naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

9月29日の出来事の中では

9月29日(水)は、自由民主党総裁選挙で岸田文雄氏が当選したことが世間的には一番のニュースだったと思うが、私個人にとってもっと大きかったのは、さいとう・たかを氏の訃報である。

 

84歳と高齢になられてはいたが、「ビッグコミック」での「ゴルゴ13」はいまだ連載中だし、つい最近も同誌でインタビュー記事を見た記憶がある。

 

私がさいとう氏の作品に最初にふれたのは、007シリーズの「サンダーボール作戦」の単行本だった。

(「サンダーボール作戦」という物語も、この漫画で知った。映画はずいぶん後になってから観た)

 

その後、「日本沈没」、「サバイバル」などを読んだ。もちろん、「ゴルゴ13」も連載開始からではないが、ある時期から今日まで読み続けている。

 

今回の訃報を知って、瞬間思ったのは、ご本人が「内容は以前から決めている」と言っておられた「ゴルゴ13」の最終回は、これで日の目を見ないのだろうか、ということだ。

 

報じられているところでは、さいとう氏逝去後も、制作スタッフの手により連載が続くとのこと。はたして制作スタッフには、その最終回のアイディアは伝わっているのだろうか。注目される。

 

また、この日、もう一つ私の目を引いたニュースは、橋幸夫の引退意向についてのものだ。

 

声の衰えなどから2年後の80歳の誕生日をもって引退することを決めた、とのこと。

 

ほんの数日前に、BSの番組に出演していたのを観たばかりだったが、そうした決断が下されるとは、残念に思う。

 

橋幸夫という人は、格別好きな歌手というわけではないが、私が物心ついた頃に、「潮来笠」でデビューし、母が毎日つけっぱなしにしていたラジオから聞こえてくる歌声にすぐなじんだ。

 

私の音楽鑑賞歴は子供の頃からの歌謡曲がスタートだ(クラシック音楽に興味を持ったのは、高校に入学してから)。

私が歌謡曲少年になったきっかけを作った一人が橋幸夫であることは間違いない(もちろん、舟木一夫西郷輝彦、三田明なども)。

 

橋幸夫は、いわゆる王道の歌謡曲だけでなく、「恋のメキシカン・ロック」などのポップス(当時は「リズム歌謡」と言っていただろうか)もこなす守備範囲の広さが新しかったと記憶する。

(どんな曲でも歌えるという点では、ジャズのアルバムまで出した美空ひばりが筆頭だと思うが)

 

ずいぶん昔に買った(まだ昭和の頃?)と思われるベストアルバムがあるので、近い内に聴いてみよう。

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あんまりだぞ、スポニチ

今日のスポニチ

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一面は小室(圭)さん。

そして、白鵬引退は何と裏一面!

あんまりだぞ、スポニチ

あんまりじゃないか。

これはないよ、ほんとに。



ところで、白鵬横綱勝利数が899勝。惜しかった。来場所出場して1勝くらいできただろうに。それをよしとしなかったのか、それすら無理だったのか。

柏戸の幕内勝利数599勝を思い出した。

お彼岸帰省

今日26日(日)は、妻と木更津に帰った。

 

まず、母の実家を尋ねた。従弟夫妻が迎えてくれた。

先日亡くなった叔母に線香を上げさせてもらった。

 

次に菩提寺へ。

境内、寺務所の近くには彼岸花が咲いている。

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住職に挨拶した後、父母の墓へ。

 

菩提寺を出て、母の実家の菩提寺に向かった。

先祖代々の墓をお参りした。叔母はまだ納骨されていないが、戒名は墓石に彫られていた。

 

昼食は、宝家(たからや)で。木更津を代表する名店である。

 

私は、あさり御膳。メイン料理は、あさりのかき揚げ、あさりの串揚げ、刺身、天ぷらが選べるが、あさりのかき揚げにした。

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かき揚げはあまりに大きくて完食できず。

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妻は、あさりカレーと海老フライの定食。

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鰺のなめろうも注文した。

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アルコールの提供がないので、オールフリーを飲んだが、つまらないね。

 

店を出て、実家に移動。

 

楽器を持ってきて、少し個人練習。

 

10月8日(金)~10日(日)のマウントあさまのワークショップに向けて、課題曲、ブルックナーの9番をまずさらった。4番、7番、8番は弾いたことがあるが、9番は初めてだ。

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ブルックナー臨時記号の嵐。分散和音の嵐。

大変だが、皆さんと合わせるのが楽しみだ。ワークショップに参加するのは3年ぶり。

 

その後、10月31日(日)に東京公演の本番が行われる宇奈月オペラ、「ドン・ジョヴァンニ」の第1幕を練習した。

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練習を切り上げて実家を後にして帰る途中、残念な光景を目にした。

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しばしば利用していた、大番(おおばん)という居酒屋が入っていたビルが解体されている。

えー?

いい店だっただけに、残念だ。

どこかに移転して営業してくれているといいのだが。

浦安オケ再始動間近

昨25日(土)、浦安オケのT団長から団内のメーリングリストにメールが流れた。

 

浦安オケは、緊急事態宣言が出た後、8月から練習ができない状態にあり、そのため、11月28日(日)に予定していた定期演奏会は、もともと練習していた曲目(イタリアオペラアリア集、カリンニコフの交響曲第1番他)を仕上げるのは難しいとの判断から、その曲目での演奏会は2023年春に延期することが決まっていた。

 

11月28日は、短期間でも取り組める別の曲目での開催を模索するが、すべては緊急事態宣言の趨勢次第、ということになっていた。

 

   浦安オケ11月の定期演奏会の予定曲目延期
      https://naokichivla.hatenablog.com/entry/2021/08/22/185231

 

またその後、曲目が変わる定期演奏会に参加するかどうかのアンケートがとられた。

そして、参加予定者による編成を前提に、代わりの演奏曲目の希望も募集された。

その結果、3つのプログラム案が編成され、昨25日、T団長からのメールに先立ち、インペクから、どの案を希望するか、アンケートが開始された。

 

