naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

ブルックナーの交響曲とのつきあい

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  ↑初めて買ったブルックナーのレコード


私がクラシック音楽を聴き始めた頃、マーラーブルックナーは、まだ今のようにスタンダードなレパートリーとは言えなかった。

長いシンフォニーを書いたという以外は共通点の少ない二人だが、我々世代がクラシックをこれからあれこれ聴いていこうという当時、その「長い」という点は、例えば高い山に登りたいというのにも似た、一種の挑戦意欲をかきたてるものがあった。
大学時代、オケ仲間だったホルンのKは、「できるだけ早い内に、マーラーブルックナー交響曲のレコードは全曲揃えたい」と言っていたものだ。

私の場合はマーラーが先行した。
前に書いたが、マーラーは高校の時代に2番から入った。

ブルックナーの方は大学に入ってからである。

ベームウィーン・フィルと来日した75年3月、聴きに行ったNHKホールのロビーで販売されていた、4番のレコードを買ったのが、私にとって初めてのブルックナー交響曲であった。
このレコードは前年末に発売されて大絶賛を浴びたものだったし、ブルックナーは聴いたことがないし、演奏会にきた記念の意味も含めて買うことにした。
ということで、当時の私には、前出のKほどには、ブルックナーのシンフォニーにアプローチしていく意欲はなかったように記憶している。

そして、このレコード、実際聴いてみてどうだったかというと、余りピンとこなかったのである。
これは、曲のせいだったと思う。
その後あれこれブルックナーを聴いてきているが、今に至っても、この4番という曲、私にとってはいまだにピンとこない。
1楽章、3楽章はなかなか魅力的だと思うのだが、当時も今もブルックナー入門には最適とされている曲ながら、あまり手が伸びない。
演奏自体は、ウィーン・フィルのまろやかなホルンの響きが圧倒的で、4番を聴くとすればまずこの盤だと思っているので、当時ピンとこなかったのは、曲の方だと思う。

そんなこともあって、以後ブルックナーのレコードを集めるスピードは鈍かった。
1年くらいたって、カラヤンの4番7番(EMIの3枚組)、カイルベルトの9番。
あとはクナッパーツブッシュの3番、シューリヒトの8番までで大学時代は終わりである。

この中で在学中に比較的よく聴いたのはカイルベルトの9番だった。
1楽章を初めて聴いた時に、曲頭の原始霧から主題がトゥッティで強奏されるまでの荘厳な流れが一度で気に入ったのを覚えている。

しかし結局、LPレコードの時代は全曲を揃えるまでには至らず、5番さえ買わないままだった。
CD時代に入って、カラヤンの全集(DG)を輸入盤で買って、やっと全曲を手元に置くことになる。

実演では、大学在学中に、早稲田大学交響楽団が8番をやった。高校の先輩が早稲オケでトランペットを吹いており、誘われて聴きに行ったのだが、途中すっかり寝てしまった。
確か吉田秀和氏が、ヨーロッパで初めて8番を聴いた時に、やはり寝てしまったと書かれていたと思うが、私も音楽評論の大御所並みであった。

あと、これは社会人になってからだが、チェリビダッケミュンヘン・フィルと来日した際に、8番をやって、たまたまチケットをもらう機会があったので、サントリーホールに、音楽教師をやっている伯母と一緒に行った。これはさすがに寝なかった。晩年様式のチェリビダッケのゆっくりした演奏で、ティンパニの轟然とした音が特に印象に残っている。

ブルックナーの音楽が好きかどうか、というとなかなか難しいものがあるが、今は好きな方に分類されると思う。
ひところ、ブルックナーの音楽は、自分の心の中の、懐かしい感情だとか、何かひりひりしている部分にさわってくるような気がしていた。何か、自分のプライベートな領域に踏み込まれてくるような感じである。
それゆえに、ブルックナーを少し敬遠するところがあった。

それと、ブルックナーの音楽は、頭のいい人が書いた音楽には思えない、という考えもあった。
彼は1つのシンフォニーを9回書いた、という評があって、これは言い得て妙だと思う。
頭が悪い云々は言い過ぎにしても、愚直に同工異曲なシンフォニーを書いたブルックナーに比べると、やはりマーラーの方が多彩で、知性的な人間が書いた音楽に感じられていたものだ。

しかし、最近は歳をとってきたせいだろうか、マーラーの音楽のある種とげとげしたところ、神経質なところが気になるようにもなった。
一方で、ブルックナーの音楽に、その内包する懐かしさに素直に身をまかせることの方が、むしろほっとするようにもなってきたようだ。

マーラーブルックナー
ほとんどマーラーの方一辺倒だった学生時代から始まって30年。
マーラーも大事だが、ブルックナーにも固有の魅力を感じられるようになった今、長く生きることも面白いと思っている。

マーラーは、一応全部のシンフォニーをまんべんなくは聴いてきた。何番がどういう曲かということは覚えている。
一方ブルックナーは、今でも聴くとすれば基本的に7~9番の3曲が圧倒的に多い。
この3曲はやはり大傑作だと思う。
あとはたまに4番、3番程度。
1、2、6番は、どういう曲なのかよく覚えていない状況だ。これから少し意識して聴いてみようかと思う。
5番は傑作だと言われる。今日もさっきカラヤンの演奏をかけてみた。
しかし、この曲は、少し理屈っぽいというか、骨組みだけが前面に出た作品に思える。最後の3曲のような味わいに欠けるように感じるのだが・・・。

レコードで聴く場合は、月並みだがウィーン・フィルのもの、ベームなどを好んで取り出す。
カラヤンのものも、それとは違って少々かっちりした感じで、これはこれで納得できるやり方だと思う。
世評高いヴァントとベルリン・フィルの一連の演奏は、まだわからないところがある。やや凝縮して息が詰まる感じがするのだが・・・。

しかし、ブルックナーは、もっと生の演奏を聴くべきだと思っている。たぶんマーラーよりも、レコードと実演の差が大きいのではないだろうか。
先ほどネガティブに書いた5番なども、おそらく実演でフィナーレの金管のコラールなどを聴いたら曲へのイメージが一変するかもしれないと思う。
何番でもいいから、これから少し演奏会をさがして行くようにしたい。