五月場所3日目、結び前の一番でちょっと珍しい事態を観た。
霧島=藤ノ川戦。
立ち会いから激しい攻防となり、めまぐるしい動きの末に最後は向正面で霧島が左上手投げで藤ノ川を退けた。
と観えた。
ところが、取組後のリプレイの中で正面解説の琴風さんが「あ、ここで足が出てますね」と指摘。
実況の戸部アナも気づいていなかったようで、「そうですね、出てますね」と応じた。
改めて観直せば、攻防の中で霧島が正面土俵に攻め込んだ時に藤ノ川の左足が俵をまたいで蛇の目の砂を踏んでいる。
しかし藤ノ川が攻め返す形で両力士はそのまま勝負を続行し、さらに激しい動きの末に向正面で決着したような形になったわけだ。
一旦「上手投げで霧島の勝ち」の場内アナウンスがあったが、戸部アナが「決まり手の訂正があるかもしれません」と言っていたところ、やはり場内アナウンスで「上手投げで霧島の勝ちと申し上げましたが、寄り切り、寄り切って霧島の勝ち」と訂正アナウンスが流れた。
これには琴風さんが「これだとお客さんは何故上手投げでなく寄り切りになったかわかりませんねえ。アナウンスも何か説明を考えてもらわないと」と言っていた。
私も琴風さんも戸部アナも最初の時は気がつかなかったこの一番。
その時誰がどう判断すべきだったかと言えば、まずは立行司式守伊之助だろう。
ただ、土俵中央にいた行司からすれば両力士をはさんだ向こう側で土俵を割った形なので見えなかった可能性はある。
となると、勝負判定は審判となる。
ここがこの相撲の問題点だと思うのだが、藤ノ川の足が出たのは正面審判長尾上親方(理事・審判部長・元濱ノ嶋)のまさに「目の前」だった。一瞬とは言え目の前ではっきり足が出たのだから、審判としては当然手を挙げて「勝負あった」を言わなければならないわけだが、それがなかったので勝負は続行した形だ。
(他の審判からはしかとは見えなかったと思う。仮に疑問を感じたにせよ審判長が手を挙げないのだから出ていないのかと考えるのが普通だろう)
行司・審判長の見落としによって相撲が続いたが、勝負としてはどちらにせよ霧島の勝ちなので物言いがつくはずもない。
(他の審判に疑念があれば確認の物言いはつけてもよかったかもしれないが)
つまり土俵上の勝負判定としては何事もないまま終わったわけだ。
ところが、別室の決まり手係(戸部アナによると甲山親方(元大碇・藤ノ川の父)が、勝負がついたところが違い決まり手としては誤りだと判断したのだろう(独自判断かNHKの放送席の話を聞いてかわからないが)。
場内アナウンス担当の行司さんにそれが伝わり、訂正が流れたということだろう。
土俵上の勝負判定としては疑義がないまま終わり、決まり手だけが訂正された事例となったが、勝負がついた場面が大きく違うことによる訂正は珍しいのではないだろうか。
例えば下手投げの発表が下手が離れていたからとすくい投げに訂正されるような例はよく見るが。
尾上審判長はもしかしたら土俵を下がって控室に戻るまでこの一連の事態について知らずにいたのではないだろうか。それは伊之助も同様か。
物言い差し違えなら行司は黒星となるが、今回の件、審判長・行司には口頭注意くらいあるのか。
琴風さんが言われた場内アナウンスでの補足説明はどうなるだろう。元審判部長が言うことなので重みはあるが、私自身の感じ方としては勝負判定はあくまで土俵上の行司と土俵周辺の審判が行うものなので、その人たちを抜きにして勝負判定に関わる説明をつけ加えるのは不適切な気がする。
決まり手係の仕事として、決まり手そのものだけの訂正をアナウンスしたという今日の対応が結局は妥当ではなかったかと考える。
明日の新聞、一般紙はともかくスポーツ紙にはこの件、とりあげられるかな。