オケでの演奏曲の他、有志のアンサンブルを募り、これも併せての演奏会とすることとなった。昨年12月の定期演奏会と同じ方式である。

 

プログラム案アンケートの少し後に配信されたT団長からのメールは、現在の緊急事態宣言の期限である9月末が近づいてきたことから、10月以降の活動について、現時点での方針を伝えるものだった。

 

・9月末での規制解除が想定される。10月の早い段階で練習が再開できると予想。

・インペクからのプログラム案アンケートの結果により、オケ曲を決める。どの案も1時間程度。通常の演奏会の規模ではない。プログラム外で有志アンサンブルの演奏も行う。

・今回の定期演奏会の、団内の位置づけは、正常化へのトライアルコンサート。

・目的は、通常演奏会へのアンサンブル維持向上、定期演奏会の持続。

・来場客は団員による招待のみとする。枚数は市の規制による。

・練習再開については、市の今後の判断を待ち、演奏会が可能と判断できれば指揮者とトレーナーの確保に動く。

 

9月末での緊急事態宣言等の全国的な解除の可能性が報道されている。

浦安市の動きが迅速であれば、早期の練習再開が可能だろう。

いずれにせよ、2ヶ月足らずの期間しかないが、団長から目的として示された、アンサンブルの維持向上、定期演奏会を続けた、という実績は実現に向かう。

 

私自身は11月の定期演奏会降り番予定としており、今回、曲目等内容が変更があっても乗り番に転ずる考えはない。

 

でも、2ヶ月も練習ができずにいたオケ仲間が、おそらく近く再開できそうなこと、また当初とは異なる規模や内容であっても、定期演奏会を目標にできるであろうことを大変喜ばしく思う。

 

来年春の定期演奏会では復帰するつもりである。

夏休みの宿題さながらの日々

A社(西新宿)、B社(三軒茶屋)の2社で監査役を務めている。

 

両社とも、全国各地に展開されている事業所をまわって監査を行い、報告書にまとめて経営に報告するパターンだ。

 

A社は同僚の監査役と2人で動く。B社は私1人だ。

従事日数としては、A社:B社=2:1を目安にしている。

 

年度初めに年間スケジュールを立てる。A社のまとまった監査出張が終わったら、B社の出張を入れる、といった具合である。基本的には余裕がない。

 

今月は、A社の監査がひと区切りしてやや日程が空くので、そこを利用して、B社の監査報告をまとめようというのが、当初のもくろみだった。

 

毎月1日に、社長を始めとする幹部が集まる会議があるのだが、9月1日(水)の席上で、来月、10月1日(金)の会議で、上期分の報告をします、と宣言した。

幹部側から求められてではなく、当方からアポイントをとった形である。

 

ところが。

 

A社で、スケジュールにのっとって進めている監査外での業務対応が発生した。

これは突発的な事態で、まったくの予定外。

とは言え、監査役としての対応が必要な内容であり、もちろん脇に置くわけにはいかない。

同僚の監査役と共に対応にあたったのだが、相当な時間を費やすことになり、B社業務の方がもくろみ通りに進まない。

 

月半ばにさしかかってさすがに焦りが出始め、個々の業務の細かい処理スケジュールを再考した。A社同僚の監査役にも事情を説明して協議した。

 

もとよりA社には年間の3分の2の従事にとどまる中、通常の予定以外の業務が加わるのはきついことではある。

 

残業してでも処理すべきであるのは当然仕事の基本だが、現在の2社はいずれも片道2時間内外の通勤。60代後半に入った身としては、残業をしないことを基本とせざるを得ないのも実情である。

 

そんなこんなを洗い直しての今週。

月曜日、木曜日が祝日というシルバーウィーク、週休4日の週ではあったが、もちろんそれどころではないので、まず20日(月)の方は在宅勤務(通勤時間節約)でA社業務を進め、今日25日(土)は、B社業務を同じく在宅勤務で進めた。

 

これで来週前半は、B社の監査報告に没頭することになる。

会議での報告(説明)は10月1日(金)だが、その2日前、29日(水)の昼過ぎには出席者宛に報告書をメールで事前送付するのが目標である(同日午後はA社に移動して執務予定)。

27日(月)、28日(火)の2日間の在宅勤務で目鼻をつける必要がある。通勤のない分、この2日間はある程度長時間の業務になることを覚悟している。

 

それにしても、月が変わる1日を意識しつつ、今日は24日、今日は25日、とその日が迫ってくるカウントダウンにテンパってくるというのは、まさしく夏休みの宿題の追い込みさながらの状況である。

 

こんなの久しぶりだなあ。

 

さあ、終わるか?

 

そう言えば、中学校の時だったか、数学の問題集が終わらなかったことがあったっけ。

須藤三千代先生~やっとお名前がわかった

19日(日)、東京フィルの演奏会を聴きに言った。

 

団の公式サイトに、チョン・ミョンフンブラームス全曲チクルスにあたって、各パートの首席奏者がブラームスのシンフォニーや指揮者について語るインタビュー記事が載った。

 

その中に、ヴィオラの首席奏者、須藤三千代先生もおられた。
写真入りのインタビューを見て、そうか、須藤三千代さんとおっしゃったんだ、とやっと多年の懸案が解決した思いだった。

 

ヴィオラ首席奏者 須藤三千代が語る チョン・ミョンフン指揮「ブラームス 交響曲の全て

www.tpo.or.jp

 

須藤先生には、昔、短期間だがワークショップのレッスンを受けたことがあったのだ。

 

1990年代の後半だったと思う。

 

当時、千葉市と東京フィルの間には提携関係があり、千葉市での演奏会を始めとする活動が行われていた。

その一環として、市内のアマチュア奏者を集めてのワークショップが複数回行われた。

私も応募して参加した。

 

1回目は、弦楽器だけのワークショップで、モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」を勉強した。

