naokichiオムニバス

68歳、ヴィオラ弾き。ビール大好き。毎日元気。

顔から火が出た10年前の出来事

さっき、NHKのBS2で、今年のサイトウ・キネン・フェスティバルの演奏会を放映していた。

小澤(征爾)さんの指揮するベルリオーズ幻想交響曲を見ながら、ふと思い出した10年前の出来事。

当時、同じ職場で仕事をしていたS氏の奥様が、若くして亡くなられた。

職場の仲間たちと一緒に、芝大門の寺で営まれた葬儀の手伝いをした。

私は、受け付けた香典の整理をしていたのだが、空いた時間に、S氏に「ちょっと」と呼ばれた。

いざなわれるままに、親族の控え室に行き、亡くなられた奥様の側の親族の方々に引き合わされた。

その中に中年の女性がおられたのだが、その方がどういう方か紹介される前に、S氏が私を指して「この人は日頃市民オケでヴィオラを演奏しているんですよ」と話した。

今のオケに入って3年目だった。私はちょっと調子に乗って、持っていたオケ用の名刺を差し出しながら、「こういうところで弾いてます」とか何とかしゃべった。

・・・で。

しばらくあれこれ話をする内に、その中年の女性が、江戸純子先生であることが判明したのであった。

ぶったまげた。あの江戸先生と、こんなところでお会いするとは・・・。

水戸黄門の印籠を目にした悪代官の心境だった。
「へへ~っ」という感じだった。

最初は、まさかプロ中のプロとは思っておらず、要するにS氏の親戚のおばさん、としかとらえていなかったので、江戸先生だとわかるまでの間に、ここには恥ずかしくて書けないような生意気なことをしゃべってしまっていたのだった。
江戸先生のお顔もちゃんとは存じ上げていなかったし。

要するに、「江戸純子にタメ口をきいた」のである。

顔から火が出るというのはこのこと。

わかった瞬間、ほとんど土下座した。
「大変失礼致しましたっ!」

ほうほうの体で持ち場に戻り、あたりをよく見ると、江戸英雄氏からの生花も届いていた。

いやはや・・・。

その晩の通夜では、江戸先生のところに行って、再度無礼を詫び、少し話をさせていただいた。

あれから10年。
以後、サイトウ・キネン・オーケストラの映像が放映されるたびに、毎回参加されている江戸先生のお姿を拝見しては、顔から火が出たあの時のことがよみがえるのである。

人の話はよく聞いてから、口を開くべきだ、という教訓。