だしの音の立ち上がりをスパッと明確に。
  くるみ割り:もっと楽しそうに、童心還って。
        3拍子の後打ち2泊目をほんのわずかに揺らしたら?
  ショスタコ:緊張感が欲しい。Audienceに圧迫感を与えるくらいに。
      硬質で明確な確信のある冷ややかな箇所があっても?
  改善Part)
   (naokichi注;以下、具体的なパート名伏せて×と表示します)
   ×:もっととおる響きを!! 主役のフレーズは積極的に。
      もっと粘りのアル力強い音色を。
   ×:パトリと同じくらいもっと響かせて。
   ×:情熱が欲しい。
  その他)
   胡桃割りの×は、響きが残りすぎ、
   ×は暴力演奏にならないように。
  少し率直に書きすぎ?ご容赦のほどを。

それから、来聴者のアンケートの一部。

  「ピッチ」「たての線」は大事ですね。pや少人数では不安定さを感じました。
  tuttiの迫力に欠けるのはピッチのためでしょうか?

  オーボエビオラが音がはずれるのが少し気になりました。
    →naokichi注;どこのことだろう? ショス5のあの鬼門か?

  くるみ割り人形
    まとまりがない。アンサンブルができていない。
    管楽器がバランスを考えていない。それでピッチも悪いからすごく気になった。
  市民オケでしゅみとして楽しむのはいいと思うけど、演奏会はお客さんにきいてもら
  うためのものだから、聴かせる演奏をして欲しいです。
  ロビーのアンサンブルの時点で、ObとVaはひとりで楽しむ人だと思いました。ピ
  ッチくらいきいた方がいいです。
    →naokichi注;ロビーコンサートには、ヴィオラは3人出ましたが、こう
          言われるのは私しかありえないです。

引き続き、草野球になぞらえてオケをとらえるなら、例えばこういう言い方ができるかもしれない。

みんな仕事を抱えているのだから、毎週日曜日に9人のメンバーを揃えて試合に臨むこと自体大変。
だから、ポジションによっては穴が出てくるのは仕方がない。
そもそも、高校の野球部みたいに、平日に練習したりできない。日曜日に集まった時に少々アップをする程度で試合になるので、個々には上手い奴、下手な奴がいるけど、基本的に全体のレベルとしてはそんなに上手かあない。

そんな仲間で、週1回、時間をやりくりして集まって野球を楽しんでいるんであって、勝ったり負けたりは二の次。
うちのチームでは、どうしてもライトが落球ばっかりするけど、まあ仕方がないんだ。
みんなで汗を流して、試合の後に相手チームの人間たちとビール飲むのが一番の楽しみなんだよね。

だから、今日いつもみたいに試合してたら、何か野球にすごい詳しい人が見てて、ライトが下手だとか、5回裏の内野ゴロはゲッツーがとれたはずなのにとか、8回の満塁の場面での配球がとか言われてもなあ・・・。

で、市民オケの場合。
ここからは、あくまで私見であって、私のオケの他の団員がどう考えているかはわからないことをお断りしておきます。

オケについても、今書いたことと基本的には同じスタンスでやっているところがある。
仕事、家庭のそれぞれの事情を抱えた団員が、その事情の許す範囲で参加している。
端的に言えば、毎週練習に出てくる団員ばかりではない。私にしても、皆勤はとてもできない。
それに、技量が均等なわけではない。このオケにもしオーディションがあったら、私は在籍させてもらっていないだろうと思う。
市民オケの中には、オーディションをするところもあるし、S交響楽団では、一度でも練習を欠席すると退団させられると聞いたことがある。
そうでないオケであるのを幸い、もう12年以上もこうして弾かせてもらえている。私はそういう立場だ。

だから、オケとしてどんなお客さまの要求にもこたえる完璧な演奏ができるかというと、それはやはり難しいと思う。

半年間、自分のできる限り練習に参加し、できるだけさらい、本番に臨んで終わった。
その出来をどこまで自分に問い詰めるか?
と考えた時、「ミスがあったっていいじゃないか」というスタンスが存在する。
また野球にたとえるが、クロスゲームで、高校野球の外野手が、これをとれば決勝進出というフライを落球してしまったことで、逆転サヨナラ負けをくらったような場合。
その選手は、一生トラウマになるような悔いを残すだろう。

しかし、市民オケにおいて、そこまでのことはないだろう。私も経験があるが、あるソロがぼろぼろだったりしたって、そのことで後で仲間から激しく責められることはないし、自分自身も、とりかえしのつかないことをしてしまった、オケに迷惑をかけてしまった、もう責任をとって退団します、みたいなことは、たぶんない。