当時のコンマス、荒井英治さん以下、東京フィルの団員の方々が講師としておいでになり、千葉市文化センターでの何回かの練習を経て、館内のアートホールで発表演奏を行うというものだった。

 

翌年だったか、次に行われた2回目は、管楽器も入ったオーケストラのワークショップとして募集され、モーツァルトの35番、「ハフナー」を勉強した。

 

どちらの回だったか忘れたが、ある日の練習で、弦各パートで別々の小さな部屋に分かれての分奏が行われ、その時の指導が須藤先生だった。

 

ヴィオラは5~6人で指導を受けたのだったか。


1人ずつで弾かされる場面があり、緊張しながら弾き終えた時、先生が、「よく弾けてらっしゃる(ので、こうすればもっとよくなる)」といったことをおっしゃった。

 

会社の仕事でも、上司にひどく叱られたことは何十年経っても忘れられないものだが、反対に(珍しく)褒められたことも忘れない。

 

この分奏での須藤先生からの言葉がまさにそれで、「ので、こうすれば・・・」の内容が何だったのかはすっかり忘れてしまった(すみません・・・)のだが、プロのヴィオラ奏者がアマチュアの自分に対して「よく弾けてらっしゃる」と言って下さった前段の部分は、おそらく20年以上経つであろう今も、鮮明に覚えているのだ。

 

ワークショップは、以後3回目が確か募集されたと思うが、私は参加していない。

 

ところで、天にも昇る思いにさせて下さった先生のお名前を、うかつにも私はその後失念してしまったのだった。

 

お顔は覚えていたので、その後、東京フィルが演奏会やテレビで演奏するのを観る時に、ヴィオラパートに先生の姿が確認できることはしばしばだった。
例えば昨年の紅白歌合戦でも、トップに座っておられた。

 

あ、ワークショップの先生。何と言うお名前だったっけ、とそのたびに思うのだが、思い出せない。

 

やっとやっと、今回のインタビュー記事で、「須藤先生(だったんだ)!」とわかったのだった。

 

19日のブラームスの演奏会では、須田祥子さんがトップ、須藤先生がトップサイドというシフトだった。

 

もう忘れないぞ。

 

須藤先生、また聴きにうかがいます。

東京フィルハーモニー交響楽団 第959回オーチャード定期演奏会

19日(日)、オーチャードホールで行われた東京フィルハーモニー交響楽団の演奏会に行ってきた。

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渋谷駅からホールに向かう。
毎日テレビのニュースで観るスクランブル交差点。
これで緊急事態宣言下なのかと思うような人出だ。
その人出の一人として渡った。

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東京フィルハーモニー交響楽団 第959回オーチャード定期演奏会

日 時 2021年9月19日(日) 14:15開場 15:00開演
会 場 Bunkamuraオーチャードホール
指 揮 チョン・ミョンフン
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団
曲 目 ブラームス 交響曲第3番ヘ長調
    ブラームス 交響曲第4番ホ短調
    [アンコール] ブラームス ハンガリー舞曲第1番ト短調

 

ブラームスのシンフォニーの2曲プロである。

 

全曲チクルスであり、7月に1番と2番が演奏されているが、何故この時は行かなかったんだろう。
振り返ってみると、この時期、父の十三回忌と、神戸で葉加瀬太郎のコンサートを聴く予定(コロナで8月に延期)があったので見送ったのだったか。

 

私の席は3階L8列3番。

 

このコンビの演奏を聴くのは2回目。前回は、昨年2月、サントリーホールで行われた「カルメン」の演奏会形式上演だった。

 

ヴィオラは外配置。弦の譜面台はプルトに1台。
下手が見切れているのでわからないが、14型か。
楽員はマスクを着けて入場したが、着席すると全員が外した。
ヴィオラのトップは須田祥子さん、トップサイドは須藤三千代先生。

 

私の席からだと、前の人の頭がちょうどヴィオラの1プルトと指揮者にかぶる。
休憩時、左に座っていた2人連れが別の席に移動したので、8列1番に座らせてもらった。これだと大丈夫。

 

3番。

 

チョン・ミョンフンは、ステージに登場して客席に一礼、振り返るとすぐに降り始めた。カルロス・クライバーのようだった。

 

1楽章と2楽章の間に長い間が置かれたが、その他の楽章間はほとんどアタッカだった。

 

オーケストラをたっぷり鳴らしたスケールの大きいブラームスだった。

 

ところで、ブラームスの3番という曲。

 

4曲の中でなじむのが一番遅かったのが、この曲である。
高校時代に最初にレコードを買ったのが、ご多分に漏れず1番。
大学オケで2年生になる直前の演奏旅行のメインが2番だったこともあり、2番を一番聴きまくった。
フルトヴェングラーやバルビローリで全曲を揃えていて、3番も聴いていなかったわけではないが、本格的に私の視野に入ってきたのは1976年、大学3年の秋に新譜としてリリースされたケンペ=ミュンヘン・フィルのレコードを買ったあたりからだ。

 

それでも、4曲中では一番地味な曲という印象で、その後もなじみ薄いままに過ぎてきたのだが、4曲ひと通りの演奏経験も積み、年齢を重ねる中、思いが変わってきた。
今現在では、4曲の中で一番好きなのはこの3番だ。

 

第2楽章の滋味を何と形容したらいいだろう。
(エルガーの弦楽セレナーデの第2楽章を思い出す。共通点を感じる)

 

その第2楽章を始め、この3番は、全曲にわたって誠にブラームスの練達のペン、という他はない。
特にトロンボーンの使い方にそれを感じる。トロンボーンと言うと、例えばドヴォルザークの「新世界」などのように威勢良くブカブカと鳴らしまくる場面を想起するが、このブラームスの3番での控えめな使い方は実に個性的で味わい深いと思う。

 

第4楽章のコーダ、Pからのメロディが同じ楽章の練習記号Aから発したものであることは以前から理解していたが、今回の演奏を聴いて、第2楽章の56小節目以降、あるいは練習記号Gのエコーでもあると感じた。

 

ブラームスのシンフォニーはどの曲もそうだが、クラリネットヴィオラがほんとに魅力的だね。
なのに、曲が終わってから、指揮者が立たせたのはホルンとオーボエのトップだけだった。あの第2楽章のすばらしかったクラを立たせないのは何故?

