９月場所５日目

豊桜が春日錦に土俵際でうっちゃり。
久しぶりにうっちゃりを見た。

嘉風が、今場所は今一つだと思ったら、ＮＨＫの放送によると、首を痛めているという。それで納得がいった。
嘉風としては、必死に自分の相撲をとろうとしたが、やはりそれができない。身体のある春日王のパワーに屈した。

４連勝の豊真将に土。
最初の立ち合い、垣添のつっかけに合わせられず、行司が止めた。
再度の立ち合いも、垣添がつっかけ気味に立つと、豊真将は立ち遅れた。
豊真将としては待ったすべきだったが、定位置で受けてしまった。
あとは、垣添の動きにかきまわされっぱなしでやむなし。
それにしても、垣添という人は、どうしていつも怒ったような顔をしているんだろう。

高見盛は、立ち合いの攻防からうまく右を入れた。
今場所の高見盛は、基本的に右差しの相撲に回帰しようとしているようだが、形を作る前に、豊ノ島が意表に出ての内掛け。
高見盛としては、予想していなかったのだろう。あっけなく崩れた。

４連勝の安馬が今日もいい相撲で全勝を守った。
今日は突き放す相撲ではなかったが、朝赤龍がすぐ引いてくれたので、それに乗じてまっすぐ出た。

琴奨菊は、右手の指を脱臼しているという。
やはり右でまわしをとりに行くことができない。旭天鵬が左四つ、いい上手をとる形をあっさり作って、以後は一方的に寄った。
琴奨菊としては致し方ないところだが、無理しながら大負けするよりは、休場を考えてもいいのではないか。

好調の露鵬は、栃乃洋との対戦。
けんか四つだが、栃乃洋が立ち合い左おっつけから左を差し勝った。
相手得意の左を差されては、露鵬も、今場所好調とはいえ、防戦にまわらざるを得ない。
露鵬としては、立ち合いまずは突いて離れておいてから、有利に組むことを考えた方がよかったのではないか。

把瑠都は、立ち合いからひっぱりこむ形で、岩木山を右四つに組み止めた。
この形なら、把瑠都に分があると思ったが、ここから岩木山が頑張った。
以後の攻防では、岩木山の方が、四つに組まれながら、あれこれの攻め手を見せた。
一方の把瑠都は、組んだ後、対照的に攻めあぐんだ格好。技能的にはまだまだ粗く、かつ甘いと言わざるを得ない。
むしろ、岩木山の方が技能的でもあり、厳しくもある攻めだった。
最後は、把瑠都の体力勝ちという結果ではあったが、内容的には評価できない。負けた岩木山を賞賛したい一番。

琴光喜がずるい立ち合い。
時間一杯から手を下ろすのがいつも遅い人だが、今日は特にひどかった。
琴光喜としては、自分の呼吸で立ち、自分のペースで相撲をとった格好。玉春日は当然何もできなかった。
しかし、｢合わせて立つ｣のが、相撲の立ち合いの妙味であるならば、あまりにも作戦に走った利己的な相撲だ。勝ってもまったく評価できない。

昨日ふがいない負け方をした琴欧州は、今日は一転していい相撲に戻った。
立ち合い頭から当たり、雅山の突きに一旦は押し込まれながらも、これをしのいで、いい位置の左上手をとった。
この形から頭をつけながら、よどみなく前へ出た相撲は、大関に上がる前の、よかった時の琴欧州だ。
１敗は仕方がないとして、何とかこのまま行ってもらいたいものだ。

魁皇は今日も目を覆う相撲。
相手安美錦の動きに全くついていけない。
こうとりたい、こうやって勝とうというものが見えない。
残念だが、過去何人も見てきた、引退間際の力士の相撲だ。
ご当所の福岡の土俵に立てるかという以前に、今場所千秋楽まで持つかどうか。

千代大海が、一気の突きで玉乃島を電車道。
回転の速い突きは好調時の千代大海だが、このところ、序盤はよくてもそれが続かないことが多い。
今場所はどうか。

期待の一番、白鵬に黒海。
白鵬は、昨日のように立ち合い左に動いて左上手をとりにいった。
これを黒海がふりほどいて突き合いになったが、白鵬もひるまず、突っ張りで応戦。
その後白鵬は、終始身体を相手に密着させながら動こうとしていた。
それがよく、すぐ充分な形の右四つに再度持ち込み、後は余裕のある相撲で安心して見られた。
ＮＨＫの放送の中入りで、白鵬の今場所４日間の立ち合いを分析していた。立ち合いが一貫せず、迷いが見られるという話だった。
確かに今日の一番も、立ち合いは昨日と似たり寄ったりで、まだ感心できないが、その後の相撲は流れがよかった。
全体としては、昨日までよりはずっとよくなっている。これで一つ何かつかんで立ち直ってくれるといいが。

この一番の後、左上手のとり方がよくない今場所の白鵬を、自分ならこう攻めるという正面解説の舞の海と、藤井アナの話がかみあわず、面白いやりとりになった。
藤井アナは、舞の海の話を｢理解できない｣と公言、話を打ち切った。面白いというか、テレビのスポーツ中継のやりとりとしては、あまり穏当でない要素もあった。
心境の真相はわからないが、藤井アナが少なからず感情的になっているように聞こえた。

栃東が価値ある相撲。
稀勢の里に、立ち合いからの攻防で充分の左四つに組まれ、上手もとられる不利な体勢。
これはまずいかと思ったが、栃東も必死だった。そこからふりほどいて、以後は終始前に出ながら、稀勢の里を圧倒した。
ケガをしているベテラン大関相手に、立ち合いいい形を作っておきながら、防戦一方になった稀勢の里が情けないという見方もできなくはないが、今日の一番については、栃東の気迫がまさったというに尽きる。

時天空は、立ち合い一合の後、朝青龍の左腰につく形となり、これは何かできそうかと思ったが、リプレイでよく見ると、横綱が左前まわしを充分とり、時天空の右を差させずに殺している形だった。
これでは有利不利の差は圧倒的だ。一瞬後に横綱が俊敏に左上手から出して背後にまわる形となった。
上背のある時天空が、ここから粘って河津掛けか何かに行けるかと再度期待もしたが、それをさせるほど横綱は甘くない。
最後は送り投げ。
やはり朝青龍は、先場所よりはいい内容だと思う。

独走気配もないではないが、白鵬が今後立ち直ることと、琴欧州がついていくことに期待したい。