だから、さっきの草野球の話と同様に、オケの場合も、「半年みんながんばったね! 個々にはミスもあったけど、ともかく終わってよかった、よかった。結構いい演奏だったよ、ねえ」的に、打ち上げではすべて忘れて飲むのが基本であって、そこに、上に引用したような批判的なご意見が寄せられた場合、それを「大人げない」とか「無粋」だとか、「こっちは楽しみでやってるんだから、そこまで言われなくても」みたいにとらえる感覚も、たぶん存在する。私自身、そう思っている部分がある。
せっかくの打ち上げに水をさされたみたいな気持ちで、回し読みしているそういうアンケートを黙殺したり、笑ってかたづけたり、ということも、たぶんある。私自身、そう思っている部分がある。

しかしだ。
私は思う。思い直そうと思う。
楽しみのためにやっているとは言いながら、草野球と決定的に違うこと。
それは、「お金をとっている」ことだ。
我々のオケは、前売り800円、当日売り1,000円をちょうだいしている。
私も含めて、多くの場合、知人友人にチケットを渡す際に、代金はもらっていないと思うが、それでも、有料で入場されるお客さまはおられる。

お金をとっている以上は、自分たちの楽しみでやっているんだから、こっちの勝手でしょ、とはやはり言えないのだろうと思う。

実は、今回の打ち上げで、こういう議論があった。
ともかくも、ショス5をこれだけできた。毎回、我々なりにはレベルアップしてきている。
その上で、これから先、このオケはどこをめざすべきなのか、という話だった。

団内指揮者のK氏は、長い歴史の中で、ここまでできるようになったのだから、これから更に上のレベルをめざしたい、但し、団員が増えてきていることも大切にしたいので、すべての団員にとって、楽しめる場であることは維持したい、という趣旨のことを発言された。

その後、管トレーナーでN響OBのK先生が発言され、ここまできたんだから、不熱心な団員の方には少し遠慮してもらって、やる気のある団員が、もっとレベルアップのために研鑽を積むことも考えていくべきでは、とおっしゃった。

この打ち上げには、団員全員が参加していたわけではないが、この時その場にいた団員にとっては、この話はそれぞれに大きく受け止められただろうと思う。

私見だけでなく、団としてはこういう意識を持ってきている。

非常に難しい問題だ。
それぞれの団員に団へのスタンスの差がある中、オケとしての演奏水準をどう上げていくのか。
上に書いたように、オーディションでもして、力量の保証されたメンバーを揃えるのも一つの方法だ。
しかし、今の浦安オケはそういう方針をとっていない。

端的な事例として言えば、今回の演奏会、ヴィオラは、団員3人+エキストラ9人で、所定の6プルトを揃えた。一方、チェロは、もうだいぶ以前から、団員だけで所定の5プルトを揃えられている。
ある意味では、ヴィオラの方が、安定した演奏ができる。今回のショス5の例の「鬼門」にしても、団員は戦々恐々としていたが、結果としては、75%を占めるエキストラの力で、パートとしては無難な演奏ができた。
チェロは、ヴィオラ同様にそこかしこに難所のある、このショス5、おそらく相当苦労されたと思うが、しかし、今回のチェロが進境著しい演奏をした、ということは、打ち上げの席でも、何度も賞賛されていた。
どっちが、市民オケとして価値があり、望ましいあり方なんだろうか、と、私は思う。
団員が増えないヴィオラの現状自体も、努力してもなかなか仕方がないところではあるのだが。

その上での話だが、楽しめればいい、というだけの集まりで、この先のレベルアップがないことも事実だ。
そこについて、団のコンセンサスがどこまでとれるのか。

私としては、オケの今後の方向性、ということについて、団員全員の合意ができることは困難だと思うが、それでも、団員全員が、程度の差はあってもかまわないから、「志」を持っていることは必要だと思う。
少しでも、前回よりはいい演奏を、という向上心だ。

だから、やはり、こうして寄せられる、ほめてくれるだけでない、辛口のご意見は、大切にすべきなのだと思う。
私自身、上に引用したご意見の中には、当方なりの言い分があるものもある。
しかし、そういうふうに感じられたお客さまがおられることは事実なのだから、まずはそれを受け止めるべきだと思う。
そして、それをどうするか、謙虚に考えることを、皆がしないといけない。
そのご意見をとるかとらないかは、個々の判断だが、まずはそういうご意見があることを、演奏した全員が知らなければいけない。そう思う。

全員が参加していない、打ち上げの飲みの席で回し読みするだけでなく、別の形で、全員が知るような仕組みにしないといけないのだろうと思う。

批判的な意見をもらえるようになったことをありがたいと考えるべきなのだと思う。

「志」を! そう思う。