 

休憩後の4番。

 

チョン・ミョンフンは、今度は第1楽章を始める前に長い間をとった。
全員の意識が一点に集中したところで始めたという感じだった。

 

うねる音楽。オケ全体で呼吸をしているようだった。

 

私の場合、ブラームスの4曲の中では、この4番には聴くのも弾くのも一番苦手意識があるのだが、こういう演奏を聴いていると、ああまた4番を弾きたい、いや、何番でもいいからブラームスのシンフォニーを弾きたい、という気持ちに突き動かされる。

 

第2楽章。木管がいいのはブラームスのシンフォニーすべてに言えることだが、この4番の第2楽章の前半は特にすばらしい。

 

88小節目からの弦セクションの響きの深さにも圧倒された。すごみのある響きではない。深い深い音だった。

 

第3楽章のトライアングルは、ブラームスのシンフォニーで、ティンパニ以外に使われる唯一の打楽器である。
普通、トライアングルが使われるのは、賑やかに打楽器群が活躍する場面が多いが、3番でのトロンボーン同様、ブラームスの使い方は独特だ。どうしてもトライアングルだけが、どうしてもここでだけほしかったのだろう。
ヴィオラの須藤先生が、演奏会に向けてのインタビューで、宗教画の上の方で音楽を奏でている天使のイメージと言われていたが、なるほどと思った。

 

チョン・ミョンフンの指揮は、個々のパートを細かく拾うように指示をすることがない。オケ全体を自分が目指す方向に動かしていこうとしているように見える。

 

決めどころでのティンパニに快感を与えられた。4番には少々うるさかったかもしれないが、1番、2番ではさぞかし効果的だっただろうと思った。

 

曲尾のヘミオラが、3番冒頭のヘミオラのエコーのように聞こえた。

 

3番、4番、どちらも充実しきった演奏だった。

 

カーテンコール。
チョン・ミョンフンがステージ前方、客席の方へ向かって行ったので、前列に知り合いでもいるのかと思ったら、そこから向き直ってオケに拍手を送った。

 

何度目かのカーテンコールで、指揮者が出てきて指揮台に向かうところで楽員が楽器を構えたので、何かやるなと思った瞬間、ハンガリー舞曲の1番が始まった。

ブラームス・プロのアンコールとしては、ありがちな選曲。ああ、これか、と思った次の瞬間、冒頭部分の弦の深い響きに驚かされた。
以後のテンポの緩急、強弱の波、この曲のこんなに自在な演奏は聴いたことがない。誠にお見事という他はなかった。

 

その後、指揮者が弦の各パート1プルトの奏者と握手。今どきは肘タッチが普通だが、握手だった。

 

楽員が一旦ステージからはけた後、規制退場を指示するアナウンスを無視するように拍手が続き、チョン・ミョンフンだけでなく楽員も再度出てきて客席に向かって一礼。

 

すばらしい演奏会だった。7月の1番、2番に行けなかったのが悔やまれる。

SOUND ALIVE presents 横浜合同演奏会2021

18日(土)は、午後、東京交響楽団の演奏会(ミューザ川崎)、夕方、横浜合同演奏会(パシフィコ横浜)と、神奈川県での演奏会をハシゴする予定だった(川崎は1人で、横浜は妻と)。

 

ところが、折からの台風14号の接近。

誠にあいにくなことに、この18日に関東に接近、大荒れの天候になるとの予報。

朝、台風情報を確認し、まず、ミューザ川崎に行くのは見送ることにした。

パシフィコ横浜については、さらに台風の状況を見た上で最終判断することに決めた。

 

   演奏会ハシゴ予定のところ誠にあいにくな台風接近
      https://naokichivla.hatenablog.com/entry/2021/09/18/104842

 

そして午後、最後の検討となった。まず、主催者のサイトで、演奏会が予定通り行われることを確認。次に台風情報、交通情報をチェック。

この時点で、千葉は雨がほとんど降っていない。もうしばらくすれば晴れるのではないかという感じさえある。風もない。
しかし、これから向かう神奈川が夜にかけてどうか、だ。

帰りの足などのリスク、あるいは気持ちの面でどうか。妻とあれこれ話し合った。話の方向は少なからず揺れたが、最終的に私だけが聴きに行くことに決めた。

 

出かける。外に出たらすでに日が差し始めていた。

京葉線りんかい線京浜東北線を乗り継いで横浜へ行き、さらにみなとみらい線に乗り換えた。

17:00、みなとみらい駅に到着。さあパシフィコ横浜へ。
曇り空で雨は降っていない。風もない。

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パシフィコ横浜にコンサートを聴きに来るのは一体いつ以来だろうか。
たぶん、1997年12月に、小田(和正)さんのツアー、「THRU THE WINDOW」で来たのが最後ではないかと思う。24年ぶりか。

 

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入場。

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●SOUND ALIVE presents 横浜合同演奏会2021

日 時 2021年9月18日(土) 16:00開場 17:30開演
会 場 パシフィコ横浜国立大ホール
出 演 小田 和正
    清水 翔太
    根本  要
    Ms.OOJA
    矢井田 瞳
    バンド 稲葉 政裕 (ギター)
        木村 万作 (ドラムス)
        栗尾 直樹 (キーボード)
        有賀 啓雄 (ベース)
        金原千恵子カルテット
           金原 千恵子 (ヴァイオリン)
           吉田 翔平  (ヴァイオリン)
           徳高 真奈美 (ヴィオラ)
           堀沢 真己  (チェロ)

 

