naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

リッカルド・ムーティ=シカゴ交響楽団来日公演

19日(火)、東京文化会館で行われた、シカゴ交響楽団の演奏会を聴いた。指揮は、リッカルド・ムーティ

これまでに聴いた、数多くのオーケストラ演奏会の中でも、飛び抜けてすばらしいものだった。

2012年にアメリカに旅行した際、カーネギーホールで、このコンビによるオルフの「カルミナ・ブラーナ」を聴いた。

今回の来日公演の情報を得て、妻が行きたいと言うので、前売チケットの予約を試みた。

希望は、18日(月)の、ベートーヴェン5番、マーラー1番の2曲プロの公演だったが、こちらはあいにく一般発売早々に完売してしまった。

19日の、もう1公演の方は、残席があり、6月に浦安オケで演奏するチャイコフスキーの4番がメインでもあるので、こちらを購入した次第。

日 時 2016年1月19日(火) 18:30開場 19:00開演
会 場 東京文化会館大ホール
指 揮 リッカルド・ムーティ
管弦楽 シカゴ交響楽団
曲 目 プロコフィエフ 交響曲第1番ニ長調「古典交響曲
     ヒンデミット 弦楽と金管のための協奏音楽
     チャイコフスキー 交響曲第4番ヘ短調
     (アンコール なし)

入場口のポスター。
イメージ 1


プログラム冊子の表紙。
イメージ 2


シカゴ響の音楽監督を務めるムーティも、今や74歳の巨匠。私が初めて彼の名前を知ったのは、1975年春のウィーン・フィルの来日公演だった。この時は、カール・ベームムーティの2人が指揮者として来日した。

私のみならず、クラシックファンの関心はもっぱらベームの方にあり、ムーティ知名度はさほどではなかったように記憶する。

ただ、その来日と前後して、ヴェルディの「アイーダ」の全曲盤がリリースされ、大変な評判になった。これらを機に、ムーティは、気鋭の新進指揮者として急速に認知されていく。

今回、我々の席は、2階L3列の11番、12番(A席)。

会場に入ると、既に多くの楽員がステージで音を出していた。

弦は、チェロが外に出る配置。

最初は、プロコフィエフの古典交響曲。12型だったと思う。

実にすばらしい演奏だった。しゃきっとした響きで、非常にメリハリが効いた演奏。個々のパートの存在感を強く感じさせられた。

鮮やか、の一言。

このコンビで、モーツァルトを聴いてみたい、と思った。

舞台転換が行われて、2曲目はヒンデミット

この曲のみならず、ヒンデミットという作曲家の作品には、ほとんどなじみがない。

テイストとしては、私がしばしば聴く近現代の音楽で言うと、バルトークを想起した。

金管の音を聴いていて、次のチャイコフスキーが楽しみだ、と思った。

プロコフィエフヒンデミットと聴いていて、シカゴ響というオーケストラは、どんな音楽も「全然大変そうでなく」演奏するんだな、と思った。

外来オケで、楽員が身体を激しく動かしながら情熱的に演奏するのをしばしば見るが、そういうところがまったくない。

市民オケとして、日頃、指導者から言われるのは、「客席からすごく大変そうに見えるような弾き方だ」ということ。昨秋演奏した、サン=サーンスの3番の時にも、「大変なのはわかるが、全然大変そうでないような感じで弾きましょう」と言われたのをおぼえている。

シカゴ響を見ていると、終始余裕を感じさせられる。何と言うのか、スピードを出そうと思えば、時速200kmでも走れる車が、時速50kmで走っているような感じ。

休憩時に、きっと、チャイコフスキーも、みんな涼しい顔をして、汗一つかかないような感じで演奏するんじゃないか、と妻と話した。

そして、休憩後、いよいよ、メインのチャイコフスキー

16型の編成だったと思う。面白いと思ったのは、通常トロンボーンの右手に座るチューバが、3人のトロンボーン奏者の後ろに座っていたことだ。私は、こういう形は初めて見る。

プログラム冊子に載っていた舞台写真。こんな感じでした。
イメージ 3


1楽章。思ったよりもテンポの緩急の変化が大きかった。

2楽章。冒頭しばらく、ヴァイオリンとヴィオラは弓を置いて演奏した。

この2楽章を聴いていて、こういう演奏をしてもらったら、チャイコフスキーも幸せだろうな、と思った。

ちょっとした装飾やあいの手が、ものすごく効果的に聞こえるのだ。また、このメロディはクラリネット、このメロディはファゴット、とその楽器を選んだ必然性も強く感じさせられる。

チャイコフスキーが、何故こういうふうに書いたかがわかる気がするのだ。

作曲者自身が聴いたら喜んだだろう、とつくづく思った。

3楽章。ピツィカートに終始する弦セクションは、今、自分でも弾いていて、もやもやした音楽になりかねないと思うが、どういう音楽なのかが、くっきりとわかる。すばらしい。

4楽章。期待にたがわぬ燦然たる演奏だった。

そして、予想通り、余力充分といった感じで進んでいった。

そんな中、曲の大詰めのコーダは、最後の最後、もっと腹の底に響くようなすごみを聴かせてくれるのでは、と思ったが、そうではなく、わめくことのないまま終わったという印象。

やや物足りない感じも残った。妻によると、指揮者がアクセルを踏むのが少し遅かったのではないかとのこと。

メインのチャイコフスキーを聴いて、改めて、シカゴ響というオーケストラの美点について考えた。

このオーケストラは、「全員が上手い」!

すべてのパートが、「その楽器の一番いい音」を出している。

かつ、「特定のパートが突出する」ことが、まったくない。

そういう中、このチャイコフスキーで言うなら、私にはホルンが特にすばらしい音を出していたように感じられた。

この曲を、5ヶ月後に、自分たちのオケでやるのか・・・と思った(笑)。また、今は、練習し始めてまだ日が浅いが、もう少し弾き込んでからこの実演を聴けたら、もっとよかったのに、とも思った。

アンコールはなかった。21時過ぎ終演。

ということで、冒頭に書いたように、これまで聴いたオーケストラ演奏会の中でも屈指のものが聴けた、と実感したが、それだけに、前日の、ベートーヴェン5番、マーラー1番もどれほどすばらしかっただろう、と思わずにいられなかった。

チケットを入手できなかったのが、悔やまれる。

※過去の関連記事
    アメリカ旅行(10月3日(水))  カーネギーホール
       http://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/63344712.html
    アメリカ旅行(10月3日(水))  カーネギーホールに入場     
       http://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/63344719.html
    アメリカ旅行(10月3日(水))  天井桟敷。眠かった・・・
       http://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/63344730.html
    アメリカ旅行(10月3日(水))  スタンディングオベーション
       http://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/63344735.html
    ムーティシカゴ交響楽団来日公演
       http://blogs.yahoo.co.jp/naokichivla/65032045.html