小田さんの公式サイトによると、「SOUND ALIVE」というのは、「2006年にFAR EAST CLUB BANDをホストに据え、主にギタリストを中心に始まったイベント」なのだそうだ。
※FAR EAST CLUB BANDは、小田さんのツアーのバンドである。最近のツアーではこのバンド名はクレジットされていない。

 

上記のバンドメンバー8人は、ここ最近の小田さんのツアーのバンド、フルメンバーである(2006年以降今日までにメンバーの変遷あり)。このバンドが、小田さん以外のアーティストのバックも務めた。
ステージ上では、ツアーで見慣れたいつもの並び方だった。

 

小田さん以外のアーティストは全員、生で聴くのは初めてである。
クリスマスの約束」の常連である(根本)要さんはもちろんだが、他のアーティストも、全員が何らかの形で小田さんとのコラボレーション実績がある。

 

17:20頃着席。

 

我々の席は、2階C-14列81番、82番。2階のかなり上方の列の一番右端の2席だった。その内81番に座った。

 

定刻5分遅れで開演。

 

ギターの稲葉さんが司会進行。思ってみれば、稲葉さんの声を聞くのは初めてだ。

まずバンドメンバー4人を紹介。開演時点では弦の4人は登場しなかった。

 

バンドが演奏を始め、しばらくしたところで、稲葉さんが最初のゲスト、要さんを呼び込んだ。

バンドの演奏に要さんが加わる形で1曲演奏。

要さんと稲葉さんのやりとりの形のMCとなった。

要さんから、この日のコンサートのコンセプトの説明があった。各アーティストのオリジナル曲だけでなく、自分のルーツとなった音楽、影響を受けた音楽、好きな曲などをカバーする趣向なのだそうだ。

 

そんな説明の後、要さんとしては、弦の演奏で1曲歌いたい、ということで、弦の4人が呼び込まれた。

弦と栗尾さんのキーボードで、「今夜だけきっと」という曲が歌われた。弦は、演奏が終わるとステージからはける。以後も同様だった。

 

以後、コンサートは続いて行ったが、まずはセットリストを記しておく。登場順である。

歌う前後に曲名を言ってくれるアーティストばかりではなく、言っても洋楽の場合、アーティスト名や曲名に疎いので、書き留められなかったものもある。
日本語の歌についても、小田さん以外のアーティストには知らない曲が多かった。歌詞の一部をメモして帰り、ネット検索して調べた。洋楽情報も同様である。

そんなセットリストなので、不完全ではあるが、以下の通りである。

 

   根本 要

      ジェシカ <オールマン・ブラザーズ・バンド
     ○今夜だけきっと <スターダスト☆レビュー
      微熱少年 <鈴木 茂>
      ベル・ボトム・ブルース

         <エリック・クラプトン(デレク・アンド・ザ・ドミノス)>
      いとしのレイラ

         <エリック・クラプトン(デレク・アンド・ザ・ドミノス)>
      夢伝説 <スターダスト☆レビュー

   Ms.OOJA

     ○真夜中のドア〜stay with me <松原みき

        ※弦編曲:有賀啓雄
      あなたが決めた今日なら <Ms.OOJA>
      星降る夜に <Ms.OOJA>
      (曲名不詳) <アレサ・フランクリン> ←アーティスト名誤り(下記)
      Be... <Ms.OOJA>
      鐘が鳴る <Ms.OOJA>

   矢井田瞳

      (曲名不詳)
     ○ハンド・イン・マイ・ポケット <アラニス・モリセット
     ○Over The Distance <矢井田瞳

        ※弦編曲:栗尾直樹
      Nothing Compares 2 U(たぶん)

         <プリンス>←アーティスト名誤り(下記)
      ずっとそばで見守っているよ <矢井田瞳

   金原千恵子カルテット

      Jumpin’ Jack Flash <ローリング・ストーンズ

   清水翔太

      Feel Good <清水翔太
      (曲名不詳)
      花束のかわりにメロディーを <清水翔太
      your song <清水翔太
     ○恋唄 <清水翔太

   小田和正

      my home town <小田和正
      Let It Be <ザ・ビートルズ
     ○たしかなこと <小田和正
     ○ラブ・ストーリーは突然に <小田和正
     ○Yes-No <小田和正
     ○今日もどこかで <小田和正

   バンド

      雨はいつか <センチメンタル・シティ・ロマンス>

 

   <>は、オリジナルアーティスト。

   ○は弦が加わった曲(記憶違いがあるかもしれない)。

 

要さんのステージでは、ギターが印象的だった。スターダスト☆レビューのライブは行ったことがなく、テレビでも「クリスマスの約束」で観る程度だが、エリック・クラプトンのナンバーでエレキギターを弾きまくる根本要、というのは初めて見た。

 

アーティストが替わる時にはステージが暗転して、ステージ中央部分の転換が行われる。曲間に飲む水のボトルや楽器が置かれる。その間、稲葉さんがMCでつないだりする。

 

2番目はMs.OOJA。

 

オフコース・クラシックス」のアルバムやコンサートに参加しているが、小田さん本人と一緒のステージは初めてとのことだ。

 

とても歌唱力のある人で、聴かせてくれた。

 

今年がメジャーデビュー10周年。それを記念して2月から9月まで毎月新曲を配信してきたとのこと。10月にアルバムリリース、来年3月には日本武道館での公演も予定しているそうだ。

 

続いて矢井田瞳

 

最初に歌われたアップテンポの曲は、日本語だったのでたぶんオリジナル曲だと思うが、わからなかった。歌詞もメモできず。

 

この人の歌をじっくり聴くのは初めてだが、テイストとしては沖縄の民謡歌手という感じがする。

 

3曲目に歌った曲は、原曲がプリンスで、シンディ・ローパーがカバーしたバージョンで歌う、とのことだった。漏れ聞こえた曲名からのネット調べでは「Nothing Compares 2 U」という曲のようだが、自信なし。

 

稲葉さんから「次は弦だけで」と紹介されて、弦の4人が登場して演奏した。バルトーク弦楽四重奏のようなダイナミックでアグレッシブな曲だった。とても聴きごたえがあった。

演奏後、稲葉さんのMCでローリング・ストーンズのナンバーだと知った。

 

清水翔太

 

2曲目は英語の歌だったが、MCでの紹介がなかったし、歌詞をメモできる英語力もないのでお手上げ。

 

休憩なしに次々アーティストが出てくるので、客席側では随時席を立ってトイレに行く人が目についてきた。

 

それにしても清水翔太という人は歌がうまい! 久保田利伸を思わせるソウル系のヴォーカルだ。

 

この人で特に感じたのは、言葉がクリアなことだ。思えばMs.OOJAもそうだった。この2人の歌う言葉の明晰さは特筆すべきものだった。同じPAシステムを使っているのだから、歌唱の仕方によるものなのだろう。

 

さて、清水翔太のステージが終わったのが20:05。

 

5人のアーティストがとういう順番で出てくるんだろう、まあやっぱり小田さんがトリだろうか、などと思いながら聴き始めたのだが、案の定で、残るは小田さんだけ。

 

小田さんのステージは、2019年6月に、目下のところ最後のツアーとなっている、「ENCORE!! ENCORE!!」の最終日(映像ソフトとして市販)に、さいたまスーパーアリーナへ行って以来である。

 

2年3ヶ月ぶりの生・小田和正を聴くためにこのコンサートに、台風のさなか、やってきたのだが、清水翔太がはけ、転換が行われている、この時間に、急にドキドキしてきた。

 

いよいよ、ほんとに出てくるんだよね、小田さん?

 

もちろんこの間、この夏の各地のフェスを始め、色々なところで演奏してきているわけで、小田和正のライブパフォーマンス自体が2年3ヶ月ぶりということではない。
しかし、私にとっては、雨だったあのさいたまスーパーアリーナ以来。

 

稲葉さんが「呼び捨てにしろ、って言われてるんですよ。困るんですが」と、客席の笑いをとる。
そしてその通りに「小田和正!」。

 

出てまいりました、小田和正

やっぱり少し歳とられましたかね。そんな印象だった。

 

ステージ中央に置かれたキーボードの前に座った。ツアーならグランドピアノだが、さすがに違うんだ。

 

最初の曲は? と固唾を呑んで待ったら、いきなりのMC。

横浜の話だった。

   横浜で一番の繁華街と言えば桜木町、それを追うように横浜駅西口が

   栄え、それに比べて東口はぱっとしないままだったが、このみなとみ

   らい21ができて一変した。

ここまでの話を聞いて、1曲目が何かは見当がついた。

さらに話は続く。

   自分にとっての一番のインパクトは、高校の時に根岸線ができたこと

   だった。←ほらね。
   それまでなかったところに線路が敷かれて行くことはなかなか見られ

   るものではない。楽しみにしていた根岸線が開通し、これに乗って通

   学するようになった。新しい路線の車窓から見る横浜の街はそれまで

   と違って見えた。

 

そんな話から、始まったのは、やはり「my home town」。
近年、私はこの曲を聴くと、自分の生まれ故郷である木更津を思い出す。先日、木更津で叔母が亡くなったところでもあり、今回も木更津を思いながら聴いた。
この曲はフルコーラスではなかった。いつもだと弾き語りからバンドのトゥッティに移行するが、その前で終わった。

 

間を空けずに「Let It Be」。バンドはビートルズのオリジナルに忠実な演奏だった。

 

曲間のMCで、「あさって誕生日なんですが・・・」という話が出た。2日後、小田さん、74歳。

 

3曲目を聴いていて、いつものツアーと違う点を2つ発見。

 

ツアーであれば、会場内のあちこちにビジョン画面が設置されていて、そこに歌詞が出るのだが、この日はもちろんそれがない。
ステージ両脇に画面が置かれてはいるが、これは客席に向いているので、小田さんからは見えないし、第一そこには歌詞が表示されない。
ってことは、全部覚えて歌ってるわけだ。まあ、日頃も別に歌詞の表示を頼りに歌ってるのではないだろうが。

 

それから、これも当然に、客席につながる花道がない。そんな広さもないし。
ということで、小田さんは、ステージ中央から動かない。キーボードの前かスタンドマイクの前で歌い続けている。ハンドマイクだけを持って歩き回る余地はないし、客席に下りることもしない。
これは考えてみれば珍しい光景である。
つまり、「普通のコンサート」風。
やっぱり、花道を作った大きな会場でのライブを観たくなる。

 

以後、定番曲が続いた。

 

ラブ・ストーリー・・・」では、ミラーボールの用意はないが、この曲からは立ち上がる客が出てきた。
この曲も、普通はハンドマイクでかけずりまわるところ、ギター持って動かないで歌ってるのがほんとに珍しい。

 

「Yes-No」からは、私も立たせてもらった。ほんとに久しぶりの貴重なライブだし、いつものツアーの雰囲気を出したいしね。

 

終わったところでのMC。「今は大きな声も出せないと思いますけど、いつかマスクを外して、大きい声で歌える(歌ってもらえる)日が来ると思ってます。それまで、元気で」。

 

最後に「今日もどこかで」。

曲の前半は、小田さん、感極まったようで、しばらくの間歌えなかった。この曲だと、それでなくとも客席が大合唱になるところだが、コロナ禍ではそうもいかない。でも、私は小声で歌ったけどね。

客席で光るものがたくさん左右に振られ始めた。
2年3ヶ月前のさいたまでは、サイリウムが全員に配られたが、この日はもちろんそういうことはなかった。
よく見ると、皆さんスマートフォンの画面をかざして振っているのだった。

 

曲が終わって、「また会おうぜ!」。

小田さん、近くツアーをやるつもりと見た。

 

稲葉さんの「小田和正!」のコールに応えながら、下手にはけて行った。

 

アンコールは? と思ったが、なかった。やはりこういうコンサートだし、不平等になるからね。

 

最後にバンドだけでやって締めます、と1曲演奏された。インストゥルメンタルでなく、稲葉さんがヴォーカルだった。

 

そして、最後にゲスト全員が呼び込まれ、ステージの際に1列になって一礼。

 

全30曲。20:49、終演。

1列ずつ指定しての規制退場。私の列は始まってすぐ呼ばれ、早く出ることができた。

 

表に出ると雨が降っていて、傘を取り出した。大した降りではない。
ただ、みなとみらい駅への通路にはかなり広い範囲に水たまりができていて、コンサートの間に相当な雨が降ったことをうかがわせた。

 

久しぶりの小田さんを観られて本当によかった。

 

来年はツアーをやってくれるといいな。75歳の年。後期高齢者ツアー。

 

※過去の関連記事

    2年3ヶ月ぶりに小田(和正)さんが聴ける~横浜合同演奏会2021
       https://naokichivla.hatenablog.com/entry/2021/08/19/235118

    My Home Town
       https://naokichivla.hatenablog.com/entry/66315484

 

<追 記>

 

11月1日(月)、「FAR EAST CAFE PRESS」の最新号が届いた。

その中に、この横浜合同演奏会のライブレポートが載っており、セットリストが判明。

正確には、以下でした。

 

   バンド+根本要

      Jessica <オールマン・ブラザーズ・バンド

   根本 要

      今夜だけきっと <スターダスト☆レビュー
      微熱少年 <鈴木 茂>
      Bell Bottom Blues
         <エリック・クラプトン(デレク・アンド・ザ・ドミノス)>
      Layla

         <エリック・クラプトン(デレク・アンド・ザ・ドミノス)>
      夢伝説 <スターダスト☆レビュー

   Ms.OOJA

      真夜中のドア〜stay with me <松原みき

      あなたが決めた今日なら <Ms.OOJA>
      星降る夜に <Ms.OOJA>
      If I Ain’t Got You <アリシア・キーズ
      Be... <Ms.OOJA>
      鐘が鳴る <Ms.OOJA>

   矢井田瞳

      My Sweet Darlin’ <矢井田瞳
      Hand in my pocket <アラニス・モリセット
      Over The Distance <矢井田瞳

      Nothing Compares 2 U <シニード・オコナー>
      ずっとそばで見守っているよ <矢井田瞳

   金原千恵子カルテット

      JUMPIN’ JACK FLASH <ザ・ローリング・ストーンズ

   清水翔太

      Feel Good <清水翔太
      Fallin’ <アリシア・キーズ
      花束のかわりにメロディーを <清水翔太
      your song <清水翔太
      恋唄 <清水翔太

   小田和正

      my home town <小田和正
      Let It Be <ザ・ビートルズ
      たしかなこと <小田和正
      ラブ・ストーリーは突然に <小田和正
      Yes-No <小田和正
      今日もどこかで <小田和正

   バンド

      雨はいつか <センチメンタル・シティ・ロマンス>

東京二期会オペラ劇場 魔笛

11日(土)、東京文化会館で行われた東京二期会の「魔笛」を観に行った。

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東京文化会館

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東京二期会オペラ劇場 リンツ州立歌劇場との共同制作 魔笛

日 時 2021年9月11日(土) 13:00開場 14:00開演
会 場 東京文化会館大ホール
指 揮 ギエドレ・シュレキーテ
管弦楽 読売日本交響楽団
曲 目 モーツァルト 歌劇「魔笛

 

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指揮は、当初予定のリオネル・ブランギエ(冒頭のチラシに顔写真あり)の新型コロナウイルス関連の都合で、ギエドレ・シュレキーテに変更。女性指揮者である。

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プログラム冊子から。

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私の席は2階2列20番。

 

魔笛」は、私にとってはいくつかの点で特別なオペラである。

・大学オケに入部してヴィオラを始め、最初に練習した曲の一つが「魔笛」序曲だった。
・大学3年の時、生まれて初めて買ったオペラ全曲のレコードが「魔笛」だった(スウィトナードレスデン国立歌劇場盤。この日、ロビーのCD販売コーナーにも並んでいた)。
・浦安オケに入団して最初の演奏会の前プロが「魔笛」序曲だった。

 

2016年から始まった「湯の街ふれあい音楽祭 モーツァルト宇奈月」のオープニングオペラでは、3年目の2018年に「魔笛」を演奏した。

 

プログラム冊子に、1955年を初回とする過去の「魔笛」の公演記録が掲載されている。

2000年以降は実相寺昭雄氏の演出で上演されてきたが、前回、2015年からは宮本亞門氏の演出に替わり、今回が2回目となるようだ。

その宮本氏の演出を楽しみにして開演を待った。

 

ステージは客席から観て横長長方形の形で使われるのではなく、雛祭りの菱餅のような形。手前の三角形部分がオケピットの上にせり出している。奥側の三角形部分は壁で囲まれており、そこにプロジェクションマッピングで、映像が映し出される。

 

序曲が始まると、最初はサラリーマン家庭のリビングの中。

タミーノらしきスーツ姿の男性と、子供たち。子供たちは買ってきてもらったらしいテレビゲームを箱から出して遊び始める。妻らしき女性が出てくるが、男性と何やらもめている様子で、スーツケースを持って出て行ってしまう。

序曲の最後、テレビゲームが映っていた大型のモニター画面に男性が身を投げるように突っ込むと、画面のガラスが割れたようになって、1幕に移る。

 

スーツの男性はやはりタミーノで、モニター画面から、オペラの世界に飛び込んできた形でスタート。タミーノを追いかける大蛇もプロジェクションマッピングで描かれる。つい笑ってしまう着ぐるみの場合が多いが、それに比べればリアルだ。

 

以後の場面は、ニューヨークの街の夜、といった絵柄が描かれる。ウエストサイド・ストーリーを想起させる雰囲気だ。

3人の侍女がタミーノにコートを着せる。以後、このコートは着たままになる。

 

プロジェクションマッピングの利点は、転換が速いことだ。壁をいわばキャンバスにして映し出すものが変わるだけで、現物のセット転換がないので、速い。
またその都度、必要な設定を制約なく自由に映し出せる。

 

モノスタトスが出てくる場面は、今度は倉庫の中のようになる。

以後も自在な転換を楽しんだ。

 

しかし、「魔笛」のストーリーのおかしさは、特に実演で観ると気になる。その理由は、ひとえに途中で善悪が逆転するところにある。

 

タミーノとパパゲーノをしばしば救う笛と鈴って、もとはと言えば夜の女王が持たせたもの。その夜の女王は、オペラの途中で悪役側に転じてしまう。ちょっと苦しいところだ。

 

前半ではパミーナはザラストロに拉致され捕らえられていることになっているが、これも後半の善悪転換の中では苦しい。ザラストロはミーナを保護していたということになっているが、それにしてはパミーナはそこから脱出しようとしている。モノスタトスの所業から逃れるためという解釈になるだろうか。モノスタトスは結局ザラストロに懲罰を受けることになるから、そのへんが説明の落としどころ?
しかし、ザラストロが聖者なのであれば、パミーナをいじめるようなモノスタトスなんかをそもそも部下にするのがおかしい。

 

そして何より、夜の女王とパミーナが母と娘であるところが一番難しいところなんだよね。

パミーナはザラストロのところから逃げて母のもとに戻りたい、としているし、夜の女王はパミーナにザラストロを討ちなさい、と命ずる。ここまでなら矛盾はないが、パミーナはタミーノと共にザラストロに帰依?する方向に向かい、試練を乗り越えて結ばれていくのだから、何とも納まりが悪い。
立場上、一番矛盾を抱えるのがパミーナということになる。タミーノは夜の女王にだまされたということもできるが、何しろパミーナは実の娘なのだから。

 

宮本演出では、終盤、侵入してきた夜の女王や3人の侍女たちが討たれる場面の後、夜の女王だけは滅びなかったという解釈で、最後まで舞台上に存在した。
ザラストロと夜の女王がどういう関係なのか不明だが、完全な敵対関係でないことをほのめかしたようだ。

 

あ、あとこれは「魔笛」に限らないけど、オペラにありがちな「一目惚れ問題」。
絵姿を見ただけでパミーナに一目惚れするタミーノ。
パミーナにいたっては絵姿さえも見ていないよね。単にあなたを救いに来る男性がいるって話を聞いただけ。
それでいながら、実際に初対面を果たした場面では、もうメロメロに愛し合っている感じ。
いやー、うらやましい(笑)。

 

幕間は20分の休憩。セットの転換はないからか短い。

 

さて、物語のことはともかく、これも「魔笛」を観ると思うことだが、とにかく音楽は神品!
珠玉のような名曲が惜しげもなく次々に繰り出されてくるのに翻弄されるばかりだ。

 

登場人物中で一番魅力があるのはやはりパパゲーノだ。似た役回りとして想起される「ドン・ジョヴァンニ」のレポレロよりもずっと魅力的なキャラクターだ。彼が歌う(言っている)内容は深い。

 

タミーノは笛で試練を乗り越えるが、夜の女王が復讐を誓うアリアを歌い終わって悪役ポジション決定、の後でなお? と思わざるを得ない。
パパゲーノの鈴も同様。

 

魔笛」の矛盾は永遠に解けないのだ。

 

いつものことだが、パパゲーノとパパゲーナの「パ・パ・パ」には泣かされる。比喩ではない。ほんとに涙が出てきてしまう。
ばかばかしい歌詞、ばかばかしいメロディとも言えるのに。
これはモーツァルトの音楽の「魔法」という他はない。
モーツァルトの音楽が、具体的に理解することができない(あるいは理解する必要のない)、何かの「真実」を伝えてきているのだと思う。
私にはまだそこまでしかわからない。
あと何回「魔笛」を観たらわかるだろうか。

 

この場面を、タミーノ、パミーナの試練克服が成就した後に持ってきたこと。
これはこのオペラの中での重要なポイントだと思う。
普通、脇役のエピソードをかたづける方が先だよね。
そうではないんだ。
実は、パパゲーノとパパゲーナが主役なのか?
私にまだ理解できない「真実」の鍵はそこにあるのかもしれない。

 

とにかく、ここから後は、このオペラにとって「付け足し」だと思える。


忍び込んできた悪役が成敗されてのフィナーレ、前記の通り、夜の女王はそこに残っている。パミーナがザラストロのもどでタミーノと結ばれる幸せを、夜の女王は見ている。そこにパミーナが歩み寄る。
ここに夜の女王をめぐる宮本氏の演出意図があるのだろう。

 

フィナーレの最後、ステージ上は序曲の時のサラリーマン家庭に戻る。タミーノがテレビゲームのモニターから部屋に戻ってきて子供たちと再会、出て行った妻も戻ってきての大団円となる。

場面のこの戻りはなくてもよかったのではないか、と思った。舞台上の動きの変化に目を奪われて、せっかくの大詰めの音楽が上の空になりそうだった。
まあ、もう一度このプロダクションを観る機会があれば、もっと余裕をもって味わえるのだろうが。

 

歌手はみなすばらしい歌を聴かせてくれた。
特に、ということで言えば、2幕でのパミーナのアリア、そして、ザラストロ、タミーノ、パミーナの三重唱。すばらしい歌唱だった。

 

色々矛盾を感じつつも、やはり「魔笛」は特別なオペラだ。「ドン・ジョヴァンニ」あるいは「フィガロの結婚」の方が、オペラとしてのできばえはもっと円満だとは思うが、「魔笛」の魅力には抗しがたい無類のものがある。

 

同じ演出でも、別の演出でもいい、何度でも観たいオペラだ。

 

宇奈月オペラでは、ローテーション通りであれば、2023年に「魔笛」を演奏することになるだろうか。是非二度目の演奏機会を得たい。

 

会場を後にして上野駅へ。
公演口の改札が移動した。

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